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スパイものを名乗っていながら、もちろんロボとニコはいわゆるスパイ行為をはたらくわけでもなく、伝説のスパイだった骨董屋「地蔵堂」の店主(浅丘ルリ子)の指示に従うような従わないような動きを見せるだけ。だから目に見える報酬は存在しない。
脇役がなかなか充実していて、地蔵堂の助手、よっちゃんに岡田義徳(ごぼ蔵の回では、フランスパンをちぎって仏像をつくりあげるという驚異の技を見せる)、そしてニコの両親にあの片桐はいりとあの塚本晋也(「鉄男」の監督ですよっ!)を起用する狂いっぷり。このふたりに微温的な夫婦をやらせようという発想はどこから出たのだろう。
シリーズの白眉は、前後篇で描かれた「プッチーニ」の回だ。木皿のテレビデビューとなった「やっぱり猫が好き」や「すいか」でおなじみの小林聡美、もたいまさこ、ともさかりえがゲスト。彼女たちは、患者たちの末期の願いを実現する看護師として登場する。その願いの多くは恨みを晴らすことで、彼女たちは殺人もいとわない。この、黒い看護師とロボが恋愛関係におちいって…。
ロボだけでなく、プッチーニを名乗る暗殺集団自身が生と死について思い悩むあたりが真骨頂。死ぬことも休息、生きることも安穏という木皿らしい全肯定主義がかいま見える。
「セクシー~」がすばらしいのは、そんなヘビーな題材をとりあげながら、次第に成長していくニコと、まったく成長しないロボのどちらも肯定的に描かれていることだ。傷つきやすい女子中学生であるニコが、母性のかたまりとなってロボを守る回が多いことでもそれはうかがえる。
誰よりも幼児体型である大後寿々花がそんなニコを演じることに意義があったのだし(だから実際の母親役には片桐はいりという、母性どころか女性すら感じさせない女優が必要だったわけだ)、聖なる愚者を演じたのが初主演となった松山ケンイチだったのもナイスキャストだ。
そんなふたりがラストにどうなるかというと……これにはうなりましたね。時間のあるときにぜひレンタルしてください。すばらしいドラマなので。
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セクシーボイスアンドロボBOX [DVD] 価格:¥ 19,110(税込) 発売日:2007-09-20 |