石仏散歩

現代人の多くに無視される石仏たち。その石仏を愛でる少数派の、これは独り言です。

122日本石仏協会主催石仏見学会-1-(静岡県藤枝市)

2016-05-01 05:32:41 | 石仏めぐり

日本石仏協会の「一泊石仏見学会」には、過去一度参加したことがある。

その模様は、このブログに、NO42、43「日本石仏協会主催日和田高原石仏巡り」としてアップした。

3年半前の2012年11月のことです。

 

今回参加したのは、静岡県の石仏巡りは初めてだからですが、ガイドに井戸寛さんの名前があったからでもあります。

井戸さんは、静岡県東部を守備範囲として、長年精力的に石仏調査をして来られた方で、その活躍ぶりは『日本の石仏』で存じていました。

井戸さんのガイドなら珍しい石仏に会えるかも、と期待が膨らみます。

2016年4月17日(日)午前10時45分、マイクロバスはJR藤枝駅を出発。

参加者17人。

皆さん、石仏協会の会員で、非会員は私ひとりくらいか。

顔なじみの和気藹々のムードが、部外者の私には、かえって、孤立感を深めるように働く。

初日の見学予定地は、静岡県藤枝市。

藤枝市は、中世には鎌倉往還の、近世では東海道の宿場であり、交通の要として機能してきた。

そうした歴史と伝統が石仏に現れる可能性が高い。

ガイドするのは、地元藤枝市の石材会社の社長、佐藤雅基さん。(井戸さんは、静岡市、富士市を担当)

バスはどんどん山の中へ入ってゆく。

奥地から下りながら順番に石仏を巡って行くプランのようだが、藤枝駅を出る時に降り始めていた雨は、ますます強くなるばかり。

雨に加えて風も強く、豪雨というよりも嵐のような状態。

後で知ったのだが、この日、新幹線は強風でストップ、東京では風で建設中の足場が崩れる事故があった。

それでも予定箇所でバスは停まり、熱心な人たちは石仏写真を撮りに車を下りてゆく。

下の写真は、一瞬、降りやんだ合間のワンカット。

雨は降らなくても、雨に濡れた野草でズボンはビショぬれ。

私は、初日は捨てることにして、以降、車を降りることはなかった。

午後3時、予定を途中で断念、ホテルに向かう。

ホテルに着いたら、皮肉にも、雨はあがった。

 

翌4月18日は、快晴。

予定より出発を早めて、昨日、はしょった場所をまず回ることに。

◇真言宗・楞厳(りょうごん)山鬼岩寺(藤枝市藤枝)

奈良時代の神亀3年(726)、行基、開基の古刹。

古寺だけあって、伝説がある石造物がいくつかある。 

車は、広い境内に停車、降りた所が不動堂の前だった。

まず皆がカメラを向けたのは、自然石。

梵字「カーンマーン」が彫られている。

不動堂の本尊不動明王の梵字です。

不動堂の左にも、「阿字」塔がある。

梵字の「ア」は、大日如来を表わすと説明板がある。

その隣に、馬頭観音。

馬頭観音には、敷居が高そうな場所だが、なにか訳があるのだろうか。

覆屋に見なれない石が三つ。

左の石は「鬼かき石」というらしい。

もちろん、伝説がある。

開基してから百年程過ぎた弘仁年間(810~823)、弘法大師空海が東国行脚の折、この地に寄った。その頃悪い鬼が出て人々を苦しめていた。鬼退治をお願いされた大師は7日間秘咒を加持した。すると一天にわかにかき曇り、雷鳴とともに鬼が姿をあらわした。大師はこの鬼を裏山の岩穴に封じこめた。翌日から村に鬼は出なくなり、これを機に寺の名を「鬼岩寺」と称し、村の名前も鬼岩寺と称するようになった。「鬼かき石」は、鬼がその爪を研いだ石といわれている。

 地蔵堂がある。

中にまっ黒なお地蔵さん。

本尊は、将軍地蔵尊だが、まっ黒なので黒地蔵尊とも呼ぶ。真言宗には、新仏習合の教えがあり、ご本尊は神では、太郎坊大権現様(福徳の神様)にあたります。」(説明板より)

地蔵堂の左にありきたりの文字庚申塔が2基。

こんなどうでもいいのを撮っていて、肝心の三面地蔵尊を撮り忘れたようだ。

山門左手に小さな祠がある。

格子戸越しに覗いてみる。

なんと犬が、しかも黒い犬がこっちを向いている。

傍らの解説版を読んで、伝説を知った。

昔、鬼岩寺にクロという、とても強い犬がいました。それを聞いた田中城のお殿様は、自分の自慢のシロとかみ合いをさせてみると、クロのそれはそれは強いこと、あっという間に勝負がつきました。愛犬のシロが負けた悔しさに、お殿様はクロを捕まえて打ち首にするように、家来たちに命じました。何十人もの槍や刀を持った侍に追い詰められたクロは、逃げ場を失ってとうとう近くにあった井戸に身を投げてしまいました。その時井戸の中から黒い煙がもうもうと立ち上がり、それが何百何千という黒犬となって、いっせいに吠えたてました。さすがのお殿様もびっくり。やっと自分の身勝手さに気付き、深くクロに詫び、ク ロの霊を慰めるために、黒犬神社を造ってまつりました」。

参拝しての御利益については、

神犬クロの「死して尚負けず」の御利益を!
大小の勝負、縁結び、安産、子育て、盗難除け、日切りの願懸け

とある。

勝負事の御利益は分からないでもないが、なぜ、縁結び、子育てなのか、説明がなく、不可解。

≪続きは次回≫