今日紹介するCDはクラウス・テンシュテット(Klaus Tennstedt/1926~1998)の稀有な音源である。テンシュテットという指揮者を筆者が初めて耳にしたのは彼がベルリン・フィルを振ったシュマーンの交響曲第3番「ライン」のレコードが「EMI」から発売された1980年代前半の頃である。彼は旧東独のライプチッヒ近郊のメルゼブルグ(Merseburg)の出身で指揮者としてのデビューもメルゼブルクのすぐ北に位置しライプチッヒからもほど近いハレ市(Halle)の劇場オーケストラからと言われている。彼の旧東独時代に指揮した音源は少なく写真のCDの最初に収録されている彼が1962年から音楽監督を務めた「メクレンブルク・シュターツカペレ」との「ベートーヴェン/交響曲第1番」は当時の彼を知る上でも貴重な音源と言えるだろう。これは記録によれば1968年8月18日・19日両日に州都シュヴェーリン(Schwerin)の「Staastheater」におけるスタジオ録音によるもので演奏の質も高く立派なものである。その上音質もステレオで大変良好である。
後半は1972年より音楽監督を務めた旧西独バルト海に面した街キール(Kiel)を本拠地とする「キール・フィルハーモニー管弦楽団」とのベートーヴェン/「交響曲第5番」と「エグモント序曲」が収録されている。こちらは1980年3月20日「キール城」に於けるコンサート・ライヴである。演奏終了後の聴衆の拍手はカットされているのがちょと惜しいがライヴならではの迫力は充分に伝わってくる。いずれもオーケストラの知名度はマイナーながらその演奏水準の高さはさすがにドイツのオケといったところか。
(写真/独Weitblick盤ーSSS0056-2/ステレオ)