私のレコード・ライブラリーから

私のレコード/CDコレクション紹介

ヴェリズモ・オペラの傑作ーマスカーニ:「カヴァレりア・ルスティカーナ」

2009-02-28 21:51:42 | オペラ
 マスカーニ(Pietro Mascagni/1863~1945)の傑作オペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ」はレオンカヴァッロ(Ruggero Leoncavallo/1858~1919)の「道化師ーI pagliacci」と共にヴェリズモ・オペラの代表作品である。ヴェリズモ(Verisomo)とは19世紀後半のイタリア・オペラ界で巻き起こったオペラの題材をこれまでの伝説話や英雄伝等から得るのではなく現実、日常生活の中にスポットをあてたもので言い換えれば「写実主義」のオペラである。
 写真のCDはカラヤンがウィーン国立歌劇場の音楽監督を辞任後の1965年9月~10月のミラノ・スカラ座での録音で1956年のヴェルディ「トロヴァトーレ」以来の同劇場での9年ぶりのセッションであった。サントゥッツァ役に名プリマ・ドンナ、フィオレンツァ・コッソットを起用し当時の役者がそろった名演である。当時57歳の溌剌としたカラヤンの格好よさが目に浮かぶ。配役は一部異なるが1970年に映像作品としても制作されている。

寡作主義ー矢代秋雄の代表作 「ピアノ協奏曲」

2009-02-27 15:53:47 | 協奏曲
 私が矢代秋雄のピアノ協奏曲を生演奏で接したのは1971年5月10日日比谷公会堂に於ける東京交響楽団第184回定期公演であった。指揮は当時の同楽団音楽監督秋山和慶、ピアノは井上二葉である。当時まだ学生だった私はなんとモダンでしゃれたピアノ協奏曲というぐらいの印象しかなかった。その後しばらく私の頭の中から消えかけていたがある時CDショップでこの作品の初演者中村紘子による2つの録音が収録されたCD(写真)が目に留まり聴き直してみてすっかり好きになってしまった。
 作曲者矢代秋雄(1929~1976)は小学校のころから独学で管弦楽や室内楽の作品を書き始めたというからまさに天才少年と言っても過言ではないだろう。彼は1949年東京芸術大学音楽学部を首席で卒業後研究科をへて1951年にフランス政府給費留学生としてパリ国立高等音楽院で学んでいる。その影響もあってかこのピアノ協奏曲にもどことなくメシアン風の雰囲気を感じないわけでもない。
 ところでこのCDは1977年録音の若杉 弘指揮東京都交響楽団と1982年外山雄三指揮NHK交響楽団定期公演ライヴが収録されている。ピアノは前述のようにどちらも中村紘子が受け持っているが共に名演を聴かせている。後者はライヴ録音だけあって会場の熱気も伝わってくる。
 寡作主義でも知られた上47歳の若さで世を去った彼の作品数は少なくこの「ピアノ協奏曲」(1967)は交響曲(1958)、チェロ協奏曲(1960)と並ぶ彼の不滅の名曲としてこれからも演奏され語りつがれていくことであろう。

