文化祭が中止になったのを受けて、皆さん窯入れは中止なさったようです。「ぼくは焼きますけど」と連絡を入れたら「どうぞお一人で頑張ってください」って……。大きな皿を下手に焼くと爆発の危険があるので、巻き添えを食らうのを嫌ってのことであり、ぼくを嫌いなわけじゃないとは分かってはいるものの、心なしか冬の足音が聴こえてくるようでした。もっとも、ぼくの作品だけで窯からあふれそうだったので結果的にはそれで良かったのですが。

全部入りきらないので重ねたり並べ替えたりと、四苦八苦しているところへ要釉斎先生がやってこられました。
「うむっ、そこはそうじゃない、上と下を入れ替えたまえ」などと檄を飛ばしてくださるので応えようとしていたら、ぼくが自分で誤って茶碗を一つ割ってしまいました。
「割れたこの作品は何のつもりかね?」
「はぁ、茶碗のつもりですが……」
「茶碗? これがかね、茶を飲まん者は茶碗を作るなと云うが、これは茶碗にあらず! 焼くに値せんもんなら、割れて良かったじゃないかね」
先生の仰る通り駄作、習作ではあるんです。素焼きしてしまったら元の土には戻せないのだから土の無駄になるところだった、とはいえ「うちの愚妻を他人にブス呼ばわりされる筋合いは無い!」という感情を分かっていただけるでしょうか。
一つ割れたおかげで労せずして詰め終わりましたが、ぼくも要釉斎先生も焚いたことのない窯なので危うく大失敗しかかったところを、先生のアドバイスでなんとか乗り切れました。
「先達はあらまほしきことなり」とはこのことだなぁと先生に感謝したい気持ちになったとき、「君の焙烙鍋(ほうろくなべ=物を煎るときに使う皿状の物)が割れずに焼けたら良いがのぅ、フォッフォッフォッ」と、ぼくの大皿を焙烙鍋呼ばわりして先生は帰って行かれました。
初めて窯焚きしたときは窯に近寄るのも怖かったことを思うと、今日は我ながら良く頑張った。そのご褒美じゃないけど、今宵はブリ大根を作ってみました。
下手に作るとせっかくのブリが台無しだけど、今回のもやっぱり美味しくなかった。そもそもぼくはブリは好きじゃないので母のためにこしらえたようなも、でも昨日の豚の角煮がそうだったように、ラップしてテーブルに置いてたら朝には無くなっているから母が食べたらしいけど、母は憶えていないんです。作り甲斐が無いといえばそうですが、食べたのなら良しとしますか。

全部入りきらないので重ねたり並べ替えたりと、四苦八苦しているところへ要釉斎先生がやってこられました。
「うむっ、そこはそうじゃない、上と下を入れ替えたまえ」などと檄を飛ばしてくださるので応えようとしていたら、ぼくが自分で誤って茶碗を一つ割ってしまいました。
「割れたこの作品は何のつもりかね?」
「はぁ、茶碗のつもりですが……」
「茶碗? これがかね、茶を飲まん者は茶碗を作るなと云うが、これは茶碗にあらず! 焼くに値せんもんなら、割れて良かったじゃないかね」
先生の仰る通り駄作、習作ではあるんです。素焼きしてしまったら元の土には戻せないのだから土の無駄になるところだった、とはいえ「うちの愚妻を他人にブス呼ばわりされる筋合いは無い!」という感情を分かっていただけるでしょうか。
一つ割れたおかげで労せずして詰め終わりましたが、ぼくも要釉斎先生も焚いたことのない窯なので危うく大失敗しかかったところを、先生のアドバイスでなんとか乗り切れました。
「先達はあらまほしきことなり」とはこのことだなぁと先生に感謝したい気持ちになったとき、「君の焙烙鍋(ほうろくなべ=物を煎るときに使う皿状の物)が割れずに焼けたら良いがのぅ、フォッフォッフォッ」と、ぼくの大皿を焙烙鍋呼ばわりして先生は帰って行かれました。
初めて窯焚きしたときは窯に近寄るのも怖かったことを思うと、今日は我ながら良く頑張った。そのご褒美じゃないけど、今宵はブリ大根を作ってみました。
下手に作るとせっかくのブリが台無しだけど、今回のもやっぱり美味しくなかった。そもそもぼくはブリは好きじゃないので母のためにこしらえたようなも、でも昨日の豚の角煮がそうだったように、ラップしてテーブルに置いてたら朝には無くなっているから母が食べたらしいけど、母は憶えていないんです。作り甲斐が無いといえばそうですが、食べたのなら良しとしますか。
