アメリカ人はどうもこういう人物像がお好きなようだ。直情径行で正義感にあふれ、仲間を救うために全力をつくす。たとえそのために多大な犠牲を払うことになろうとも。
「バトルシップ」のテイラー・キッチュがそんな野郎だったし、エンタープライズ号のカーク(クリス・パイン)もまた、前作同様に自分を否定されるとすぐにすねてバーのカウンターに逃げこむ。
おまけに船長なのにやたらに自分で突撃したがるので、少なくともわたしは彼の下では働きたくないなあ。こいつのせいでいったい何人クルーが死んだんだ?だいたい、嫌いなんだよね熱血漢て。
ちょっとネタバレになるけれど、後半に、あることのせいで副長スポックが船長代理をつとめる。オリジナルシリーズとの関連なんかどうでもいいからそのままスポックに船長やらせとけっ!まったくユーモアを解さないのでかえって面白いスポックのほうがなんぼかマシ、と毒づいてました。
そんな野郎が主役なので、ドラマとしてはどうも盛り上がらない。でも、部分部分は息をのむシーンの連続。あ、J.J.エイブラムスの映画っていつもそんな感じです。
古都ロンドンの描写が「謎の円盤UFO」タッチでうれしいとか、未開の惑星で海中からエンタープライズが浮上するとか、“橋の上からコップに飛び込む”ように敵艦に生身で飛び込むとか、カークとは人間の格が違う(まあ、超人ですから)宿敵カーンとスポックがラストで演じる肉弾戦とか、ここまでやるか。2Dでもクラクラ来たのだから3Dだとどうなっていたことか。
実はこうやって文句をたれているのは、スターウォーズの新作をJ.J.が撮ることに決定しているからで、だとしたら主役のキャラはちゃんと感情移入できるように設定してほしいなあ。
カーンを演じたベネディクト・カンバーバッチはとてつもなく魅力的だったので、彼をフューチャーしてくれたらうれしいかも。スタートレックの方はスポック中心ってことで。カーク?バーで酒飲ませとけばいいさ。