生誕100年を迎えた貴志康一の傑作、交響曲「仏陀」を聴く

2009-02-26 16:39:22 | 交響曲
 私が貴志康一(1909~1937)という作曲家にしてヴァイオリニスト、指揮者の「3つの顔」を持つ音楽家に興味を持ったのは今から数年前に彼の傑作の一つ交響曲「仏陀」のCD(写真)を手にしてからだった。今年2009年はちょうど彼の生誕100年を記念する年にあたる。早速レコード棚から取り出し久しぶりに聴いてみることにした。演奏はこの作品の日本初演も果たし貴志作品の研究、演奏、録音等に取り組んでいる指揮者小松一彦がロシアのサンクト・ペテルブルグ交響楽団に1994年客演指揮した際のライヴCDである。彼にとっては3度目の録音である。今改めて聴いてみるとこの東洋的でもありエキゾチックで叙情的な響きを実に巧く描写した演奏だと思う。録音もまたすばらしい。
 作曲者貴志康一はこの自作を弱冠25歳の1934年にベルリン・フィルを指揮して世界初演したという。また巨匠フルトヴェングラーとの親交もあったいわれている。彼はドイツから帰国後、1935年から36年にかけてNHK交響楽団の前身新交響楽団の指揮台にも数回立っている。特に目を引くのは1936年5月巨匠ウィルヘルム・ケンプとの共演であろう。しかし彼は翌1937年11月に29歳の若さで生涯を閉じている。これから期待された指揮者・作曲家だっただけに無念なことだったであろう。最後に参考までにこの作品の楽章構成を下記に記しておきたい。
 第1楽章 モルト・ソステヌートーアレグロ (印度 - 父)
 第2楽章 アンダンテ   (ガンジスのほとり - 母)
 第3楽章 ヴィヴァーチェ (釈尊誕生 - 人生の歓喜)
 第4楽章 アダージョ   (摩耶夫人の死)

未発売映像作品だったカラヤン/パリ管のベルリオーズ:幻想交響曲

2009-02-25 16:46:53 | ヘルベルト・フォン・カラヤン
 今日はカラヤン/パリ管弦楽団のこれまで未発売だった映像作品ベルリオーズ:「幻想交響曲」を取り上げてみたい。この作品はカラヤンの生存中はリリースされなかった映像作品の一つだった。昨年カラヤン生誕100年を記念してEMIから「永遠のカラヤン」と題したCD盤にプラスしてDVDでリリースされた。
 制作はカラヤンが1960年代に設立した映像制作会社「コスモテル」による1970年6月パリで撮影されたカラー、音声はモノラルである。カラヤンは同曲をフィルハーモニア管弦楽団で1回(1954)、ベルリン・フィルで(1964、74-75)2回レコーディングしているが映像ではこのパリ管弦楽団とのものが唯一の記録になった。ディレクターはロジャー・ベナムが務めている。
 映像は赤色を基調としたカラフルなものでその映像美は素晴らしいものだ。カラヤンの映像に見られる映像美学の演出が随所にみられたとえば第2楽章「舞踏会」では冒頭の2台のハープ弦越しに指揮者カラヤンの姿をボカしてかぶせるなど映像作品ならではのテクニックが興味深い。また演奏もモノラル音声ながら当時のパリ管の巧さも充分に堪能できる映像だ。唯一のパリ管との貴重な映像ドキュメントでもある。

カラヤン/パリ管レコーディング第1弾:フランク交響曲ニ短調

2009-02-24 13:04:27 | ヘルベルト・フォン・カラヤン
 ヘルベルト・フォン・カラヤンはシャルル・ミュンシュ亡き後1969年2月にパリ管弦楽団の音楽顧問に就任した。在任期間は1971年10月までの約2年半余りであった。この時期の同楽団との録音第1弾がこのフランク交響曲ニ短調であった。彼はこの作品を後にも先にもこの録音しか遺していない。録音は1969年11月パリのサル・ワグラムで行われている。写真のLPは1970年に発売された東芝音楽工業の日本初出盤である。
 この作品はセザール・フランク(César Franck/1822~1890)の唯一の交響曲で全3楽章構成で循環形式(forme cyclique)、つまり一つまたは複数のテーマが他の楽章でも用いられる形式で書かれているのが特徴である。渋みの重厚さを持った作品でカラヤンは実にそのあたりを彼の美学をもって巧みにオーケストラをドライヴしていくところが見事である。終楽章まで聴き終えるとまた第1楽章に戻って聴きたくなるようなカラヤンの名盤のひとつである。
 ただ彼の演奏記録を見るとこのレコードの録音直後1970年当時はパリ管弦楽団とエクサン・プロヴァンス音楽祭をはじめとしてプログラムに載せているがその後は見当たらないのがちょっと不思議である。他のフランス系作品ードビュッシー、ベルリオーズ、ラヴェル等は手兵ベルリン・フィルと結構演奏されているのだが・・・

