吉村昭の「アメリカ彦蔵」を読んだ。
吉村昭の小説は苦手で、今まで、通読したものがない。淡々と事実のみを叙述し、勝手な空想は極力抑えるという手法で、ほとんどノンフイクション小説といえる。もう少し色艶があったらなあ、と思うのだけど、それは読者の仕事なのかもしれない。他の人物だったら読むのをあきらめたかもしれないが、彦なので、最後まで読んだ。帰国してから、明治後のことはさらりと書くのみで詳しくはない。
やはり、彦といっしょに漂流した「栄力丸」の仲間の人生が印象的だ。
彦は炊の見習いとして栄力丸に乗ったのだが、その炊の先輩が仙八。この人は、サムパッチと呼ばれ、ペリーの黒船に乗って日本に帰ることになる。ほんとうは、栄力丸の他の船員も帰るはずだったのだが、仙八だけ残して、他のものは違うルートで帰国する方法をとり、ペリーの船から脱出してしまう。ペリーは日本との交渉に漂流民が必要だったらしい。幕府も仙八に帰国をすすめたのだが、しかし、仙八は上陸を拒否。モリソン号のときには、砲撃されているので、帰国したら罰せられると思ったのかもしれない。その後、宣教師と共に帰国し、宣教師の従者のような仕事をしながら、明治7年に死去している。
もう一人、岩吉。紀州の人。その後、伝吉と改名し、この人は、イギリス領事館の通訳としてオールコックと共に帰国する。安政七年イギリス公使館前で暗殺される。犯人は編み笠をかぶった攘夷派浪人のようだが、清河八郎か長州過激派かではないよね(笑)。桂小五郎などは、岩吉が暗殺されて、「「まことに、きみのよきこと」などと書いているらしい。
あと、「栄力丸」の乗り組み員ではなくて、彦が生まれたころに漂流した音吉がわすれがたい。上海で、彦たちの世話をするのだが、この人は、天保時代、「モリソン号」に乗って帰国するのだが、幕府から砲撃され追い返されてしまう。それ以来、自分は帰国をあきらめ、他の漂流民のための世話に情熱を燃やす。ついに日本に帰国することなく、シンガポールで死ぬ。
彦は、アメリカ公使館の通訳として帰国。彦も攘夷派浪人につけねらわれたらしく、胸にはいつもピストルを持っていたそうな。清河一派が暗殺したあのヒュースケンとも親しかったはずだ。
吉村昭の「アメリカ彦蔵」では、故郷の播磨町に帰ったときの彦のさびしい心境を描いている。故郷には、両親家族はなく、寺の過去張には、自分の戒名まで書かれてある。村の人もだれも自分に近づこうとはせず、故郷は自分とは無縁の土地になっていた。
彦は、アメリカではみんなから好かれ、親切にされた。人柄に愛すべきものがあったのだろう。日本に帰国できる船があっても、自分はあとまわしにして、他の漂流民を先に乗せてあげるなど、他人にも暖かい。いい奴だ。こんな人は、幕末みたいな物騒がしい世界では生き難かったかもしれない。
吉村昭の小説は苦手で、今まで、通読したものがない。淡々と事実のみを叙述し、勝手な空想は極力抑えるという手法で、ほとんどノンフイクション小説といえる。もう少し色艶があったらなあ、と思うのだけど、それは読者の仕事なのかもしれない。他の人物だったら読むのをあきらめたかもしれないが、彦なので、最後まで読んだ。帰国してから、明治後のことはさらりと書くのみで詳しくはない。
やはり、彦といっしょに漂流した「栄力丸」の仲間の人生が印象的だ。
彦は炊の見習いとして栄力丸に乗ったのだが、その炊の先輩が仙八。この人は、サムパッチと呼ばれ、ペリーの黒船に乗って日本に帰ることになる。ほんとうは、栄力丸の他の船員も帰るはずだったのだが、仙八だけ残して、他のものは違うルートで帰国する方法をとり、ペリーの船から脱出してしまう。ペリーは日本との交渉に漂流民が必要だったらしい。幕府も仙八に帰国をすすめたのだが、しかし、仙八は上陸を拒否。モリソン号のときには、砲撃されているので、帰国したら罰せられると思ったのかもしれない。その後、宣教師と共に帰国し、宣教師の従者のような仕事をしながら、明治7年に死去している。
もう一人、岩吉。紀州の人。その後、伝吉と改名し、この人は、イギリス領事館の通訳としてオールコックと共に帰国する。安政七年イギリス公使館前で暗殺される。犯人は編み笠をかぶった攘夷派浪人のようだが、清河八郎か長州過激派かではないよね(笑)。桂小五郎などは、岩吉が暗殺されて、「「まことに、きみのよきこと」などと書いているらしい。
あと、「栄力丸」の乗り組み員ではなくて、彦が生まれたころに漂流した音吉がわすれがたい。上海で、彦たちの世話をするのだが、この人は、天保時代、「モリソン号」に乗って帰国するのだが、幕府から砲撃され追い返されてしまう。それ以来、自分は帰国をあきらめ、他の漂流民のための世話に情熱を燃やす。ついに日本に帰国することなく、シンガポールで死ぬ。
彦は、アメリカ公使館の通訳として帰国。彦も攘夷派浪人につけねらわれたらしく、胸にはいつもピストルを持っていたそうな。清河一派が暗殺したあのヒュースケンとも親しかったはずだ。
吉村昭の「アメリカ彦蔵」では、故郷の播磨町に帰ったときの彦のさびしい心境を描いている。故郷には、両親家族はなく、寺の過去張には、自分の戒名まで書かれてある。村の人もだれも自分に近づこうとはせず、故郷は自分とは無縁の土地になっていた。
彦は、アメリカではみんなから好かれ、親切にされた。人柄に愛すべきものがあったのだろう。日本に帰国できる船があっても、自分はあとまわしにして、他の漂流民を先に乗せてあげるなど、他人にも暖かい。いい奴だ。こんな人は、幕末みたいな物騒がしい世界では生き難かったかもしれない。