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■星野恒隆個展 (8月11日まで)

2008年08月09日 22時31分23秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 星野さんは苫小牧在住の画家。日輝展常任理事をつとめています。
 高校時代までは小樽に住んでおり、「夏を味わいたい」という意向もあって、よく夏季に小樽で個展を開いています(苫小牧は太平洋岸のため夏は涼しい)。

 水彩と油彩の両方をこなし、いずれも、穏当な写実の風景画が中心。静物画の小品もあります。

 とくに目を引いたのが、現在のように整備され観光地化する以前の小樽運河を描いた作品。古いデッサンをもとにしています。
 対岸にはふつうの民家があったり、いまより運河自体の幅も広かったり…。北海製缶のある北側はそれほど現在と変わりませんが、札幌に近いほうは、現在とまるで雰囲気が違います。

 小樽運河の埋め立てをめぐって大論争がまきおこったのは、たしか1980年前後でした。それまでの運河は、古いはしけがうかび、夏には異臭がして、すっかり忘れられた存在でした。
 運河は一部を埋め立てられて道路が拡幅されましたが、整備されて小樽に多くの観光客を呼び、渋滞解消にも役立ちました。ただし、すっかりきれいになって観光客だらけになってしまったため、昔の情緒をなつかしむ人も少なくありません。

 星野さんから小樽運河を描きはじめたころのお話をうかがいました。
 運河埋め立ての報道に接して
「じぶんの青春が失われる」
と思ったそうです。
 年末年始、一家で小樽に帰省していたときに運河を見た瞬間、なにかを感じて、スケッチブックを購入。それから雪の中を、憑かれたようにスケッチしてまわりました。帰省を途中で切り上げて、当時住んでいた室蘭の自宅にこもり、文字通り寝食を忘れて筆を執っていたということです。
 絵のことを知った友人たちが
「道新支社のギャラリー、予約しておいたから」
と、星野さんにことわりなく個展の会場を確保。会場では、先輩の画家から
「これで後戻りできなくなりましたね」
と称賛されました。
 これを機会に、ふつうの勤め人だった星野さんは、10代のころにあこがれていた画家への道を歩み出したとのことです。もう40代になろうとしていたころでした。 
 星野さんにとって小樽運河は特別に思い入れの深いモティーフなのだなあと、しみじみ感じました。
 星野さん、ありがとうございました。


08年8月5日(火)-11日(月)10:00-18:30
小樽運河プラザ三番庫ギャラリー(小樽市色内2)




04年の個展(画像なし)


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