シベリウス:組曲「レンミンカイネン」 - 4つの「カレワラ伝説」

2009-02-23 15:56:15 | 管弦楽曲
 フィンランドの民族的大叙事詩「カレワラ」から作曲者シベリウスは歌劇に仕立てあげる予定であったが結果的に「4つの伝説」として組曲としてまとめられたのがこの作品である。内容は次の4つの作品構成になっているが全曲通しで演奏会で取り上げられる機会は比較的少ない。その中でも第2曲目の「トゥオネラの白鳥」は有名で単独で演奏されることが多い。因みに「トゥオネラ」とは「黄泉の国」のことである。
  1.レンミンカイネンと島の乙女たち
  2.トゥオネラの白鳥
  3.トゥオネラとレンミンカイネン
  4.レンミンカイネンの帰郷
 作品は1893年から95年にかけて行われたがその後シベリウス自身の手が加えられ最終稿が完成されたのは1939年になってからであった。先にも述べたように全曲通しで演奏されるよりもそれぞれ独立していわば交響詩的にコンサートでは演奏されている。
 私の好きな演奏はオッコ・カムが1975年にヘルシンキ放送交響楽団と録音した全曲盤(写真)である。お国ものだけあってシベリウスの旋律の美しさや繊細な陰影をかもし出した見事な演奏だと思う。カップリングされている組曲「カレリア」も小組曲ながら聴き応え充分である。
  

カラヤンのR.シュトラウス:楽劇「サロメ」

2009-02-22 11:14:34 | ヘルベルト・フォン・カラヤン
 ヘルベルト・フオン・カラヤンが1977年のザルツブルグ音楽祭で取り上げたオペラはヴェルディの「ドン・カルロ」とこのR.シュトラウスの「サロメ」(全一幕)であった。チケットは瞬く間に完売するほどの盛況であった。このレコードの録音は音楽祭が開催される直前の5月から行われている。キャストもほぼ同じメンバーでタイトロールのサロメ役にヒルデガルト・ベーレンスをカラヤンが起用したことに注目された。彼女は期待にこたえ音楽祭でも大成功を成し遂げた。
 この作品は「新訳聖書」から題材を得た話でR.シュトラウスは英国のオスカー・ワイルドの戯曲にスポットをあてラッハマンによる独訳を台本とした。というのはワイルドの原作はフランス語で書かれているためである。なぜ英国人のワイルドがフランス語で記述したのかは定かではない。
 この「耽美的」傾向の強い作品はやはりカラヤン美学がものをいう。ウィーン・フィルの弦、金管楽器の美しい響きがたまらない。第4場のクライマックスで演じられる「サロメの舞」-「七つのヴェールの踊り」は聴き所である。カラヤンの美の世界が全面に発揮され見事に仕上がっている。

スクリャービンの交響曲第2番ハ短調

2009-02-21 20:22:37 | 交響曲
 今日は久しぶりにアレクサンドル・スクリャービン(1872~1915)の交響曲第2番ハ短調作品29をエフゲニー・スヴェトラーノフ指揮ソビエト国立交響楽団のメロディア盤LP(写真)で聴いた。私は昔からこの作品に愛着を感じていた。第1楽章アンダンテの冒頭から神秘的傾向がみられロマン的でもあり何故か不思議な香りがする。彼は全部で5つの交響曲を作曲している。特に第4番「法悦の詩」はよく知られた作品だが交響曲というより単一楽章の「詩曲」である。この第2交響曲は副題として「悪魔的な詩」と呼ばれることがあるがあまり深い意味はなさそうだ。
 作品は1901年に完成されており翌年から作曲にとりかかるより神秘主義傾向がより強く表れた第3番ハ長調「神聖な詩」作品43への足がかりとなった作品と言えるかも知れない。スヴェトラーノフの演奏では第4楽章から第5楽章マエストーソへ突入しクライマクッスを築き上げていくところが聴き所である。

