置戸町の旧ふるさと銀河線置戸駅2階に昨年10月18日オープンした「置戸ぽっぽ絵画館」に、1月20日、ようやく行ってきた。
□公式サイト http://oketoart.web.fc2.com/
何度か新聞などで報道されているので、ご存じのかたも多いだろうが、開設までのいきさつは、ざっと次の通りである。
・東京在住の画家、岩橋好男さんが2012年2月、読売新聞の投書欄に「無名画家の作品 寄贈の場を」という文章を寄せた。一流画家の二、三流の作品よりも、無名画家の「一品」を集めて展示してくれるところがあれば、という趣旨。
・それを読んだ置戸町の商店主で町議の細川昭夫さんが、読売新聞を通して、岩橋さんに手紙を出した。
・5月、岩橋さんと、つきあいのある銀座の画廊オーナーの宮坂祐次さんが置戸町を訪れ、細川さんに協力を約束。
・宮坂さんの尽力で絵画など100点ほどが集まった。作家本人からのほか、コレクターからの寄贈もあり、中には病の床から寄贈を申し出てじきに亡くなったコレクターもいた。
・初日のトークショーには、岩橋さん、宮坂さんと、美術評論家ワシオトシヒコさん、「アートソムリエ」と称するコレクターの山本冬彦さんもかけつけた。
とまあ、こういうわけで、25日から「選ばれた寄贈作品展」が1年間の日程で始まり、1人1点ずつ、サムホールから100号までの絵画(ただし、書と写真が1点ずつある)が展示されている。
100人いるそうだが、たしかに、筆者でも知らない人がほとんど。
道内関連では、伊藤彰規さんが「モランディ美術館」という軽いタッチの素描的な作品を出している。伊藤さんは、北見出身で、阿部典英さんらによるグループ展「WAVE NOW」のメンバーでもある。
ほかに、澤田文一(1949~)、古田恵美子(1950~)、和田義郎(1948~)の3氏が「北海道生まれ」となっている。和田さんは夕張生まれとのこと。
筆者が名を知っていた画家としては、院展特待の大矢十四彦、独立の伊藤清和、智内兄助、元自由美術の早川重章の各氏ぐらいであった。
絵画館の設立のきっかけをつくった岩橋さんの水彩「摩周湖」は、薄く淡い色合いが独特。仕上がりはきれいで、これほど汚れのない水彩画は、実は珍しいのではないかと思う。
大矢さんの日本画「ユーカラの詩」は、ムックリを奏でるアイヌ民族の母子像。
和田さんの「安曇野の春」は、細密な写実の風景。
亀山裕昭さん「stand by me」は、廃業したようなガソリンスタンドを横長の画面に描写。リアルだが、それだけではなく、地方の現実に迫る視線が、個人的に好感を抱ける。
飛澤均さん「霧の家」は、霧の中に立つ洋風の家を描き、幻想的で美しい風景画だ。
ただ、全体的に、展示環境はあまり良いとは言えない。
いわゆるホワイトキューブからはほど遠い。
窓が多すぎるのだ。
冒頭の画像からも推察できるだろうが、大きな窓があるのではなく、縦長の窓がいくつもあり、その間の壁に作品が展示してある。
ただし、それでは壁面が足りず、階段にも展示し、さらにイーゼルをいくつか据え付けて、絵をのせている。
太陽光が入るし、監視者は常駐していないし、美術品を展示する会場というイメージとはちょっと違う。
明るくきれいな建物であるのは確かだが。
あと、寄贈作品が今後増えたら、バックヤードはどうなるのか、展示の企画はどうするのか(同じ作品を掛けっぱなしでは、いずれ誰も来なくなる)など、いろいろ課題はありそうだ。
ただ、昨年の「置戸コンテンポラリーアート」といい、オケクラフトといい、人口3千人のマチに、芸術や文化を育てる機運がこれほどあるというのは、確かにすごい。
置戸というマチの底力を見た思いだ。
こういう施設ができることの背景については、別項ですこし書きたい。
・北見バスターミナル(JR北見駅から徒歩3分)から、北海道北見バスの 「置戸」「勝山温泉」「陸別」方面行きに乗り「置戸」降車すぐ
ちょっと奥まったスペースに飾られておりました。
ちょっと神秘的でひそやかな風景に心ひかれました。
オホーツクにぜひ一度いらしてください。
流氷のシーズンもいいですよ。