そんな言葉がぴったりくるかたの葬儀。
案内された席に座って遺影の懐かしいお顔を見上げた途端、
ぽろぽろ、ぽろぽろ、と涙がこぼれた。
本当に可愛がってくださった。
懐の深い、広い、愛情あふれるゴッドファーザーだった。
「こんな良い子、給料はずんであげないとよそに行かれちゃうぞ」
「お、元気でやってるか?」
「残念だったなあ、もう少し早けりゃ、息子のお嫁さんに来てもらったのにな」
いつも豪快に笑っておられた。
東京国際ブックフェアに出展するたびに、ブースをのぞきに来てくださったなぁ。
フランクフルトのブックフェアに出張したときも、
ひとりで退屈していないかと父子で代わるがわる声をかけていただいたなぁ。
次から次へと、そんなこんなのことが思い出される。
じかにお顔を見るのは、きっと悲しすぎて耐えられそうにない。
お別れと出棺には残らずに、青山を後にした。
大学の近くまで戻ったころ、それまでの快晴から一転、すうっ、と日が陰った。
あぁ、天上へ向かわれたな、と思った。
大学に戻って、建物に入るのを見届けたかのように、
ぱらぱらぱらっ、っと雨が降り出した。
「ありがとうな、」って上の方から手を振ってくれている気がした。
こんなことって、あるのだろうか。
最後の最後まで、
気にかけてくださっていたみたいな空だった。