KARAJAN LAST CONCERT IN LONDON 1988

2009-02-20 18:27:00 | ヘルベルト・フォン・カラヤン
 このCDに収められているシェーンベルク「清められた夜」作品4とブラームス交響曲第1番ハ短調作品68はヘルベルト・フォン・カラヤンにとって生涯最後の演奏記録(1988.10/5)になった。後の演奏会でもこの2つの作品はプログラムに載ることはなかった。ブラームスの第1番はカラヤンお気に入りの交響曲でもあり何回コンサートで取り上げられただろうか?東京での最後の演奏会(1988.5/5、サントリー・ホール)でも最後を飾った曲がやはりこの第1番だった。凄みを感じる名演で昨年彼の生誕100周年を記念してCD化されている。一方プログラム前半に演奏されたシェーンベルク「清められた夜」はカラヤンが1974年ごろ新ウィーン楽派の作品集をDGからリリース前後からプログラムに取り上げる機会が増えた作品である。東京でも1973年NHKホール落成記念で来日折にも演奏している。(1973.11/1)この時の後半のプログラムはベートーヴェン交響曲第3番「エロイカ」だった。
 このロンドンの演奏会はロンドン地下鉄(Tube)のエンバンクメント駅からほど近いロイヤル・フェスティバルホールで開催された。私もケンペやショルティの演奏会で何度か足を運んだなじみのあるホールである。CDの解説によれば当日午後8時から始まるコンサートがフランスでのストライキの影響でベルリン・フィルの楽器の到着が遅れコンサートも午後9時から始まったと言われる。
 演奏は今さら言うまでもなく東京の演奏会以上の凄みを感じさせる名演になっている。BBC放送の録音も素晴らしい。カラヤン不滅のライヴ演奏としてまさにTESTAMENTとして語り継がれていくことだろう。


サヴァリッシュのボロディン:交響詩「中央アジアの草原にて」

2009-02-20 13:22:00 | 管弦楽曲
 今日紹介するLPは今から約20年前に日本の東芝EMIからCDで発売されたものである。収録内容は当時バイエルン州立歌劇場の音楽監督、現在NHK交響楽団の桂冠名誉指揮者を務めるウォルフガング・サヴァリッシュが彼のレパートリーにしてちょっと珍しい管弦楽小品を集めたオムニバス盤の第1集である。参考までに収録内容は1)グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲、2)ボロデイン:交響詩「中央アジアの草原にて」、3)ムソルグスキー:交響詩「禿山の一夜」4)カバレフスキー:組曲「道化師」、5)プロコフィエフ:組曲「3つのオレンジへの恋」から「行進曲とスケルツオ」、6)リムスキー=コルサコフ:「スペイン奇想曲」で全てロシアものである。もちろん管弦楽は手兵バイエルン国立歌劇場管弦楽団でいずれの曲もサヴァリッシュ初録音だが私は第2曲目のボロディンの交響詩「中央アジアの草原にて」の演奏が特に気に入っている。演奏時間にして約8分足らずの小品だがこの演奏を聴くと荒涼とした中央アジアの砂漠の情景が浮かんでくる。またイングルッシュ・ホルンで奏される東洋的旋律が美しい。作曲者ボロディンが1880年、アレクサンドルⅡ世即位25周年祝賀記念行事として行われた「活人画(Tableau vivant)」の伴奏音楽でリストに献呈されている。タイトルはロシア語表記のほか仏語表記もある。(Dans les steppes de l'Asie centrale)
 尚、写真のLPレコードはオーディオ・チェックレコードとして頒布されたもの(非売品)で贅沢に45回転、2枚組みでカッティングされた重量級レコードでもある。1996年11月サヴァリッシュ来日の折サインを入れてもらった。