絶句する。
長くはないんじゃないかと心配していたけれど、こんなに早くその日が来るとは。
だって大楠道代と岸部一徳とフジテレビで対談してたのって先々週じゃなかったっけ?
原田芳雄は、はっきり言ってわたしの世代のスーパーヒーローだ。
いちばん最初に意識したのは浅丘ルリ子と共演した「2丁目3番地」(日テレ)。
明朗で清潔な石坂浩二がいながら、浅丘ルリ子が選んだのがダークな原田芳雄だったと気づいた瞬間からわたし人生を間違えました。確か原田は天気予報官の役だったと思う。
今とまったく同じあの調子で(脚本は倉本聰)
「だいじょうぶだ。オレ、初めて自分が予報を担当するんだけど、その日は雨だ」
「ほんとに?」
と浅丘。逆だったかもしれないけど予報は大はずれ。
落ちこむ原田がかわいかったー。1971年のことです。
同じ年のNHK大河ドラマが「春の坂道」。
柳生但馬守を萬屋錦之介(当時は中村錦之助)が演じたやつ。原田がそこで演じたのは柳生十兵衛。権力そのものになっていく父親との相克が……小学生がそんなことわかるわけがなくて、でも
「村雲」
なーんて型を切れ味鋭くやっちゃう錦之助と不良少年そのものである原田の対比が面白かった。確か沢庵役が田村高広。
映画ではもちろん「竜馬暗殺」「祭りの準備」「ツィゴイネルワイゼン」「浪人街」「父と暮らせば」あたりが代表作なんだけど、「やさぐれ刑事」「君よ憤怒の河を渡れ」の無責任さがよかった。あの線を松田優作は狙ったはずよね。
で、近年は彼のうまさに磨きがかかっていて、無器用だったはずの彼のスタイルが、んもう総理大臣(亡国のイージス)だろうがシルバーのじいさん(奇跡)だろうが自由自在。ほんっとにうまい役者になってたんだよなー。
NHK広島放送局がつくった「火の魚」を見ることができたのがわたしの財産かも。あーなんでだ。なんで死んじゃうんだ。
ものすごくわがままなことをいえば、死ぬのはあと十年たって、わたしが六十代になってからにしてほしかったの。それだと、なんか
“原田芳雄が死ぬことへの準備”
ができてたような気がするの。なんだそりゃ。なんだそりゃ。