私のレコード・ライブラリーから

私のレコード/CDコレクション紹介

歴史的名盤ー初演メンバーによるショスタコーヴィチ「ピアノ五重奏曲」

2012-02-23 15:50:21 | 歴史的名盤

 今日は歴史的名盤から1枚、ショスタコーヴィチの「ピアノ五重奏曲作品57」ほかを収めたLPを紹介したい。この写真のレコードは1950年代に「SHINSEKAI」レーベルで発売された国内盤だが原盤はもちろんロシア「MELODIYA」である。レコード第1面に収録されたショスタコーヴィチ「ピアノ五重奏曲」は1940年に書かれた作品で翌41年に第1回「スターリン賞」にも輝いた傑作である。初演は完成した同じ年にこの録音と同じメンバー、「ベートーヴェン弦楽四重奏団」と作曲者ドミトリ・ショスタコーヴィチのピアノにより行われている。因みに「ベートーヴェン四重奏団」は1923年に結成された当時ソヴィエトを代表する最高のカルテットでメンバーは第一ヴァイオリン=ドミトリ・ツィガノフ、第二ヴァイオリン=ワシリー・シリンスキー、ヴィオラ=ヴァジム・ボリソフスキー、チェロ=セルゲイ・シリンスキーであった。この新古典的で自由な即興性を持つ作品の特徴を作曲者のピアノとともに見事に表現している。録音は1950年頃のモノラルだが音質は良好。
 レコード第2面にはラヴェルの室内楽作品の傑作「ピアノ三重奏曲イ短調」がこれまた当時ソヴィエトの最高のトリオと云われたレフ・オボーリン(ピアノ)、ダヴィッド・オイストラッフ(ヴァイオリン)、スヴィヤトスラフ・クヌシェヴィツキー(チェロ)の演奏が収録されている。こちらも1950年代のモノラル録音で3人の名人芸が堪能できる。こちらもレコード演奏史上に永遠に残る名演であろう。
 (写真=新世界レコード/LS-3)



ストコフスキーが遺した名録音からーストラヴィンスキー:「兵士の物語」

2009-11-08 09:40:36 | 歴史的名盤
 先のブログ(2008年12/12)にことがストラヴィンスキーの舞台作品「兵士の物語」については歴史的名盤として詩人ジャン・コクトーが語りを担当したイゴール・マルケヴィッチ/アンサンブル・ド・ソリスト他による録音を紹介したことがあったが今日はもう一つレオポルド・ストコフスキー(Leopold Stokowski/1882~1977)が1967年、当時創設されたばかりのヴァンガードのレコーディング・スタジオで録音された写真のLP(Vanguardレーベル、GT9160/発売元キング・レコード)も追加して紹介したいと思う。この録音は巨匠ストコフスキーが85歳を迎えた年に行われた。このレコードの解説にも記述があるが今でこそ「ドルビー・システム」という名称で世界に広く知れ渡った「ノイズ・リダクション・システム」を一早く使用したのがストコフスキーその人であった。言わば「ドルビー・システム」を採用した第1号の録音である。当時アメリカでは「ドルビーS/Nストレッチャー(Signal-to-noise-stretcher)」と呼ばれた新機材でレコード録音の歪を最小限に押さえS/N比を改善させるものでその後家庭用のカセット・テープ・レコーダーにも広く採用されたシステムでもある。
 このレコードの語りをつとめているのがマドレーヌ・ミヨー(作曲家のミヨー夫人)、他に兵士にジャン・ピエール・オーモン、悪魔、マーシャルサンゲールが担当している。何でも米国の初出盤は「フランス語版」と「英語版」の2枚セットでリリースされたそうだが日本では「フランス語版」のみの発売だったと思う。因みに写真のレコードは「ストコフスキー追悼盤」として廉価盤で再発売(1977年)された1枚であった。
 

シルヴェストリ/ウィーン・フィルとの名盤

2009-06-19 01:27:07 | 歴史的名盤
 ルーマニアの名指揮者コンスタンティン・シルヴェストリ(Constantin Silvestri/1913~1969)については以前のブログで彼がパリ音楽院管弦楽団と録音したベルリオーズ「幻想交響曲」でふれたことがある。彼は大胆な個性的解釈をする指揮者として当時注目を浴びた。確か1964年に来日しNHK交響楽団の定期公演で得意とする同作品を振ったことがある。今日はその彼がウィーン・フィルと1962年にレコーディングしたショスタコーヴィチ交響曲第5番を取り上げてみたい。彼は当初祖国のブカレスト・フィルの首席指揮者を始めとして東欧諸国で活躍していたが1957年には祖国を離れ西側への進出を試みた。ロンドン・フィル、パリ音楽院管弦楽団等々に客演後1961年には英国のボーンマス交響楽団の首席指揮者に就任後、彼の名声はさらに高まり国際的評価を得ることになる。そんな中で録音されたのがこのショスタコーヴィチであった。
 演奏は最初に述べた彼の「大胆な個性」はそれほど強くは感じさせないが名門ウィーン・フィルへの客演ということもありこのオーケストラが持つ独特の響きを全面に引き出している。テンポは比較的遅めにとりじっくりと構えた演奏であまり派手なことはしていない。私個人的にはちょっと物足りなさが残るが録音状態も良好なので全体的には満足している。彼がこの録音の2年前に同楽団と入れたドボルジャーク交響曲第7番ニ短調作品70とならび名盤に数えられるであろう。
 尚、余談ではあるが彼は1967年に英国に帰化している。写真のCDは新星堂と東芝EMIの企画・制作によるもので今から10年位前に世界初CD化として限定リリースされた。


