私のレコード・ライブラリーから

私のレコード/CDコレクション紹介

オイゲン・ヨッフムのオルフ:世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」

2008-12-31 11:08:25 | 声楽曲
 いよいよ2008年も残すところあと12時間あまりになってしまった。今年のフィナーレはルネサンスやバロック時代の音楽、さらに吟遊詩人たちの音楽などに興味を持ち新たな現代音楽の方向性を築いたカール・オルフ(Carl Orff/1895~1982)の世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ(Carmina Burana)」で締めくくりたい。この作品は19世紀にドイツ・バイエルン地方最古の修道院で発見された中世放浪層や吟遊詩人たちの世俗歌(詩)を集めた歌集(写本)から24の詩と作曲者自身の一つの詩から構成されたものである。オルフの代表傑作でもある。歌詞はほとんどラテン語によるものだ。大編成の管弦楽、ソリスト・合唱が加わり圧倒的迫力がいやな事を吹き飛ばしてくれる。今日はこれを聴いてこの1年の垢を落として新年を迎えたいと思う。お勧め盤はやはりドイツ巨匠のオイゲン・ヨッフム(Eugen Jochum/1902~1987)がベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団・合唱団を振ったDG盤(写真)であろう。独唱陣のグンドゥラ・ヤノヴィッツ(ソプラノ)、ディートリッヒ・フィッシャーディスカウ(バリトン)らの歌唱力が光る一枚だ。聴き終えた心地よさがまた最高だ。

1987年ウィーン・フィル/ニューイヤー・コンサート

2008-12-30 13:09:49 | 想い出の演奏会
 1987年1月1日は私にとって絶対に忘れることのできない1日であった。なぜならヘルベルト・フオン・カラヤンが初めてウィーン・フィル/ニューイヤー・コンサートの指揮台に立った日、しかも幸運にもその会場ウィーン楽友協会大ホールで生の演奏を聴くことができたからである。1986年12月の末にウィーン入りした私は本当にカラヤンがこのニューイヤーコンサートを振るのか否か不安もあった。それは彼の体調があまりすぐれないとの情報もあったからであった。プラチナ・チケットを手にした私は胸を躍らせながら会場の楽友協会大ホールに向かった。前日(大晦日)まで降っていた雪もやみ現地では「カラヤン熱」が雪を溶かしたというジョークまでもが飛びかっていた。演奏は予定どおり午前11時15分から始まった。もちろん会場は超満員で日本からの聴衆も数多く目だった。この模様は生中継で日本にも中継されたのでご覧になったかたも大勢おられると思う。もう一つ注目はこのニューイヤー・コンサートで初めてソリストが登場したことにもある。当時人気絶頂のソプラノ・キャスリーン・バトルが円舞曲「春の声」で美声を聴かせてくれた。
 カラヤンの選曲はヨハン・シュトラウス一家のワルツやポルカの中でも比較的ポピュラーな名曲中の名曲にスポットを当てたこともすばらしかった。私にとっても最高のニューイヤーの始まりとなりその興奮がいつまでも続いた。
 この演奏会のライヴ録音はすぐレコード・CD化され後には映像化ー現在ではDVDでいつでも楽しめる。ただLP/CDの方は収録時間の関係で第一部・第2部から演奏順を編集しなおし曲目も抜粋してある。(写真は当時のLPと演奏会プログラム。演奏会終了後舞台上手でバトルにサインを入れてもらったもの)
 さて来年2009年はダニエル・バレンボイムがこのコンサート初登場となる。どんなニューイヤー・コンサートになるのか今から楽しみにしている。

FMエア・チェックから生まれた名演 - (6)ヴァント/ベルリン・フィル、ブルックナー交響曲第5番

2008-12-29 23:50:10 | FMエア・チェック
 アントン・ブルックナー没後100年の1996年、ベルリン・フィルの1月定期公演はギュンター・ヴァントのブルックナー交響曲第5番変ロ長調の公演で始まった。この演奏会の録音は東京FMー「ザ・シンフォニー・フロム・ヨーロッパ」の時間にオン・エアされた。(’96/4月28日)その後この演奏会ライヴは編集されCD化もされている。ヴァントはブルックナーの研究家でもありケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団時代からブルックナー交響曲の演奏・録音を重ね時代とともにその演奏のスケール等が変化していった。北ドイツ放送交響楽団と2000年に最後の来日を果たし第9番を演奏しさらにスケールが大きく磨きがかかった枯淡な味わいを披露した。この演奏会ライヴCDを聴くたびに当時の記憶がよみがえる。
 彼が晩年にベルリン・フィルと録音した4番、5番、7番、8番、9番はどれをとっても名演だ。今改めてこの第5番をエア・チェックしたオープン・テープでじっくり聴き直すとCDよりそのスケール感や各楽器の響きのニュアンスが細部に渡って感じとれる。19cm/sアナログ・オープン・テープはダイナミック・レンジも広く音の厚みが響きのブルックナー・サウンドにはピタリと合うのではないか。特に私の好きな第2楽章アダージョ第2主題がハ長調で弦で奏される美しさは筆舌しがたい。今思えば現地で生を聴けなかったのが残念でたまらない。

