私のレコード・ライブラリーから

私のレコード/CDコレクション紹介

カラヤン・シベリウス交響曲録音歴

2009-07-31 04:01:56 | ヘルベルト・フォン・カラヤン
 以前にもヘルベルト・フォン・カラヤンのシベリウス交響曲の録音、名盤については紹介したことがあるかと思うが今日は今一度整理してみたいと思う。
 カラヤン自身シベリウスを「お気に入り」の作曲家の一人として考えていたことは間違いないと思われる。特に交響曲第5番変ホ長調作品82は頻繁にコンサートで取り上げ演奏していた。事実、80年代にEMIで交響曲全集録音の計画はあったらしいが実現しなかった。また唯一筆者の好きな第3番ハ長調作品52はフィルハーモニア時代を通じて録音がない。
 彼のシベリウス交響曲の録音歴は大きく1950年代のフィルハーモニア時代(EMI)、ベルリン・フィルとの1960年代(DG)と1980年代(EMI)の3つのパートに分けられる。それぞれの録音がその時代を感じさせ興味深い。筆者は1960年代のベルリン・フィルによる第4番から第7番までのベルリン・イエス・キリスト教会での録音(DG、写真)が一番カラヤンらしい個性がにじみ出た演奏で好きである。彼の不滅の名演盤であろう。
 そこで今回は各交響曲を録音年代順に下記のように整理してみた。

  ●交響曲第1番ホ短調作品39 ベルリン・フィル(1981年/EMI)
  ●交響曲第2番ニ長調作品43 フィルハーモニア(1960年/EMI)・ベルリン・フィル(1980年/EMI)
  ●交響曲第4番イ短調作品63 フィルハーモニア(1953年/EMI※)・ベルリン・フィル(1965年/DG・1976年/EMI)
  ●交響曲第5番変ホ長調作品82 フィルハーモニア/1951年EMI※・1960年/EMI)・ベルリン・フィル(1965年/DG・1976年EMI)
  ●交響曲第6番ニ短調作品104 フィルハーモニア/1955年EMI※)・ベルリン・フィル(1967年/DG・1980年/EMI)
  ●交響曲第7番ハ長調作品105 フィルハーモニア(1955年/EMI※)・ベルリン・フィル(1967年/DG)

 (注)※印はモノラル録音、録音場所:フィルハーモニア管:キングズウェイ・ホール/ロンドン、ベルリン・フィルDG盤:ベルリン、イエス・キリスト教会、EMI盤:ベルリン・フィルハーモニーザール)
 第5番は彼のよほどの「お気に入り」と見えフィルハーモニア時代にもモノラルとステレオの2種類の録音がある。
                           
                  
     

 

   
   
 
 

「PMFオーケストラ」東京公演2009を聴く

2009-07-30 01:01:34 | コンサート雑感
 筆者は毎年この時期になると「PMFパシフィック・ミュージック・フェスティバル」の一環として開催される「PMFオーケストラ」東京公演に足を運んでいる。このフェスティバルも1990年に今は亡きレナード・バーンスタインの提唱で始まり今年、2009年は20回記念の節目を迎えた。会場の赤坂・サントリー・ホールも満員の聴衆で埋めつくした。
 記念すべき今年の東京公演の指揮を務めたのは1990年の第1回開催から2000年までPMFの芸術監督を務めたマイケル・ティルソン・トーマスであった。筆者は2000年の公演で彼が指揮するマーラーの大曲交響曲第3番ニ短調の演奏を同会場で聴いたが今回もメインのプログラムはマーラーで交響曲第5番嬰ハ短調を取り上げていた。この作品は5楽章で構成された交響曲だが第1楽章が「葬送行進曲」で続く第2楽章と密接なつながりを持たせている関係からも楽章間の間を置かず続けて演奏することがあるがティルソン・トーマスもそのように演奏していた。また第4楽章「アダージェット」と第5楽章「ロンド」も間をおかず振り全体としての緊張感が高まった名演となった。指揮者ティルソン・トーマスも以前にも増して一段と風格が備わっていた。演奏終了後の興奮した満員の聴衆からの怒涛のような拍手がそれをものがったていた。指揮者ティルソントーマスの満足げな笑顔が印象的だった。久しぶりに私も充分に満喫できた演奏会だった。
 (写真は20回を記念する「PMFパシフィック・フェスティバル」の公式プログラム)

