Gikuri

ギクリのブログ。たまに自意識過剰。

余呉町とケルトの深い関係

2006-11-09 | 読書
妖精学入門』を読みました。
妖精といっても、地域はほぼケルトに限定されます。
国で言えば現在のアイルランドとイギリスですね。

ケルトの妖精の「小事典」が付いていて面白かったです。
「イングランドの妖精」の項で紹介されている
ウィル・オ・ザ・ウィスプって、「ぷよぷよ」に出てきた
あの人魂のことでしょうか(たしか雑魚キャラだったな)。
一説には洗礼前に死んだ子供の魂だとか。

日本や中国に伝わる「羽衣説話」に似た話もあるんですね。
天女達が水浴をしているところ、人間の男が羽衣を一つ隠して、
天に帰れなくなった天女を妻にするってやつです
(結局天女は羽衣を見つけて帰ったりする。
羽衣伝説といえば滋賀県湖北の余呉町ですな…)。
スコットランドのローンという海に住むアザラシ族の女が、
泳ぐのに必要なアザラシの皮を漁師に取られて結婚し、
子供も出来たが皮を見つけて海に帰る、という民話。
またアイルランドのメローという人魚の女は
赤い羽根の帽子がないと海に潜れなくて、これまた
男に帽子を隠されて結婚して子供も出来たが
男が留守の際に帽子を見つけて帰ったそうな。

ただ2点ほど疑問があります。一つは妖精の定義を
もう少し明確に書いた方がありがたかったかなということです。
日本人のイメージでは、西洋の主な超自然的存在は

(1)一神教の神 (2)一神教の天使 (3)多神教の神
(4)神話的英雄 (5)狭義の妖精 (6)死者の幽霊
(7)怪物・魔物 (8)魔女・魔法使い (9)悪魔

あたりかと思いますが、「演じられた妖精」の表などから
判断すると、恐らく3から9(?)が妖精扱いで、かなり広義です。
文中から引用すれば、妖精すなわち「超自然的な生きもの」。
一方で先述の小事典では5と7に限られていましたし、
冒頭の説明では5~7に加えて2と3の落ちぶれたもの
(堕天使、卑小化した古代の神々)もありました。
日本人の感覚では、童話やファンタジー映画の影響もあり、
ほぼ人型に近い容姿で神ほどの力は持たず、1~4及び
6~9に当てはまらない狭義の5が妖精と思いがちですので、
もし広義の妖精を前提として語るのであれば
「入門」ということで詳しい定義を示していただければ、と。

もう一つはリンク先でも似た指摘がありましたが、
妖精「学」という一つの学問として扱うことについて、
独立した学問であるべきという説得力が今ひとつなこと。
この本で取り上げられている「妖精」は、ほぼ
「ケルト」という、決して広くはない一地域のものだけです。
各地方によって一応違う妖精の民話が伝えられているので
一文化と言ってしまうのが適切かどうか知りませんが、
「学」と言うからには一地域に限定されたものでなく、
ある程度普遍性があるのが普通だと思うんです
(でもWikipediaの「-logy」の例を見たら、「内容が充実し、
方法論を整えられ」ていない「容易な造語」も含めて
何でもありですね…。天使学・悪魔学のみならず
UFO学もあるので、妖精学くらい余裕ですね)。

ただし「○○学」の上に「××○○学」と修飾語が付いて
「○○学」を限定することがあります。
「妖精」は、「妖精民俗学」「妖精神話学」(?)のように
「××」の修飾語部分にはなり得るかもしれませんが、
「○○」を担うというところまではいかない気がします。
それを言えば「鬼」のような他文化の超自然的存在も
同様に「鬼学」みたいに扱わなければならないのでキリがない。
そういうのを集めて普遍化すれば可能性はありますが。

確かに従来の民俗学研究のアプローチだけではなく
文学、歴史学、美術学、心理学等からのアプローチが必要と
いうのはその通りですし(別領域からのアプローチの
必要性が訴えられてるのは他の学問領域も同じですね。
最近は「学際的研究」という言葉もあります)、
逆に他領域において、妖精のような超自然的存在の研究が
活用されることで何か新たな成果が得られるのかもしれませんが、
アプローチの問題と学問領域としての独立の問題とは別というか、
「学」まではいかないだろうという感想を持ちました。
コメント    この記事についてブログを書く
« Nyam | トップ | 3ヶ月分まとめてツッコミ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

読書」カテゴリの最新記事