背いて故郷 (新潮文庫) 価格:¥ 700(税込) 発売日:2005-01 |
第六協洋丸、仮想敵国の領海に接近するためのスパイ船。柏木はその仕事を好まず、親友・成瀬に船長の座を譲った。だが成瀬は当直中に殺されてしまう。撮影済みのフィルムを奪われて。禁忌に触れてしまったとでもいうのか?柏木は北の大地を餓狼の如き切実さで駆けめぐった。ただ真相に迫りたかったのだ。彼の前に立ちはだかるのは“国家”、そして―。(BOOKデータベースより)
故郷、にはもちろん国家という意味もかぶせていて、スパイ小説としてもかなり読ませます。ある国家に忠誠を誓いながら、しかしそれ以上に個人として、職業人として仕事の完遂をめざす男たち、女たち。そのプロ意識は家族愛とも相まって濃厚。
ハードボイルドの主人公の常として、いつもやせ我慢をしているんだけど、それを女性たちがそっと支えるあたりの叙情はさーすが男性版ハーレクインの本領発揮。そしてその叙情をいきなりひっくり返すテクニック。やるなあ。