これはもう、ミステリファン、特に本格好きのためにあつらえられた極上の品だ。まず、タイトルで「今回も本格です!」と宣言している。
「匣(はこ)」
という文字をタイトルに入れた時点で、竹本健治の超傑作「匣の中の失楽」にオマージュを捧げたという宣言だし、京極夏彦の「魍魎(もうりょう)の匣」を意識していないはずはない。
デビュー作「屍人荘の殺人」であらゆるミステリランキングのトップを奪取した今村昌弘の第2弾。正々堂々たる続篇でもある。前作は×××に取り囲まれるという思い切ったネタで驚かせてくれたが、今度はもっと地味に、しかしひねった設定がうまい。
「あと二日のうちに四人死ぬ。男が二人、女が二人」
その予言がことごとく的中してきた老婆。彼女の最新の予言。彼女のもとへ、登場人物たちが集まり、そしてある理由で今回もクローズドサークルが完成する。まず、男が死ぬ……しかも自然現象で。これは殺人なのか?
語り口は完全にライトノベル。1年先輩の美女探偵剣崎比留子とワトソン役の葉村譲の、恋愛一歩手前のやりとりは微笑ましいが、もちろん彼らが必死で推理する事件は連続殺人なので自分たちが殺されるのではないかと油断はできない。前作のことがあるから主人公とて……(笑)
で、こんな紹介の仕方は卑怯なのはわかってるんですけど、犯人が誰か、というミステリのキモはまことに納得できるものでした。
ところが、ところがところが、最後の最後に
「ええええええっ!」
といううっちゃり、というか巴投げ、つまりはどんでん返しが待っていてびっくり。いやはやこの作家はどこまで突っ走るんでしょう。年末のランキングを賑わすこと確実。いやー面白かったっす。
第3作「兇人邸の殺人」につづく。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます