私のレコード・ライブラリーから

私のレコード/CDコレクション紹介

ブラティスラヴァ歌劇場でのヴェルディ:歌劇「ナブッコ」(1987)

2009-03-31 11:02:59 | オペラ
 今から22年前(1987年)、年末年始の休暇をとり私は東欧(特にハンガリー、チェコ・スロヴァキア)中心に音楽鑑賞の旅に出かけた。今日はその中でブラティスラヴァ歌劇場で鑑賞したヴェルディの第3作目のオペラに当たる「ナブッコ」(1842)<原題はナブコドノゾール(Nabucodonosor)>についての想いでを書いてみたい。
 当時の東側諸国はまだベルリンの東西の壁が崩壊前でまだ緊張感が漂っていた。当時チェコ・スロヴァキア第ニの都市であった(現在はスロヴァキアの首都)ブラチスラヴァも例外ではなかった。駅を降りた途端、真冬のこととは言え寒々とした何か寂しげな雰囲気は心細く感じられた。幸い歌劇場は宿泊ホテルの斜め前に位置していたので何かと便利だった。暮れの12月29日のことである。
 このオペラの題名「ナブッコ」とはわが国では普通「ネブカドネザル」として知られている「バビロニア王国」の王様の名前である。この作品がヴェルディの出世作にもなったオペラである。物語はバビロニア王ネブカドネザルのユダヤ侵略(俗にいわれるバビロン捕囚)をめぐり2人の娘の間の愛憎劇で全4幕7場からなる。
一番の聴き所は第3幕2場で合唱で歌われる「行け、我が思いよ、金色の翼に乗って」であろう。この場面は今でも私の心の中に焼きついている。この歌は現在でもイタリアの「第ニの国歌」とも呼ばれイタリア国民に親しまれている曲と言われている。
 今でこそ東京でも新国立劇場でかなりオペラが楽しめる時代になったが文化の違いがあるにせよ地方都市でもほとんど毎日オペラが鑑賞できるヨーロッパが羨ましく感じた時代でもあった。写真は当時のプログラムで値段は3コルナ、当時の相場で日本円にして約50円位だったと思う。



ヤン・クレンツ指揮フランクフルト放送交響楽団(現、hr交響楽団)演奏会(1976)

2009-03-30 11:01:01 | 想い出の演奏会
 私がこのオーケストラの生演奏に接したのは今から30年以上も昔のことである。それは1976年3月にこのマイン河沿いの街フランクフルトに2回目の訪問をした時であった。当初は当時この楽団の常任指揮者を務めていたアメリカ出身ディーン・ディクソン(Dean Dixon/1915~1976)が振る予定の演奏会だったが病気のため急遽ポーランドの名指揮者ヤン・クレンツ(Jan Krenz/1926~ )に代わった演奏会だった。写真はその時の懐かしいチケットとプログラムで今でも大切に保存している。
 当日のプログラムはサミュエル・バーバーの「弦楽のためのアダージョ」、アメリカの作曲家でこの街フランクフルトのホーホ音楽院で勉強したことのあるエドワルド・マクダウエルのピアノ協奏曲第2番ニ短調作品23(1889)ピアノはアメリカ出身、ジェームス・トッコ、そしてフィナーレを飾ったのがブラームス交響曲第1番ハ短調作品68だった。会場はこの楽団が所属するヘッセン放送協会大ホールでフラットな木を基調とした柔らかい音響をかもしだすホールである。ヤン・クレンツの熱の入った棒は最後のブラームスで一気に燃えた。彼の来日歴は古く1963年に確かポーランド放送交響楽団を率いて来日しその後80年代から90年代にかけて読売日響にも客演し私の何度か聴いたこともあった。現代音楽にも精通したなかなか渋い指揮者でもある。
 一方、フランクフルト放送交響楽団は先に述べた通りヘッセン放送協会所属の放送オーケストラで歴代の指揮者にはハンス・ロスバウト、カール・シューリヒト等の名も見られ現在ではドイツを代表する放送オーケストラの一つだが私が初めて聴いたこの当時はまだ日本ではメジャーではなかったと思う。その後エリアフ・インバルを初めとして何回も来日しているので今さら書くこともないのだが名称が2006年から「hr交響楽団」と改称されたことだけ付け加えておきたい。「hr」とはヘッセン放送局(Hessischer Rundfunk)の頭文字HRを意味するらしい。


