事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「あかんやつら 東映京都撮影所血風録」 春日太一著 文藝春秋

2014-06-21 | 芸能ネタ

As20140112000158_comml また、東映のお話です。

昭和の劇

嗚呼!活動屋群像

シネマの極道

東映ゲリラ戦記」(追悼鈴木則文)

……とにかくすべてが混乱の渦中にあり、作品よりも社史の方が面白いのではないかと思うくらいだ(半分は本音)。

長大な物語をまとめたのは映画史家の春日太一。東映を愛するがあまりに入社試験まで受けて最終面接まで行った御仁だ。

東映がむちゃくちゃなのには理由がある。後発だったために自転車操業を余儀なくされ、徹底した娯楽作を連発しなければならなかったことと、創業者であるマキノ一族(その末裔が津川雅彦だ)の影響が大きかったこと。そして、満州映画協会(満映)からの引揚者など、右から左からどんな人間でも受け入れたことなどが影響している。

わたしがわからなかったのは、市川右太衛門(北大路欣也のお父さん)と片岡千恵蔵の両御大の力の源泉だったが、このふたりは、スターというより、会社を物心両面で支えてきた経緯があり、肩書はともかく彼らは東映を自分の会社だと思っていて、時代劇隆盛のころは、それは事実だったというのが理解できた。

この会社を引っ張ったのは現社長である岡田裕介のお父さん、岡田茂。この書の主人公はまぎれもなく彼だ。東大卒のインテリでありながら、本物のやくざも数多く出入りしていた東映に入社。時代劇の退潮から任侠もの、実録ものへの移行に成功するなど、経営者としてのセンスと、裏世界と対峙して一歩も引かない度胸は、文字通り東映という会社そのもの。

ただ、実録路線に客が入らなくなって以降の混迷もまた彼の責任だと言えて、そのあたりもこの書ではきちんと指摘してある。

著名な監督たちの恥ずかしいお話もたくさん紹介してあって、工藤栄一、田中登、小沢茂弘などのファンは複雑な気持ちになるのではないかしら。

思えばわたしが東映作品を浴びるように見ていた70年代後半って、この会社が最低の時代だったんだなあとつくづく(笑)。しかし救世主が常に現れるのもこの会社の伝統だというのも、リアルタイムで見ていたからこそ納得。このころの救世主の名は角川春樹。納得。

あかんやつら 東映京都撮影所血風録 あかんやつら 東映京都撮影所血風録
価格:¥ 1,998(税込)
発売日:2013-11-14

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