昨年「独PentaTone Classics」レーベルからリリースされたカルロス・カルマー指揮オレゴン交響楽団(ポートランド)の2ndアルバムとなる「THIS ENGLAND」と題するCDである。(写真/PentaTone-PTC5186 471)カルロス・カルマーはまだ日本では馴染みのない指揮者だがウルグアイ出身でこのオレゴン響の音楽監督に就任して10年目を迎え2014/15年シーズンまで契約も延長されたようである。そのことからもこのCDで彼の実力のほどが窺い知ることができた。私も昨年初めてこのオーケストラの演奏をカルマーの指揮ではなかったがブラームスの「ドイツ・レクイエム」で生演奏に接することができた。
アルバムのタイトルの通り今回はイギリスの作曲家の作品が3曲収録されている。エルガー「コケイン(ロンドンの下町)序曲」、ヴォーン=ウィリアムズ交響曲第5番ニ長調、ブリテン歌劇「ピーター・グライムズ」から4つの間奏曲・パッサカリアである。いずれもこの楽団の本拠地「アーリン・シュニツァー・コンサート・ホール」におけるライヴ録音だが会場の聴衆のノイズや拍手もカットされているのでおそらくゲネ・プロ等の演奏も含め編集されたものと思われる。 とかくヴォーン=ウィリアムズの交響曲は演奏スタイルによっては単調に流れ退屈さを感じることがあるがこの演奏ではそれを感じさせなかった。この辺りもカルマーの巧さだろうか。ブリテンの「ピーター・グライムズ」は通常4つの間奏曲のみが演奏されることが多いがここでは「パッサカリア」を「嵐」の前に加えるなど工夫が見られる。透明感あるサウンドが印象的で録音も大変素晴らしい。
(オレゴン交響楽団の本拠地/アーリン・シュニツァー・コンサート・ホール、ポートランド<筆者撮影>)