ど迫力!!ドラティのチャイコフスキー:「大序曲1812年」

2008-12-29 11:31:35 | 管弦楽曲
 今年も今日を含めてあと3日、世界経済は大不況の真っ只中ー日本経済の先行きはどうなるのだろうか?まあ-あまり難しく考えすぎても仕方がないかもしれない。こんな時、アンタル・ドラティ指揮ミネアポリス(現在ミネソタ)管弦楽団のチャイコフスキー「大序曲1812年」を聴いてみよう。(写真/Mercury434 360-2)この録音は本物の1775年フランスのブロンズ・カノン砲と教会の鐘の実音が生々しく収録されており迫力満点の演奏である。これが半世紀前の録音とはとても想像つかない。同じく収録されているベートーヴェンの「ウェリントンの勝利」通称「戦争交響曲」もマスケット(小銃)と大砲の実音入りでステレオ効果が充分楽しめる。(但し、ステレオの音量には注意!)
この2曲を聴いてこの1年のいやな出来事を吹き飛ばそうではないか。新しい年2009年に期待をかけて・・・尚、ベートーヴェンのほうは1960年のロンドン交響楽団との録音でこの他このCDではアメリカの作曲家・評論家でもあったデームズ・タイラーの解説と別録りされた大砲の実音や「イタリア奇想曲」も収録されている。LP発売当時は全世界で20万枚以上を売り上げたというからクラシック・レコードとしては大変な記録でもあった。

想い出の演奏会から(4)~オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団来日公演、1972/78

2008-12-28 17:30:25 | 想い出の演奏会
 私は指揮者ユージン・オーマンディの名前をかなり前から知っていた。おそらく小学校5年生の頃だったと思う。確か音楽の授業でこの第1組曲を聴き1曲目の「朝」と第4曲目の「山の魔王の宮殿にて」が大変気に入り、オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団の10インチ(25cm)LP盤を買ってもらったのを覚えている。そんなわけでオーマンディには昔からなぜか親しみを感じていた。それから10年あまりの歳月が過ぎ1972年5月やっと彼が指揮するフィラデルフィア管弦楽団の生の演奏会めぐり合えた。最も彼らはその5年前の1967年に初来日を果たしていたがこの時(1966年ごろから)、私はカラヤンに夢中になりこの来日公演を見過ごしていたらしい。さて私が生で聴いた72年と78年のプログラムは以下の通りである。
  
 1972年5月27日 東京文化会館
  ●シベリウス:交響詩「伝説」作品9
  ●ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調作品92(当初の予定ではショスタコーヴィチの交響曲第6番が演奏される予定だった。)
  ●ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」から「前奏曲と愛の死」
  ●レスピーギ:交響詩「ローマの松」

 1978年5月24日 東京文化会館(第1回東京音楽芸術祭参加)
  ●R.シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」作品20
  ●ドビュッシー:交響詩「海」
  ●ブラームス:交響曲第1番ハ短調作品68
オーマンディは1936年から1980年に後任リッカルド・ムティにその役目を譲るまでこの楽団の常任指揮者(1938年からは音楽監督)の任にあり実に44年の長きにわたる信頼関係を保ちながらいわゆる「黄金のフィラデルフィア・サウンド」築きあげた指揮者でもあった。私が接したこれらのコンサートでも例外なくすばらしいフィラデルフィア・サウンドを楽しむことができた。特にレスピーギの「ローマの松」の「アッピア街道の松」のフィナーレのど迫力は凄かった。ブラームスの交響曲第1番のフィナーレではティンパニーの使いかたが凄く効果的であったような記憶あり現在でも強く印象に残っている。写真左が1978年のプログラム、右は72年のプログラムでこの時入れてもらったサインが私にとって貴重なものとなった。

  

