意味不明なタイトルだけど、これはフランシス・ベーコンの箴言に由来する。
何であれ、自然の探究において、理解が保留されているとなれば、指差す標識とも言える事例が正当にして等閑にすべからざる設問のあり方を提示する。事例はいずれも眩い光を投げかけるゆえ、探索の過程は時として、その事例をもって終結する。それのみならず、すでに記述されている証拠の中にそうした事例が顕現することもある。
フランシス・ベーコン「ノウム・オルガヌム」
もっとわけわかんないですか(笑)。実は、この長大なミステリの核となる部分が仕込んであります。
文庫本上下2冊で千ページを超す大作。舞台はオックスフォード。時代はクロムウェルが没して王政復古された17世紀後半。ヴェネチアからひとりの若者が“二流国”だったイングランドにやって来る。彼の目的とはなにか。そして、彼は大学教師の毒殺事件に遭遇する……
四つの章から成り、それぞれ違う語り手の手記という体裁。そして、次の章が前の章をひっくり返す展開になっている。つまり、読者にとって四人とも“信用できない語り手”だし、みんな鼻持ちならない野郎で、そのユーモアの質は小憎らしいくらいだ。
歴史知らずなので読み通すのがきつい部分もあったけれど、実在の人物が多数登場するので、世界史、特に英国史に通じた人にはたまらないだろう。少なくとも国教会の成り立ちぐらいは学んでおいた方が楽しめると思います。
各章を池央耿、東江一紀、宮脇孝雄、日暮雅通がそれぞれ訳している。翻訳家オールスターズ。特に東江さんにとって、これが最後の作品となっています。
読み終えて満足。歯ごたえありすぎだけど、それだけに、読書した!という手応えが。「薔薇の名前×クリスティ」ってかまされたら読まないわけにはいかないしね。