虎尾の会

幕末の草莽の志士清河八郎の会の名を盗用しています。主人は猫の尾も踏めません。

「チェ・ゲバラ遥かな旅」を見た

2007-06-09 | 映画・テレビ
期待にそむかぬドキュメンタリー。よかった。NHKBS、やるじゃないか。
ゲバラは本で読んだこともなく、ただ、ゲバラ青年時代の旅を映画化した「モーターサイクルダイアリーズ」を見ただけで、ゲバラの生涯はよく知らなかったのだけど、知らない人にもゲバラのことがわかるように作られている。構成が巧みだ。

ゲバラ最期の土地ボリビアを訪ね、ゲバラと最後に関わった人にインタビューをする旅だ。インタビューの間に、たくさんの写真や過去のフィルム映像を挿入して、ゲバラの生涯がわかるような構成になっている。

青年時代の南米の冒険旅行、そこで知った南米の過酷な現実や不平等、そして、カストロと知り合い革命運動に入ったこと、2度目の結婚をし、日本の広島まできたこと、カストロと別れてボリビアに入るまで紹介している。

ゲバラが捕らえられ、監禁されていたのは、ボリビアの片田舎の小学校。ゲバラと最後に言葉を交わしたのは、その小学校の女教師(当時19歳)。そおっと、小学校の教室を開けると、そこには縛られたゲリラ兵士。驚いて黙っていると、ゲバラが「こういうときは、おはよう、というものじゃないの」と話しかける。
このとき、女性は、ゲバラが何者か知らず、ゲリラは極悪犯人としか思っていなかったが、服がボロボロ、髪がぼうぼう、髭もじゃのゲバラを「美しい男でした」と語る。
「あなたは、家族があるの?」と(家族があるのに、ゲリラになんかなって、という意味をこめて)問うと、その意味を了解したように、「妻もあれば、子どももいる。だけど、ぼくは、妻や子どものためではなく、思想のために生きる。これが僕の思想で生き方だ」と答える。「君こそ、こんな片田舎の何もないところで、どうして教師なんかしてるの」とゲバラから問われ、女性は、「これは私の天職です。これが私の思想であり、生き方です」と答えると、ゲバラはにっこり笑ったそうだ。
たった半日のゲバラとのわずかな交流だったが、この女性はゲバラとの出会いがその後の人生を大きく変えたようで、「貧しい人間のために戦い、人々のために命をかけた」ゲバラと最後に話を交わし、食事を与えた人間としての誇りを持ち続けている。

他に、ゲバラの死体を見て暗殺されたと見抜いた医師、死体を洗った看護婦さん、ゲバラと共に戦った同志、友人のインタビューもある。
ゲバラは死んでもあの大きな目は閉じなくて(だれがやってもまぶたは閉じなかった)、目を開いたままの死体が公開される。極悪人として公開したのに、ゲバラを見た人は、横たわったゲバラを見て、「キリストと似ている」と言い出したそうだ。

ゲバラの写真やフイルム映像はたくさん出てきた。たしかに、ゲバラは男前というか、美しい男だ。魅力的だ。カリスマ的存在になるのもうなずける。

常に太い葉巻を加えていた。戦陣でも、執務中でも、人を抱擁しているときも、片手から葉巻をはなさない。この嫌煙の時代、南米の人たちは、タバコはどうしてるのだろう。

ゲバラの埋葬場所は、そこが聖地になることを恐れる政府によって秘密にされ、その埋葬場所が発見されたのは1997年のことらしい。

ゲバラは「平等な世の中を作りたい、不平等をなくしたい」そのために生きた。
ゲバラも「救民」を志した男なんだ。

取材、構成、ディレクターも戸井十月氏だ。責任も戸井十月氏にある。NHKでは作れないだろう。しかし、NHKもよくこの企画を受け入れ、放送した。よくやった。