今回は、「霊長類としてのヒト」の展示の内、拇指対向性・平爪・指紋をご紹介します。
4.拇指対向性
拇指とは、親指のことです。霊長類は、この親指が他の4本の指と向かい合う形になっており、木や物を握りやすくなっています。ヒトが異なるのは、他の霊長類はこの拇指対向性が手のみならず足にもあることです。
ただ、厳密に言うと、この拇指対向性は旧世界ザルと類人猿に見られるもので、新世界ザルや原猿類はそれほど示しません。また、コロブスとクモザルには、親指はありません。コロブスの親指は小さないぼ状になっており、クモザルでは中手骨の痕跡は残っていますが、表面上はなくなっています。
樹上生活に適応した霊長類は、手足を使って木に登りやすくしたのだと解釈されています。一方、ヒトは、直立二足歩行をすることで、足は手の形とは異なってきました。興味深いことに、大人は当然、自分の足がどうなっているかわかっていますが、幼稚園生や小学校低学年の生徒さんに質問をすると、まず、自分の靴や靴下を脱いで見ようとする場合が多々みられます。
ここでは、オランダの業者に発注して、オランウータン・ゴリラ・チンパンジー・ヒトの手足の模型を製作してもらいました。なかなか、良くできています。
群馬県立自然史博物館40.拇指対向性(*画像をクリックすると、拡大します。)
5.平爪
哺乳類の爪は、鈎爪・蹄・平爪に分化しています。しかし、霊長類では、基本的に平爪になります。ただ、原猿類の足の第2指は化粧爪を持っています。また、マーモセットは、足の親指だけ平爪ですが、残りの指は鈎爪です。さらに、歌でも有名なアイアイは、マーモセットと同様に足の親指だけ平爪で、残りの指は鈎爪ですが、手の指の第3指は針金のように長くなっていて、幼虫を掻き出して食べるのに使っています。
ここでは、オランダの業者に発注して、オランウータン・ゴリラ・チンパンジー・ヒトの左手を製作してもらいました。ただ指を見せるのではつまらないということで、ボールを握った状態にしました。
群馬県立自然史博物館41.平爪(*画像をクリックすると、拡大します。)
6.指紋
指紋は、ネズミにも簡単なものが見られます。また、原猿類や真猿類の指紋は単純な構造をしています。しかし、大型類人猿の指紋は、ヒトと同様に複雑です。指先には稜がありますが、この稜には汗腺があり、少し湿らせることですべり止めの役目をします。
ちなみに、ヒトの場合、渦状紋・蹄状紋・二重蹄状紋・弓(波)状紋の4種類があります。ちなみに、日本では、元々日本にいた在来系(縄文系)の人々と、弥生時代になって渡来してきた渡来系(弥生系)の人々がいますが、在来系の人々には蹄状紋が多く、渡来系の人々には渦状紋が多いことが知られています。
ここには、来館者の指紋を拡大して見ることができる装置を展示しています。また、指の拡大模型は、ドイツのソムソ社製の指の模型を購入し、切断して展示しています。
群馬県立自然史博物館42.指紋展示(*画像をクリックすると、拡大します。)
群馬県立自然史博物館43.指紋展示拡大(*画像をクリックすると、拡大します。)