らんかみち

童話から老話まで

鬱とメランコリーの間に立って

2011年08月21日 | 暮らしの落とし穴
 鬱と書いたら「ぼちぼちやりたまえ」といった励ましのメールをいただきました。がしかし、ふさぎ込む理由がなくて鬱状態というわけじゃないんです。
 大企業が村の真ん中を造成して巨大な建造物を動かすことになったのですが、村人は必ずしも大歓迎というわけではない。だからといって数人の村人が大企業を向こうに回して一揆を起こしても、蟷螂の斧にすら見劣るでしょう。

 造成の槌音が聞こえてくるたびに無力感に苛まれ、午後5時を告げる町のメロディーサイレンが「遠き山に日は落ちて……」を響かせると、ゲームオーバーになった気がして胸に秋風が吹き抜けるのです。
 ドボルザーク先生を貶める気はないし名曲だと思うけど、あんなメランコリックな曲、毎日聴きたくないよ~!

Chopin-Viardot, Mazurek Nr 8 "Faible coeur" - Aga Winska, sopran


 メランコリックついでにショパンのマズルカです。ピアノ曲を歌っているはずなんですが、どの曲かぼくには分かりません。
「君も発表会に出たまえ」と、ピアノを習い始めて2年目のころ、商売っ気たっぷりの先生に勧められて同じくマズルカを弾いたことがあります。
 ぼくの腕前ではショパンを弾くには早すぎたんですが、発表会は先生が儲かるとあって、嫌々だけど出ざるを得ませんでした。

 本番の1週間まえからドキドキしてましたが、当日ホールに出かけて驚いたのなんの。仮に出演者が50人いたとして、その数倍のお父さんお母さん、じいじにばあばが客席を埋めつくしていたのです。
 そこでね、演奏中にとんでもないミスをしでかして赤っ恥をかいたわけです。そりゃもう、半年は屈折して過ごしましたかね。

 なんでこんな昔の事件を思い出して恥を曝すかと申しますと、嫌なことを忘れるには女に逃避するのもありでしょうが、新しい嫌なことをこしらえるか、昔の悪夢を思い出す手もあると思うからです。
 これは悪夢の連鎖を自らの手で制御できないと逆効果の荒療治ですが、制御する自信はある、いやあると思う、あったら良いな……。