虎尾の会

幕末の草莽の志士清河八郎の会の名を盗用しています。主人は猫の尾も踏めません。

小林多喜二と田口タキ

2007-08-30 | 読書
小林多喜二の小説は読んだことがない。プロレタリア作家として教科書にものっているが、特高に虐殺された写真などもあり、ちょっと近づきたくなかったのだろう。プロレタリア文学というのも、なんか政治目的のために書かれた小説のようで、戦前の共産党のあまりいい感じではないイメージ(この偏見はどこで生まれたのだろう)も重なっていた。ある党派の文学者と見ていたのだろう。

しかし、百姓一揆に関心を持つのに、現代社会の政治について戦った物語であるプロレタリア文学にまったく関心がない、というのもおかしな話だ。なにか先入観、偏見みたいなものがあったのだろう。

でも、今日、小林多喜二に関心をもった。きっかけは、松本清張の「昭和史発掘」の中の「小林多喜二の死」を読んだからだ。

小林多喜二の恋愛がいい。
田口タキという最貧窮の境遇から娼婦のような身になった女性を救い出す多喜二。
多喜二は結婚を願うが、田口タキは多喜二に迷惑をかけることを恐れ、自活の道を選ぶ。清張の簡単なスケッチしか読んでないので詳しいことはわからないが、これは、まるで山本周五郎か藤沢周平の小説にでも出てくるような愛の物語ではないか。多喜二は、タキに石川啄木の歌集を渡して文化の世界への道案内もしたそうだ。多喜二の情熱もすばらしいが、田口タキもなかなかの女性だと思った。29歳で多喜二がなくなったとき、葬儀場には田口タキの姿もあったそうだが、その後、田口タキはどうなったのだろう。わからない。

小林多喜二全集は、ブックオフで長いこと1冊100円で置いていたのを知っている。たぶん、もうないだろう。チェ、買っておけばよかった、と思った。