虎尾の会

幕末の草莽の志士清河八郎の会の名を盗用しています。主人は猫の尾も踏めません。

アランの文学語録

2009-11-26 | 読書
この本が、67年続いていて、今、80歳過ぎのおばあさんが一人でやっている小さな狭い、きたない(ごめん)古本屋の本棚から抜き出して買った本。

創元社 昭和15年1月10日8版 定価 2円。初版は昭和14年11月だから、2ヶ月も立たずに8版とはいかに?めちゃ売れたのだろうか?この本を読んだ多くの若者は戦地に出たのだろうか。装幀は青山二郎とある。

いい本買った、と思っている。全部で84章あるアランの文学プロポ(短文)。中央公論の世界の名著(アラン)にも「文学論」としてこの本を訳しているけど、半分以下の抄訳だ。これは全訳版。

この本で、哲学者であり、当代一の読書人であるアランはホメロスからプラトン、パスカル、ルソー、ゲーテ、スタンダール、トルストイなどなど世界の散文、文学について語るのだけど、最後にもってきた84章はロマン・ロランの「ジャン・クリストフ」。この本の最後を「ジャン・クリストフ」への讃辞でしめくくるとはうれしい。

プロの文学者で、ロマン・ロランをほめる人は少ないのだが、アランは堂々とロマン・ロランをあちこちで語る。好きだったのだろう。認めていたたのだろう。

アランは人から「ジャン・クルストフ」について書くことを求められたが、ひきうけなかった。それは、「私がこれを初めて読んだときに感じた感激の中のあるものを、もっと成長したときの自分の批判力が否認するということがあるかもしれぬと考えた」そうだ。だが、アランはこう書く。
「ところで少しも左様はならない。初めて読んだときの通りの感銘を返読してみて私は感じる」。

アランは「ジャン・クリストフ」の中から老シュルツ、叔父ゴットフリートの情景を語る。ジャン・クリを読んだことがある人なら、「老シュルツ」とや「ゴットフリート」の名はだれでもが人生の中でも決して忘れられない面影の名になっている。

他の本でもアランがロマン・ロランについて書いていることはある。しかし、この本のように13ページにわたって「ジャン・クリストフ」について語ったものはない。

古本の状態としては、下、経年劣化というところだが、いい本、手に入れた。しかし、これも、いつか売るのだ(笑)。独占せず、人から人へだ。



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