石仏散歩

現代人の多くに無視される石仏たち。その石仏を愛でる少数派の、これは独り言です。

122日本石仏協会主催石仏見学会-5-(静岡市清水区由比町)

2016-05-17 05:57:10 | 石仏めぐり

由比の宿場本陣近くの寿司屋で由比名産「桜エビ丼」の昼食。

午後一番は、これも由比の入山という地区のお堂。

◇入山庚申堂(静岡市清水区由比町入山)

バスは山の中へとんどん上がって、集落のどんづまりでストップ。

かなりの勾配の坂を歩いて庚申堂へ。

年配のご婦人が5,6人屯している。

    後姿は、ガイド役の井戸寛さん

観音の日の集まりだそうだ。

庚申講もやっているという。

江戸、明治の名残がここには、かすかにあることになる。

お堂の横が広い空地になっていて、その奥に観音石仏が3段に並んでいる。

西国三十三所観音で、天保七年(1836)造立。

 石工銘はないが、「信州石工じゃないの」と誰かのつぶやきが聞こえる。

お堂の前にも希少な石仏がある。

「醍醐塔」なるものを、私は初めて見た。

像容は、宝珠を両手で持つ地蔵のようだが、どうなのか。

『日本石仏図典』で「醍醐塔」の項を見る。

「醍醐の味は、微妙第一にしてよく諸病を除き、諸の有情をして身心安楽ならしむ、とあるように、仏教の精髄ともいうべき醍醐塔を造立する功徳の、はかりしれないことを示すものであろうか」。

左端の石仏は、左手の未敷蓮華に右手をそえるように見えるので、聖観音だとばかり思い込んでいた。

「これは馬頭観音だよ」。

誰かの声に振り返ってみる。

たしかに頭上に馬の顔がある。

 

それにしてもこの女人(にしか私には見えないが)のお顔のすばらしいこと。

柔和な佇まいは、見る者すべてに安らぎを与えてくれるようだ。

石仏というより、現代彫刻としても立派に通用する作品に思える。

お堂に集まった女性たちは、眼下の集落の住人。

三十三所観音も、醍醐塔も馬頭観音も、集落の人たちが寄進したものに違いない。

そんなに戸数があるようには見えないから、一戸当たりの負担も少なくなかっただろう。

お金よりも信仰心が上回る、そんな時代がこの集落にはあったことになる。

庚申塔も2基ある。

うち一つが面白い。

なにしろ「南無青面大鬼王」と刻されている。

しかも造立年が、昭和54年(1979)と新しい。

ありふれた「庚申塔」や「青面金剛」ではなく、「南無青面大鬼王」と彫るように石工に発注した人物が、下の集落にいた(いる?)ことが面白い。

どんな人なのか、興味深い。

もう1基も捨てがたい。

一猿一鶏の庚申塔。

写真では、鶏が分からない。

写真が小さくて猿も分かりづらいが、「聞かざる」。

一猿は「聞かざる」ばかりではない。

と、すると「聞かざる」を選んだ根拠があるわけで、タイムスリップして、そこらあたりを訊いてみたいと思う。