らんかみち

童話から老話まで

酒の肴は酒呑みに聞け

2014年01月21日 | 酒、食
 冬になると一度はチャレンジする「豚バラと白菜の日本酒炊き」だけど、美味しかった例しがない。「水を入れないで酒だけで炊かないとこの味にならないのです」と菩提寺の住職にご馳走になったのは、もう4年前のことか。
 最初は酒と水を半々でやってみたけど、住職のおっしゃるとおりの結果になった。次は酒だけでやってみたけど、アルコール分が抜けきらず、酒も飲まないのに酔ってしまった。

 アルコールの沸点は水より低いはずだから、沸騰させたらアルコールは直ぐに抜けると思っていたけど、酒の成分であるエタノールの沸点は78℃だったのか! この新発見をふまえて今宵また試してみた。最初に酒だけを沸騰させ、白菜と豚バラを交互に重ねて炊いてみたんだが、やっぱり酒が抜けないよ。
 沸騰の時間をもっと長くして、白菜だけを煮込んでから豚バラの投入という手順が良いようだ。それと、日本酒は塩抜きの料理酒じゃダメだ。飲むに堪えうる酒じゃないといけないんだね。

 豚バラは、この場合あんまり脂ギッシュなのは敬遠したい。それで思い出すのは、よく通っていた場末の飲み屋だ。マスターの得意とするキムチポッカは脂身ばかりの安いバラ肉を使っていた。それが変に美味しくて、自分で作ってはみたけど、どうやってもマスターの味にならない。同じ銘柄のキムチを使ってもだ。
「売れ残って酸っぱくなったキムチを使っているからよ」と、惜しげもなく奥義を打ち明けてくれた。それって、売れ残ったというより冷蔵庫の隅に放置されていたやつだろうが!

 豚バラ肉は安物、キムチは腐りかけ。いわんや、くわえタバコで作るんじゃネー! まさに場末の面目躍如といった有り様だったけど、あれは旨かったなぁ。漬け物もマスターは自力で漬けていたけど、醗酵と腐敗の狭間で絶妙な旨さを醸し出していた。
 客は気の置けない常連さんばかりだったってのもあるけど、マスターも酒飲みだったから肴もポイントを押さえていたと思う。主婦と違って、マスターは酒飲み相手のプロだったんだって、今なら評価できる。餅は餅屋ってことだね。