想い出の演奏会から(3)~ジュリーニ/ウィーン交響楽団来日公演

2008-12-28 14:12:49 | 想い出の演奏会
 1975年は春にウィーン・フィルが来日し秋にウィーン交響楽団が来日するというオーストリアを代表する2つオーケストラに接することができた年であった。現在ではベルリン・フィルとウィーン・フィルがほぼ同時にやって来る時代なので珍しいことではないのだが当時としては我々音楽ファンにとって関心度は今以上に高かったと思う。しかもウィーン・フィルには巨匠カール・ベーム、ウィーン交響楽団には巨匠カルロ・マリア・ジュリーニが同行したのである。前者については以前のブログに紹介したので今回は後者のジュリーニ/ウィーン響について書いてみたいと思う。この演奏会は同楽団の創立75周年を記念しての来日公演になったのだが当時首席指揮者の地位にあったジュリーニは1960年12月イスラエル・フィルとの初来日以来15年ぶりの再来日となった。私にとってはジュリーニの生の指揮に初めて接する機会と言うことで当日は大変興奮したのを覚えている。私が実際に聴いた演奏会は10月3日東京文化会館の公演でプログラムは次の曲目であった。
   ●ウェーベルン:パッサカリア 作品1
   ●モーツアルト:交響曲第40番ト短調K.550
   ●ブラームス :交響曲第 1番ハ短調作品68
 
 ジュリーニという指揮者は一見派手さはないもののじっくりとオーケストラをうたわせそのスケール感は大きく聴き手にインパクトを与える。特にプログラムの最後を飾ったブラームスの第1番にはそれが強く表れた演奏だったと思う。後に音楽監督を務めたロスアンジェルス・フィルや90年代のウィーン・フィルとの再録音にはそれが一段と強く感じられる。それだけ風格も備わった演奏だからであろう。1998年には惜しまれつつ指揮活動から引退を表明し2005年に91歳で天寿を全うした。写真は演奏会終了後にプログラムに入れてもらったものでサインもダイナミックで風格があふれ出ている。



   

伝説の名盤(5)~チョン・キョンファのブルッフ/ヴァイオリン協奏曲第1番

2008-12-27 21:29:31 | 協奏曲
 私がチョン・キョンファという韓国の名女流ヴァイオリニストを初めて知ったのは1971年4月彼女がアンドレ・プレヴィン/ロンドン交響楽団と共演のため初来日した時であった。その折日比谷公会堂で演奏したチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲の演奏は今でも印象に残っている。彼女がその翌年ルドルフ・ケンペ/ロイヤル・フィルと録音したブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番とスコットランド幻想曲がカップリングされたこのLPは伝説の名盤といってもよいだろう。ブルッフの旋律美が彼女の繊細なテクニックによって輝きを放った見事な演奏に仕上がっている。指揮者ケンペはこの時代ロイヤル・フィルの首席指揮者および芸術監督の地位にありまさにあ・うんの呼吸で見事なアンサンブルを引きだしている。彼女は1989年にクラウス・テンシュテット/ロンドン・フィルとデジタルで第1番を再録音しているが(EMI盤)私はやはりこのDECCA盤が好きである。尚、写真のサインは彼女が2001年サンタチェチーリアカデミー管弦楽団と来日した折、入れてもらったものである。チョン・ミョンフン(指揮)での姉弟共演のブラームス/ヴァイオリン協奏曲は注目を浴びた。

想い出の演奏会から(2) ~バーンスタイン/ウィーン・フィル演奏会

2008-12-27 13:07:38 | 想い出の演奏会
 昨日に引き続き私の心に残る「想い出の演奏会」からレナード・バーンスタイン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートをあげてみたい。このコンサートは1977年ボン・ベートーヴェン音楽祭オーケストラ・コンサート第2日目(9月11日)に開催されたものである。ベートーヴェン生誕の地ボン・ベートーヴェン・ホールの会場は超満員であった。この年はベートーヴェンの没後150年当たりプログラムも盛りだくさんでヨーロッパ内外から著名なアーティスト、オーケストラが参加した音楽祭でもあった。私は初日とこの2日目のオーケストラ・コンサートを会場で鑑賞した。当日のプログラムはもちろんオール・ベートーヴェンで下記の内容であった。
 9月10日 ダニエル・バレンボイム指揮とピアノ/パリ管弦楽団
       ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番ハ長調作品15
                交響曲第3番変ホ長調作品55「英雄」