ベートーヴェン生誕200年記念(1970)ウィルヘルム・ケンプ来日公演

2009-03-29 01:49:06 | 想い出の演奏会
 20世紀を代表するピアノの巨匠ウィルヘルム・ケンプ(1895~1991)は戦前から来日を重ねわが国との結びつきが強かったピアニストであった。そんな彼が1970年「ベートーヴェン生誕200年記念」の来日公演は特に私の印象に強く残っている。彼はこの時ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全32曲とピアノ協奏曲全5曲を中心に名演を聴かせてくれた。私は4月7日・9日に開催された協奏曲のコンサートに会場の東京文化会館に足を運んだ。指揮は森 正、管弦楽はNHK交響楽団であった。カンデツァもケンプ自身のオリジナルを弾いていた。私はこの時初めてケンプの生の演奏に接し感激したことを覚えている。この演奏会から20数年を経て幸いNHKーFMでこの時の模様が再放送されたのでオープン・リールでエア・チェックし貴重なライヴ記録として大切に保存している。(写真は当時の演奏会プログラムとエア・チェック・テープ)
 尚、彼はレコード録音でも1953年(モノラル)と1961年(ステレオ)の2種類の協奏曲全集を完成させている。オーケストラはベルリン・フィル、指揮は前者がパウル・ファン・ケンペン、後者がフェルディナント・ライトナーでどちらも誉れの高い名盤で私も両盤をその時の気分により愛聴している。
 

コンヴィチュニー/ゲヴァントハウスの名演、ブラームス交響曲第1番

2009-03-28 12:04:45 | 交響曲
 今日紹介するフランツ・コンヴィチュニー指揮、ライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のブラームス交響曲第1番ハ短調作品68の写真のCD盤(当時、東独Schallplatten録音)は以前日本でも一昨日にもふれたキング・レコードの「世界の名曲1000シリーズ」から発売され私もそのLPを愛聴していた。しかしながらこのレコードも片面にこの大曲を全曲詰め込んでカッティングされていたためステレオ録音なのにダイナミック・レンジが狭く私が満足できる音ではなかった。因みに裏面にはブラームス/ヴァイオリン協奏曲ニ長調が詰め込まれていた。(独奏ヴァイオリンは懐かしいボロニスラフ・ギンベル)その後年月が経過し何年か前にライプチヒの街を訪れた際に偶然レコード店で見つけたものである。CDにリマスターされかなり音質は向上され本来のオリジナル・ステレオ録音の醍醐味を満喫できた。
 やはりこのCDのドイツ語タイトルの通り「GROSSE DIRIGENTEN DER VERGANGENHEIT ー過去の偉大な指揮者」を充分に頷ける演奏だ。演奏スタイルは私が好んで聴くカラヤンとは対照的だがそこには当時のゲヴァントハウス管弦楽団の枯淡なカラーがにじみ出た今ではちょっと聴けない味がある。

PANTON レーベル、ヤナーチェク:歌劇「死者の家から」の管弦楽組曲

2009-03-27 17:08:27 | 管弦楽曲
 これもちょっと昔の話になるが私が20数年前、東欧諸国にレコード収集を兼ねて旅をした時チェコスロヴァキア(当時はまだスロヴァキアがチェコから分離独立していなかった)のブラチスラヴァのレコード店で購入した1枚のLPについてふれてみたい。(写真)このLPは当時の日本では手に入りにくかったチェコのPANTONレーベルでヤナーチェク(1854-1928)の最後の歌劇「死者の家から」(1927-28)の管弦楽組曲とマルティヌー交響曲第5番がカップリングされたものである。特に前者の管弦楽組曲はヤナーチェク自身が組曲として発表したものではなくこのレコードを指揮しているオタカール・トゥルフリックとブルノ・フィルと来日したこともあるフランチシェク・イーレクの2人によってセレクトされた管弦楽曲版である。「前奏曲」、第2幕から「ドン・ファンの物語による囚人たちの芝居」、「フィナーレ」の3曲が演奏されている珍しいものである。
 この歌劇の出典はロシアの作家ドストエフスキーの「死に家の記録」である。彼自身のシベリア獄中体験記ともいえるこの作品を通じ作曲者ヤナーチェクは貧困からやむなくして罪を犯した囚人たちの苦痛や葛藤をオペラに仕立て上げた。登場人物が全て男性である点でも珍しい作品と言える。管弦楽はチェコ・モラヴィア地方のオストラヴァに本拠を置くヤナーチェク・フィルハーモニー管弦楽団(1954年創設)による演奏である。
 タイトルからして何か陰鬱な気配がする作品に思われがちだが聴いてみるとヤナーチェクの美しい管弦楽の響きを改めて感じさせる音楽だ。