白熱ライヴ! フルトヴェングラー戦後復帰ベルリン・フィル演奏会

2009-01-25 13:10:30 | 歴史的名盤
 ウィルヘルム・フルトヴェングラー(1886~1954)のナチ問題が解決し彼の「非ナチ化宣言」が公表されたのは戦後2年が経過した1947年4月のことであった。このレコード(チェトラ原盤)は戦後彼がベルリン・フィルの指揮台に立った最初の公演ライヴである。彼の復帰公演は1947年5月25日・26日・27日・29日の4日間、当時連合軍占領下のベルリン・ステーグリッツ地区にあった「ティタニア・パラスト」という映画館(記録によれば2,072席を有する)で開催された。当然チケットは瞬く間に完売されたと言われる伝説の公演である。
 プログラムはオール・ベートーヴェン。名曲中の名曲、演奏順に「エグモント」序曲作品84、交響曲第6番ヘ長調作品68、交響曲第5番ハ短調作品67であった。このLP2枚組には公演初日の後半2曲が収録され聴衆の興奮した拍手も収められている。第5番の第3楽章から第4楽章へ突入するアッタカ部分の緊張感とコーダのアッチェランドをかける演奏ぶりはライヴのフルトヴェングラーそのものだろう。録音状態は決して良好とは言いがたいが当時の白熱的ライヴを充分に伝える貴重なドキュメントである。
 尚、ドイツ・グラモフォンにもこの時の演奏記録のレコードがあるがこちらは第3日目の27日の模様を収録している。収録曲目は「エグモント」序曲と交響曲第5番の2曲で聴衆の拍手はカットされている。こちらの方はチェトラ盤よりも録音状態は良好で第5番の第4楽章コーダも若干ながらアッチェランドを抑えた演奏だ。また「エグモント」序曲も冒頭出だし部分の極端な遅さから主部でテンポ・アップしていくところが興味深い。いずれにせよこの2種類のレコードで当時の演奏会の全3曲が揃うことになる。

歴史的名盤ーマルケヴィチのストラヴィンスキー「兵士の物語」

2008-12-12 21:50:14 | 歴史的名盤
 イーゴル・ストラヴィンスキー(Igor Stravinsky/1882~1971)の異色的な作品「兵士の物語」の歴史的名盤を紹介したい。それは、鬼才イーゴル・マルケヴィチ(Igor Markevitch/1912~1983)が語り手ジャン・コクトー(Jean Cocteau/1889~1963),悪魔ピーター・ユスティノフ(Peter Ustinov)、兵士ジャン=マリ・フェルテ(Jean-Marie Fertey)、王女アンヌ・トニエッティ(Anne Tonietti),演奏、アンサンブル・ド・ソリスト(Ensemble de Solistes)で1962年に録音した名演である。この時、語り手を務めたジャン・コクトーは73歳で亡くなるちょうど1年前であった。この作品が作曲されたのは1918年でちょうど歴史的には第1次世界大戦の末期のころにあたる。「語られ、演じられ(パントマイム)、踊られる」舞台作品で物語を簡単に要約すれば一人の兵士が故郷へ帰途に悪魔に出会い一度は幸福をつかむが最後は悪魔の呪いにより連れ去れてしまうという内容である。この異色な作品を生むきっかけとなったのは1915年スイスの小説家ラミューズとの出会いであった。ストラヴィンスキーはその当時興味を持っていたアレキサンドル・アファナシェフが編纂したロシアの民話集の中から「悪魔」を題材にしたこの物語を選びラミューズにテキストを依頼したのである。ラミューズはロシア語ができなかったのでフランス語でテキストを作成した。また演奏者にトランペットの名手モーリス・アンドレが含まれていることもこのCDの魅力でもある。現在は対訳付きで廉価盤になっているので未聴の方にはぜひお勧めしたい。

ジネット・ヌヴーの歴史的名演~ブラームス ヴァイオリン協奏曲

2008-12-10 21:57:32 | 歴史的名盤
 フランスの名女流ヴァイオリニスト:ジネット・ヌヴー(Ginette Neveu/1919~1949)が遺した歴史的名ライヴ盤を紹介したいと思う。この演奏は1948年5月3日ハンブルク、ムジークハレ(Musikhalle,Hamburg,現在はLaeiszhalle-ライスハレに名称が変更)で行われたハンス・シュミト=イッセルシュテット指揮北ドイツ放送交響楽団との演奏会ブラームス:ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品77のライブ録音である。私が所有のLPは仏STIL Discothéque盤0305S48である。(写真)彼女はこの演奏会の翌年1949年10月アメリカ演奏旅行に向かう途中不運の航空機事故で30歳の若さでこの世を去った。彼女のこの演奏は繊細であると同時にダイナミックな躍動感を感じさせる。第2楽章アダージョはじっくりと演奏に深みを加え聴き手の心に迫る。第3楽章のリズムの躍動感は彼女の天性であろう。この若さですでに完成された彼女の芸術美が伺える名人芸と言っても過言はないだろう。バックのイッセルシュテット、北ドイツ放送響の演奏も文句ない。彼女はブラームスを得意としておりこの他1946年イサイ・ドブローヴェン指揮フィルハーモニア管弦楽団とのスタジオ録音やアンタル・ドラティ指揮ハーグ・レジデンティ管弦楽団との1949年ライヴ録音もあるのでもし入手可能であれば聴き比べてみるのも興味深い。