 9月11日 レナード・バーンスタイン指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 
        ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第14番嬰ハ短調作品131(弦楽合奏版)
                 交響曲第5番ハ短調作品67
 演奏は改めて述べるまでもなく凄いものだった。特にウィーン・フィルの演奏会でバーンスタインが取り上げた弦楽四重奏曲第14番の弦楽合奏版を生で聴くのはこの時が初めてだったのでただただウィーン・フィルの弦の響きの美しさに酔ってしまった...彼は前日にウィーン・コンツェルトハウスで同楽団とレコーデイングを済ませた直後の公演でもあった。またプログラムの後半を飾った第5番はテンポを遅めにとったじっくりと聴かせる堂々たる演奏で第4楽章の反復もいつものように実行していた。この組み合わせによる演奏会にめぐりあったことは私にとってまさに幸運だった。(写真は1977年ベートーヴェン音楽祭プログラムとバーンスタイン直筆サイン)




 

想い出の演奏会から (1) ショルティ/ロンドン・フィル演奏会

2008-12-26 18:25:36 | 想い出の演奏会
 今日は私の心に残る想い出の演奏会からゲオルグ・ショルティ指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会を紹介したい。これは1979年3月13日と15日ロンドン/ロイヤル・フェスティバルホールで行われたものである。彼はベルナルト・ハイティンクの後任としてその年の9月より1983年まで同楽団の首席指揮者・芸術監督を務めた。(シカゴ交響楽団と兼任)私が聴いたプログラムは次のものだった。
  
  3月13日  バルトーク:管弦楽のための協奏曲
          バルトーク:歌劇「青ひげ公の城」(コンサート形式)
           (ソプラノ)シルヴィア・シャシュ
           (バス)  コロス・コヴァトス

  3月15日  ウェーバー:歌劇「オイリアンテ」序曲
          バルトーク:ピアノ協奏曲第2番
           (ピアノ)ウラディミール・アシュケナージ
          チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調作品64
 演奏は両日とも素晴らしいもので当時人気が出ていたハンガリーの名ソプラノ、シャシュの美声は今でも忘れられない。またアシュケナージのバルトークの2番は指揮者ショルティとの息も合い彼のテクニックが冴えた名演であった。後にこのコンビでバルトーク協奏曲全集もレコーディングしておりCDでも鑑賞できる。
 プログラムに入れてもらった二人のサインが懐かしい。(写真)


    
    
          
   

ザルツブルグ音楽祭1987ーオーケストラ・コンサート~カラヤン/ウィーン・フィル・ライヴ盤

2008-12-25 21:15:50 | ヘルベルト・フォン・カラヤン
 1987年夏、久々にザルツブルク音楽祭に出かけた。この時のカラヤン/ウィーン・フィルのオーケストラ・コンサートが翌年ドイツ・グラモフォンからCD化された。8月15日午前11時から祝祭劇場大ホールで開催されたソプラノ/ジェシー・ノーマンを迎えてのオール・ワーグナー・プログラムである。同時にカラヤンとノーマンの初顔合わせコンサートとしても注目された。演奏曲目は歌劇「タンホイザー」序曲、「ジークフリート牧歌」、楽劇「トリスタンとイゾルデ」から「前奏曲と愛の死」の3曲で演奏時間で約1時間足らずと短いものだがその中身は大変濃いもので満足感で満たされた。ウィーン・フィル独特の何とも表現しがたいたおやかな響きと「イゾルデの愛の死」ではノーマンの美声が聴衆を酔わせた。後に調べたところカラヤンとウィーン・フィルとのワーグナーのCDによる管弦楽曲集はこれが最初で最後になった。大変貴重な録音でもある。(写真は1987年ザルツブルグ音楽祭公式プログラムとCD盤)
 今日はクリスマスなので「ジークフリート牧歌」のエピソードにつてもふれてみたい。この作品は長男ジークフリート誕生の翌年1870年に妻コジマ(リストの娘でハンス・フォン・ビューローの前妻)の誕生日(12月25日)のために作曲、もちろんコジマには内緒で筆は進められた。彼女の誕生日の当日すなわちクリスマスの朝ーワーグナー自身の指揮でチューリヒ近郊のトリプシェン(ワーグナー私邸)で行われている。楽人たちはコジマの寝室脇の階段に順に腰をおろし演奏したと伝えられる。さぞかし妻コジマは感激したことだろう。ワーグナーの心憎い演出である。尚、楽劇「ジークフリート」からのモチーフが使用されていることも付け加えておきたい。