もう間もなくウィークエンドという金曜日の午後5時40分、
今日3本めの校正がすっかりきれいに片づいた。
これから次の原稿にかかるには半端な時刻。
少し早いけど、仕事を切り上げて稽古場へ。
ここらで過労気味の感性をリフレッシュさせても罰は当たるまい。
いつもは連絡の悪い通勤電車は、今日に限って急行がやってきた。
いつもは延々下りてこないカルチャーセンターのエレベーターは、ドア全開で待っていた。
いつもは2,3人待たなきゃいけない稽古は、すぐに番が回ってきた。
琴に三味線。
立て続けに弾き歌うこと40分余り、
砂に水がしみるように、音がからだにしみ込んでいく。
指先から喉元へ、音符が体温になって駆け抜けて、声になってでていく。
そうそう、この感じ。
感性を遣いすぎたときは、
音楽のお灸が効くみたい。「忙しいみたいだけど、練習してこなくていいから、
からだにだけは気をつけて」
涙がでるようなお言葉を先生からかけてもらいつつ、
稽古場を出る。
駅のホームで時計を見れば、「19:50」。
もしや。
恵比寿の稽古場から、金曜の夜恒例『Carmen』の稽古場までは
電車でほんの4駅。
休憩が終わるころには着ける計算。
参加する前から、〝練習に半分しか行けなくてもいいですか~〟などと
不届き千万なおサボり宣言をしていたヒイラギを、「まぁ、相談だね」
と言いながらも見逃し続けてくれてるマエストロに、
たまにはヤル気らしきものを見せておくか。
イヤ、しかし、欠席のつもりでハナから楽譜も家に置いたまんまで
ヤル気らしきものなんぞ見えるのか。
自分で自分につっこみながら、丸1時間遅刻して到着。
歌声が途切れたところで、おそるおそるドアを開けると、「あ、ボンソワ♪」
みんなが笑顔で迎えてくれて、のっけからアットホーム感倍増。
4幕のいちばん凛々しい歌だといふのに、
マエストロが思わず腰を浮かしちゃうほど、
思う存分まったりとエスカミーリョを称えてしまいましたとさ。
金曜夜の音楽漬け、かくもヒーリング効果大。
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