事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「ゼロの焦点」がわからないPART10

2011-07-17 | ミステリ

Zeroimg13 PART9はこちら

傷だらけの顔で

「新しい時代が来ました」

とあいさつする中谷美紀。そのころ、鹿賀丈史はなんと警察に自首して出る!彼が西島秀俊を殺害したのであり、その動機は木村多江を自分のものにしたかったから……かなりきつい理屈だが、彼は署内で警官の拳銃をうばって自決するのだ。これまでの「ゼロの焦点」にはもちろんなかった展開。

夫がみずからに殉じたことも知らず、あいさつを続ける中谷。そこへ広末が登場し、壇上の中谷に必殺のひと言。すでに壊れかけていた中谷を追いこみ、一種の復讐がここで完遂する。

今回の「ゼロの焦点」の主題は『リセット』だ。戦争によってねじ曲げられたそれぞれの人生を、どうリセットしたか。あるいはどうリセットに失敗したか。

・中谷美紀は、婦人の政治参加によって戦前なるものへの決別をめざし

・木村多江は、教育もまともに受けられなかった過去を、優しい男の胸の中で払拭しようとする

・鹿賀丈史は戦争によってむしろ勝ち組となった男だが、しかし妻の過去からどうしても逃れられなかった

・西島秀俊は、『戦後』の象徴である無垢なる広末涼子との生活によって戦争からの決別を図ったが、その夢はかなえられなかった

……かなり強引。思いきり好意的に解釈しました(笑)。

おそらく作り手たちは、こんな形で、特に女性客を泣かせようと考えたのだろう。よく考えてみれば、下半身にだらしない男の失踪に当初はすぎなかった事件なのに。

しかしエンディングはいい。中谷の弟の描いた、彼女の姿が現代の画廊に飾ってある。戦争で父母を亡くし、子どもだった弟のために、“もっと長く子どもでいられたはずなのに”早くから弟の父であり、母であることを戦争に強いられた女性の絵。その顔は、まだ傷ついていない。

「チャイナタウン」がわからない、につづく

コメント (2)
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