世界最長収録のLPレコード ? - 「英雄」&「悲愴}

2009-03-26 04:21:43 | 交響曲
 今日は私のコレクションLPレコードの中でおそらく世界最長収録時間の部類に入るのではないかと思われるLPを紹介したいと思う。それは今から40年近く前にキング・レコードから「世界の名曲1000シリーズ」と銘打って発売された写真のレコードである。なんと1枚のLPにベートーヴェン交響曲第3番「英雄」とチャイコフスキー交響曲第6番「悲愴」が収録されている。しかも価格は1000円でオリジナル・ステレオ録音、まさに超お徳用盤である。ちょうどこの時代、私はもちろん学生でレギュラー盤のLP(当時1枚2000円前後)がそうそう買える時代ではなかったので大変重宝したのを覚えている。しかもこのLP片面の収録時間が約45分前後で因みに「英雄」が46分46秒、「悲愴」が43分で合計89分46秒にのぼる。おそらく世界最長収録時間のLPの部類に属するのではないか??(と思いきや実はその後に発売されたEMIのカラヤン/フィルハーモニア管弦楽団によるゴールデン・カップリング・シリーズ、同じ「英雄」と「悲愴」の組み合わせのLP(EAC30283)がトタールで93分を超えていた。)
 演奏は「英雄」がサー・エードリアン・ボールト指揮、ロンドン・プロムナードフィルハーモニック管弦楽団(実体はロンドン・フィルハーモニック?)、「悲愴」がウラディミール・ゴルシュマン指揮、ウィーン国立歌劇場管弦楽団である。ウィーン国立歌劇場管弦楽団の実体はウィーン・フィルである。演奏も決して悪くなくむしろ名演と言ってもいいかも知れない。レコードをひっくり返えす手間もなくこの二大名曲が聴ける利点もあった。たださすがに片面に長時間詰め込んでいるためダイナミック・レンジが狭くなっていることは否めない。でも当時のステレオ装置ではあまり気にならなかった。
 「悲愴」を振っているゴルシュマン(1893~1972)は戦前からSPレコードで日本でも紹介されていた人でこのLPの原盤米国Vanguard STEREOLABシリーズにも名録音を遺した指揮者でもあった。

名盤 -イ・ムジチ合奏団のヴィヴァルディ「四季」

2009-03-25 06:57:16 | 協奏曲
 ヴィヴァルディの「四季」と言えばイ・ムジチ合奏団による1959年ステレオ録音(2回目)がかつてベスト・セラーだった。確か私がまだ高校時代の頃はカラヤン/ベルリン・フィルのベートーヴェン「運命」/シューベルト「未完成」ゴールデン・カップリング・レコード(SLGM-1270)を抜いていつもクラシック部門売りあげ1位の座を占めていたと思う。私もこの時代には盤が磨り減る位聴いていたと思う。確かにこのレコードはいつ聴いても心地よい気持ちになる名盤である。しかし繰り返し針を落とす度に当時の針圧は現在と比較して重いため盤にキズがつきついには針飛びを起こす始末。そして月日が去りイ・ムジチもリーダーがフェリックス・アーヨからロベルト・ミケルッチ、そしてピーナ・カルミレッリ・・・と受け継がれていく。でも私はアーヨのこの2回目の録音に愛着を感じた。
 何とかオリジナル・ジャケットに近いLPがないかと探し回ったが時代はCDに変わり状態のいいものは見つからなかった。そんなある日、今から20年以上も前のことだが韓国旅行中ふとソウルの小さなレコード店のウインドーで当時のオリジナル・ジャケット・デザインにほぼ近いLP盤に偶然出くわした。お隣の韓国ではまだLPも幅をきかせていたのである。私は喜びいさんで購入した。写真のLPがそれである。(韓国フィリップス、SEL-100 077)中のレコード盤のレーベルはfontanaになっていた。やはりこの演奏は「四季」のお手本みたいな癖のない名演奏だと思う。不滅の名盤としてこの録音はレコードの歴史に刻み込まれるであろう。

