HAVE A NICE DAY!

徒然なるままに特に音楽の話を中心にあーだこーだと書き連ねます。

『14』

2005年07月05日 | 音楽・映画・本
これは桜井亜美の小説のタイトルです。以前書いたように彼女の小説が原作の映画は見たことがあるけど、作品は一度も読んだ事がありませんでした。でも、最近、ある方にこの作品を薦めていただいて、読んでみました。その方はこれを読んで感動するとか泣けるとかそういうことから推薦してくれたわけではありません。感動するどころか痛いし、泣けるどころか怒りさえ覚える作品だと言った方が近いですから。これを読んで何かを感じること・・・それを自分自身の中でどう解釈するのか、これが訴えること・・・読みながらずっと自問自答してました。これはあの実際にあった神戸の少年事件を題材にして、その少年が主人公のフィクションです。本の裏にあるあらすじを見たら、推薦がなければおそらく読まなかったと思います。でも、私とどこか同じ感覚をもっている人が推薦してくださったわけだから、あえて買って読んでみました。すると驚くべきことにどんどん話の中に吸い込まれていくのです。桜井亜美はその少年があの事件に至るまでの課程を彼女なりの解釈で実にそれまでのいろんな実在の事件もからめて展開させていくわけですが、それが作家としてのすごさを私に強く刻みつけました。彼女は少年を否定も肯定もしていません。でも、そういう少年を作り出したのはやはり大人たちだと私自身は思いました。虐めをする子を作り出すのも結局は大人・・・そしてそれによって追い詰められて行く子。我が子を虐待する親・・・それが心の傷となって生涯消えない子。ニュースで流し続ける酷い事件・・・

ねえ、子どもたちは絵本を読んでいる?お母さんやお父さんからいろんな話をしてもらっている?抱きしめられている?お父さんとお母さんだけは絶対に自分の見方だと信じている?あるいは子どもたちからあなたは信頼されている大人?愛することを身をもって教えられる?人の命、そしてこの世の生命をもつすべてを大切に扱うべきだとわかっている?

一方で、腹黒い大人たちにいいたい。あなたたちの言動はそのまま自分の子どもたちに受け継がれるよ。人の陰口ばかりたたくと、その子もそうする。自分勝手にばかりふるまっていると、その子もやっぱりそうなる。ちょっと自分達と違うとはじくあなたたちの行動を見て、その子たちもやっぱりそうする。そう仲間はずれを作る。

大人達が変わらなければ、少年犯罪は減っていかないだろうね。

それにしても恐ろしい事件だったのにこの小説は静かだ・・・
どこか青白く透明だ。そして時折でてくる夕焼けの場面。それが痛さに似た悲しみを爆発させる。

コメント
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