■新出リヱ子個展 （7月7日まで）

　
　枯れたヒマワリを題材に、ほとばしる情熱を描く札幌の新出リヱ子さん。一昨年、道展の会友に推挙されました。全国規模の有力公募展である春陽会にも出品しています。

　最近は、一見、ヒマワリとわからない、抽象画のような画面が増えています。
　昨年、30年以上も勤めていた職場を離れて自由な時間ができたためか、細部の筆遣いがずいぶん丁寧になった－と言われる、とおっしゃっていました。
　たしかに、これまでの新出さんは、表現主義的というか、勢いに任せたような荒々しい筆遣いの部分がありました。今回の作品はいずれも、落ち着いて小さな丸や四角を配置しています。
　といっても、活力というか、絵の持つパワーの総量みたいなものは、まったく減失した感じはありません。
　見ていて元気になる絵だと思います。

　もちろん、細部が話題になるのは、もともと新出さんの絵は、全体の大まかな構図がしっかりしているから。今回も、一見離れた線と線が、じつはひとつながりになっているのとおなじ効果を上げている作品があり、舌を巻きました。

　冒頭の画像は、130号キャンバスを3枚横につなげた「九の感動」。
　超大作なので、正面から撮影することができないほどです。
　この絵をずーっと眺めていて、ぱっと思いつきました。
「新出さん、一見ヒマワリに見えて、これってもしかしたら札幌ドームなんじゃないですか？」
　新出さん、正解！　といった表情でニッコリ。
　家が福住なので、歩いて15分ほどの札幌ドームには昨年、日本ハムファイターズの応援に足しげく通ったそうなのです。
　「いろんな人がいるので画家としてすごく勉強になるし、何度も応援していると、選手の個性なんかもわかってくるんです。客席のみなさん誰一人として落ち込んだりしてなくて、意気揚々としているのがおもしろいですよ。それに絵描きなら、感動することってやっぱりたいせつなんじゃないかと思うんです」

　部分を拡大した画像をつぎに掲げます。

　　　　　　　　　　　

　最初はもうすこしリアルに人の姿などを描いていたそうですが、仕上がりは、個々のモティーフを描くというよりは、ドームで味わった優勝の感動から受けた印象やエネルギーをあらわしているようです。
　イエローオーカー系が主ですが、アクセントとしての紫の使い方がおもしろいと思います。

　「公募展に出す絵とちがって、制約がないので、自由自在に伸び伸びと描けました。最初から、時計台ギャラリーのこの壁にかけるつもりだったので」
　当初、この大作の右側に散る赤につながるような、50号の作品も右側に展示する予定でしたが、壁面をすっきりさせるために取り外したそうです。
　うーん、それにしてもすごい。圧巻。

　　　　　　　　　　　

　昨年は春陽会の大先輩である札幌のベテラン画家谷口一芳さんともいっしょに観客席に行ったそうです。谷口さんは最後まで観戦された由で
「こういう趣味のあるのはいいことだ。中川一政は格闘技が好きだったんだよ」
と励まされたそうです。

　ほかの絵の画像も掲げておきます。
　150号の「躍」です。

　　　　　　　　　　　

　すこし落ち着いたなかにも、生命の持つ根源的な力がこめられているかのようです。

　新出さんは34年間食堂に勤め、しかも40代までは朝7時に出て夜11時に帰り、土日も出勤していたそう。絵筆を執るのはいつも夜中だったといいます。そういうタフさが、作品にはよく出ているような気がします。
　退職したあとも、しばらくは昼間は絵を描けなかったとのこと。
　春陽会では3年連続で賞候補になり、ことしは六本木の美術館で2点展示になったとのこと（正面の壁の2点が、その作品です)で、張り切っていました。
　筆者は新出さんより20歳も若いのですがいつもくたびれたようすなので、すこしは見習って、元気にいきたいと思うのでした。

　出品作は次のとおり。いずれも油彩。
「外野」（これも野球がテーマなんですね。F10)
「共に」(S100)
「仲」(F130)
「喜びの瞬間」(同)
「黙々」(同)
以下、小品。
「応」「湧」「援」「声」「迫」「動」


07年7月2日(月)－7日(土)10：00－18：00(最終日－17：00)
札幌時計台ギャラリー（中央区北1西3　地図A）


　なお、3階では、おなじく春陽会に出している荒川敬子さん、佐藤史奈さん、豊嶋章子さんが3人展をひらいています。

□春陽会の新出さんのページ

■03年の個展