事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「6羽のかもめ」CX 倉本聰脚本

2009-06-11 | テレビ番組

Intgzomeisxx_200800002104_001 倉本聰が、大河ドラマ「勝海舟」の収録の際にNHKおよびその労組と大もめした恨みつらみをぶつけた伝説のテレビドラマ。倉本の著書「さらばテレビジョン」にその経緯はくわしい。しかしそんな事情を知らなくても、これは確かに魅力的なドラマだ。分裂をくりかえした劇団が、“けいこ場を確保するために借金をして住居と共用のビルを建てる”という設定が効いている。芸能界の裏側をあばくと同時に、この設定のおかげでホームドラマとしても機能できるわけだから。

わがままな大御所女優(おそらくは杉村春子あたりがモデル)犬山モエ子に扮するのが淡島千景。「麦秋」を特集したときにも思ったけれど、この人はほんとうに美人であり、コメディセンスも抜群。劇団員がみんな帰省してしまい、ひとりマンションに残ってブランデーを飲むあたりの哀しくておかしいたたずまいは彼女ならではだ。現代劇に出演するのがめずらしかった高橋英樹、若いときだからどう見ても桑田佳祐に見えてしまう長門裕之、70年代のアイドルといえばこの人でしょ、の栗田ひろみがそれぞれ好演。わたしが「シルバー仮面」などでファンだった夏純子もなつかしー。

そしてこのドラマが遺作となった加東大介がつくづくといい。役者稼業から足を洗い、マネージャーとしてテレビ局と劇団の間で苦労する大正生まれの戦中派……病が進行しているものだから、最終回のあたりははっきりと死相がうかんでいる。しかし役にほれこんで病院を抜け出して演じきった役者魂がすばらしい。倉本はこのように、緒形拳、田中絹代、加東大介、大友柳太朗に死に花を咲かせている。

Natsujunko02 にしても、全26回が普通だった昔のドラマを見通すのは、たいへんではあるけれど楽しかった。役者のチームワークがどんどんよくなっているのが肌で感じられるし、中条静夫が演じたテレビ局の中間管理職があまりにおかしい(「困っちゃうんだよなーまったく」)ものだから、役がふくらんでいく経過が歴然。これはもちろん、加東の病をフォローするためでもあったろうが。

三十五年前の世相もなつかしい。みんながみんな盛大にタバコを吸うし、皮肉まじりでありながらもどこか男尊女卑の雰囲気も残っている。時代は、はっきりと変わったわけだ。思いっきりディレクター役の演技が固い蜷川幸雄が、演出の大御所になってしまうぐらい時間がたっているのだからそれも当然か。矢崎滋も、髪がフサフサしてるしねえ。

※「勝海舟」には忘れられないシーンがある。渡哲也が病気で降板し、あとをついだ海舟役の松方弘樹に、友人役の江守徹が囲炉裏端でしみじみ語る。

「これまでのことをさ、福沢とかいうヤツがいろいろと批判しているらしい。でもな……」

大河ドラマとは、“偉人”を総出演させることで成立していると思っていたので、こんなツイストに中学生だったわたしはいたく感激した。ドラマってこんなこともできるんだと思いましたよ。

コメント (2)
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