先日,NHKテレビのお知らせを見ていると,ある講演会の予告画面で講演者を「演者;(肩書き)○○さん」と紹介されていて,アナウンサーも「大学教授 ○○さんです」と読み上げていました。ここでは“さん付け”の感度が伝わって来て,好感が持てました。人権感覚の奥行きが感じられたといってもいいでしょう。
役所のしごとのことでわたしがこころから気になるのは,放送・執筆原稿が,実際にはどのようなチェック機能を通して吟味されているのかという点です。吟味されているのなら,この機能は一部不能状態に陥っているようです。しごとに従事している人たちの感性が錆びているといえるかもしれません。たぶん,アナウンス担当者や広報編集担当者に一任されているか,関係者の常識が惰性的にはたらいているに過ぎないか,その程度なのでしょう。
これでは原稿作りはいつまでも形骸化・硬直化したままで,この域を抜け出せません。いかにも役所の古い感覚が見え隠れします。公務を司っているという自負心を持ち責任感を自覚しているのなら,ぜひ問題意識をもち,推敲を重ねていただきたいものです。
しかし,たぶんそれは過剰な期待に終わる気がします。それで,わたしの提案です。新聞には記事内容に関して提言する紙面審議会が設けられています。これは外部有識者が紙面全般に亘って提言をする機関です。これと似通った委員会を設置することによって,編集のあり方を常に問い直す姿勢を醸成していく,という手法はいかがでしょうか。広報室に新風が吹き込んできて,何がしかの緊張感がもてる筈。結果,確かな改善につながると思うのです。
放送原稿作りについていうなら,元アナウンサー,あるいは話し方教室の講師のような専門性を有した人をアドバイザーに招いて,点検をしてもらう,研修を受けるなどの手順を踏むことが考えられます。具体的な修養があって初めて,一歩改善できます。
発想の転換を図らず惰性に流されていくだけでは,改善は望めません。だって,体質改善は,思い切った自己改革によってしか成し得ないでしょうから。
(つづく)