らんかみち

童話から老話まで

都会の人は、刺身に味の素を

2009年09月19日 | 酒、食
 近所のおばちゃんたちがキャッキャはしゃぎながら桟橋で小鯵釣りをしている、そういう光景が当たり前なこの村です。でも10cmの鯵、20cmの鯖だからといってバカにしちゃいけません。刺身を作っていただいたら鯖も悪くなかったけど、鯵なんかしっかり存在を訴えてくるんです。
 
「田舎はお魚が美味しいんでしょうね」と、町に住む皆さんに聞かれますが、都会の腕の立つ料理人が作った刺身の方が美味しいに決まってるじゃないですか。ぼくも大阪に住んでいたころ、和歌山に出張したとき同じことを言いました。すると、
「観光旅館で鯛の刺身を食べるでしょ、半分はボラだよ。あんたらにはわからん思うけど。フグもカワハギを混ぜてるよ。蟹? それは山陰で聞いたらいいけど、足のとれたやつをアロンアルファでくっつけて客に出すんだよ。味は変わらないから、それでいいんじゃない」

 裏話って聞いて気分のいいもんじゃないですが、仲良くなった飲み屋さんは正直なことを教えてくれます。「クジラっていうけど、今あんたが食べているのは、イルカ」みたいな……。
 当地は観光地じゃないから、魚の味を熟知している地元の漁師相手に下手な小細工をする料理屋はあり得ない。でも都会からの観光客をターゲットにしている施設なんかでは、ハマチは養殖、エビは輸入、刺身には味の素をふりかけているかもしれません。
「都会の方々は、その方が美味しいとおっしゃるんです」
 と言うのは業者の思いやりかな、でもその通りでしょう。ぼくは苦手だけど、天然ハマチより養殖ハマチを選ぶ地元民だって少なくないです。
 
 小鯵を釣っていたおばちゃん、ほとんど漁師並の腕前で、今夜は鯵の仕掛けにチヌがかかりました。30cm、1kgあるでしょうか、スーパーで買えば1000円くらいかな。大物を釣ったという感動はあるみたいですが、実は小鯵の方が刺身でおいしかったりするんです。魚の味ってわりと難しいもんですね。