ミーラ・ゲオルギエヴァのベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲

2009-03-24 21:44:06 | 協奏曲
 ドイツのK&K Verlagsanstalt というレーベルからブルガリア出身の女流ヴァイオリニスト、ミーラ・ゲオルギエヴァが弾くベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品61を紹介したい。この演奏は1999年4月6日、ブルガリア・ソフィア国民文化会館におけるライヴ録音でオーケストラはブルガリア新ソフィア交響楽団、指揮はロッセン・ミラノフがあたっている。楽団も指揮者も私はこのCD(写真)で初めて耳にした。ジャケットの解説によればオーケストラは1991年の創設ということでその名の通りまだ歴史の浅い楽団で指揮をしているミラノフは1997年からこの楽団の音楽監督を務めているようである。
 ゲオルギエヴァの演奏は現在世界からも注目をあびている彼女だけに聴き応えは充分なものがあった。彼女の鋭いリズム感や音楽的感性がにじみでた見事なものに仕上がっている。それに加え録音状態もよくライヴ録音ならではの会場の臨場感や緊張感、迫力も伝わってくる。彼女は何度か来日し昨年も6月に新日本フィルに客演し同曲を披露している。
 レコード・コレクターの楽しみの一つにこのように日本ではまだあまり知られていないレーベルから感動を与えてくれる名演にめぐり合えることも興味がつきない。 

スイス・ロマンド管弦楽団1968年初来日公演

2009-03-23 22:21:46 | 想い出の演奏会
 スイス・ロマンド管弦楽団がこの楽団の創設者でもある巨匠エルネスト・アンセルメと当時の新常任指揮者であったパウル・クレツクキと初来日を果たしたのは1968年6月のことである。私は6月23日・24日の両公演を聴いた。前者がクレツキ、後者がアンセルメの指揮で会場は東京文化会館であった。
 パウル・クレツキ(1900~1973)はポーランド出身で後にスイス国籍を取得した指揮者で1960年代後半に録音したチェコ・フィルとのベートーヴェン交響曲全集は彼の代表的な名盤である。この23日の公演の最初の曲もベートーヴェンの第5番ハ短調で始まった。そして後半がワーグナーの「ジークフリート牧歌」、ムソルグスキー(ラヴェル編)組曲「展覧会の絵」と続いた。「展覧会の絵」はアンセルメも得意としていたがクレツキの指揮もまた格別だった。スイス・ロマンドの金管群も冴え渡った。翌24日の巨匠アンセルメ(1883~1969)はベルリオーズ「幻想交響曲」、後半がストラヴィンスキー舞踊組曲「火の鳥」、ラヴェル「ラ・ヴァルス」を披露した。どれも彼の十八番で当時85歳の高齢を感じさせない指揮ぶりであったのを覚えている。彼は翌年(1969年)ジュネーヴで85歳で生涯を閉じたためこの来日公演は私にとって貴重な体験となった。
 写真は当時の演奏会プログラムで楽団の日本語表記が当時スイス・ロマンド交響楽団となっていたことが興味深い。(写真は当時の公演プログラム)

スーク&カッチェンのブラームス:ヴァイオリン・ソナタを聴く

2009-03-22 00:20:24 | 室内楽曲
 今日は私のレコード・CD棚からチェコの名ヴァイオリニスト、ヨゼフ・スーク(1929~ )とアメリカ出身の名ピアニスト、ジュリアス・カッチェン(1926~1969)のコンビによるブラームスのヴァイオリン・ソナタ全3曲が収録されたCDを聴いた。
 さすがスークの気品あるヴァイオリンの音色がカッチェンのピアノ・テクニックとうまく調和した名演と言っていいだろう。今改めてじっくりと味わってみると第3番ニ短調作品108の演奏は中々もので終楽章は特にインパクトがあった。伴奏をしているカッチェンは病気(肺がん)のためこの録音の2年後にこの世を去ったためこのCDは彼にとっても最晩年の録音ということになる。
 カッチェンは活動の拠点を生まれ故郷のアメリカからヨーロッパに移したことでも知られているがスークとのコンビもそんな背景から生まれたものだろう。そのような観点からもこのコンビによる録音は今となっては大変貴重なものとなった。