語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】行動経済学とファシズムの親和性 ~宗教と資本主義・国家~

2018年03月31日 | ●佐藤優
 <「私は行動経済学者です」といって、私の前に最初にあらわれたのは竹中平蔵さんでした。「新自由主義者ではありません。行動経済学者です」と。
 われわれ神学を基礎存在とする者には偏見があり、基本的に人間は進歩していないと思っています。神学の議論は、論理整合性の高いほうが負けるんです。メチャクチャなことをいっているほうが、政治力を使って勝つ。そうやっているから、議論が積み重ねられず、同じ問題が何度も噴き出してきます。
 (中略)
 過去にも行動経済学に似たようなものがあるだろうと思い、今一所懸命に読んでいるのが、新明正道(しんめいまさみち)、加田哲二(かだてつじ)、土方成美(ひじかたせいび)といった、日本にイタリアファシズムを紹介した人たちのパレート観です。
 人間自身を非合理な存在として考えるローザンヌ学派という不思議な学派があり、そこにパレートという有名な経済学者がいます。この人は、なんとムッソリーニの師匠です。さらに、ローザンヌにはファッショ・インターナショナルがあります。ファシズムは国境を越える。そういうものを読んでいると、「あれ? 行動経済学と組み立て方が似ている」と私は気がつきました。
 パレートの理論は、外交官試験の経済学の問題にも出てきます。ミクロ経済学の効用や厚生経済学の問題として扱われている。しかし、彼をファシズムの思想家として、別の見方をしてみると、行動経済学をやっている人たちの議論と重なるところがある。ファシズムが、もう一度頭をもたげているのが、行動経済学なのです。

□池上彰・佐藤優・松岡正剛・碧海寿広・若松英輔『宗教と資本主義・国家 激動する世界と宗教』(KADOKAWA、2018)の「第Ⅲ部 総合討論」の「パネルディスカッション」の「行動経済学とファシズムの親和性」から一部引用

 【参考】
【佐藤優】宗教とジャーナリズム ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】宗教者とは、貧しき者、虐げられた者たちとある者だ ~宗教と資本主義・国家~
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【佐藤優】時間とお金を何に使うか ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】資本主義的な論理を超えて ~宗教と資本主義・国家~
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【佐藤優】『宗教と資本主義・国家 激動する世界と宗教』の目次





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