懐かしの「ロンドン・ステレオ・ラボラトリー」シリーズから

2009-07-29 01:20:30 | 協奏曲
 1970年代に入りステレオ装置も日進月歩、進歩して行った。オーディオ・マニアやレコード・ファンからも優秀録音盤を最高の音質で楽しみたいう要望も高まって行った。そんな要望にも応えてキング・レコードから「ロンドン・ステレオ・ラボラトリー」と言うシリーズが発売された。このシリーズは先ず1974年、ポピュラー編から始まりクラシックが登場したのは1976年のことであった。当時の英デッカの優秀録音から厳選された数種類の超ステレオ・レコードがリリースされ筆者も数枚購入した。そのシリーズの中から特に気に入った1枚グリーグのピアノ協奏曲イ短調作品16を紹介したいと思う。演奏はルーマニア出身の名ピアニスト、ラドゥ・ルプーとアンドレ・プレヴィン指揮、ロンドン交響楽団である。(写真/GXP9004、1973年録音)
 このシリーズ、最大の特徴は「ダイナミック・レンジ」が大変広いことがあげられる。ノイズも極力抑えられ通常盤と比べよりクリアーな音質で鑑賞することができる。それは第1楽章の冒頭を再生しただけで容易に理解できる。冒頭のティンパニーのトリルがピアニシモから次第にクレッシェンドしていき、独奏ピアノが加わり管弦楽がイ短調の主和音を鳴らす迫力はまさに驚異のサウンドである。通常盤では味わえないこのシリーズの真価がうかがえる。当然のことながらレンジを広くとるためこの演奏時間にして約30分の協奏曲1曲のみを両面に渡り贅沢にカティングしてあるためか主役のデリケートなピアノの音もpppからfffまでクリアに捉えられているところが素晴らしい。またこのシリーズは名前のとおり(ステレオ・ラボラトリー)自身のオーディオ・システムのチェックにも役だったことは言うまでもない。


 

懐かしのLP、オイストラッフ父子共演のJ.S.バッハ

2009-07-28 00:50:09 | 協奏曲
 写真のLPレコード(日DG/LGM1039/モノラル盤)は筆者が最初に購入したダイヴィッド・オイストラッフ(1908~1974)と息子のイゴール(1931~ )との共演によるJ.S.バッハの「2つのヴァイオリンのための協奏曲」と、父ダヴィッドが弾くブラームスのヴァイオリン協奏曲ニ長調が収録されたものである。録音はこの盤に明記されてないがおそらく1955年前後に収録されたものではないかと推定される。
 バックは当時の東独を代表するオーケストラ、ブラームスがザクセン(ドレスデン)国立管弦楽団、バッハがライプチッヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団、指揮はいずれも巨匠フランツ・コンヴィッチュニーが担当している。ダイヴィッドのブラームスは後にEMIからリリースされたステレオによるクレンペラー/フランス国立(放送局)管弦楽団による1960年録音の名盤があるがこのモノラル盤もキレのある鋭角的な演奏で筆者は気に入っている。また父子共演による録音もしばしば行われているがこのバッハの協奏曲の録音がおそらく最初のものではないかと思われる。二人の息のあった演奏が聴きものである。

 

ムラヴィンスキー/レニングラード・フィル世界初CD化、シベリウス交響曲第3番

2009-07-27 00:55:07 | 交響曲
 エフゲニー・ムラヴィンスキー(Evgeni Mravinsky/1903~1988)、レニングラード・フィルによるシベリウス交響曲第3番ハ長調作品52がAltusレーベルより世界初CD化されたのは今から5年前の2004年であった。(写真/ALT083)
 このCDの音源は当時の全ソヴィエト放送録音によるモノラル・テープである。CDの解説によれば演奏は1963年10月27日のライヴ録音とのことである。因みにコンサートでは前日の26日にも同曲が演奏されておりこの時の演奏がソヴィエト初演となった。
 シベリウスは筆者の好きな音楽家の一人で特にこの第3番には愛着を感じておりコレクションの数も多い。この初登場のムラヴインスキー盤も録音はモノラルながら演奏はなかなかのものである。この作品は作曲者シベリウスが1904年ヘルシンキ郊外(北方約30km)のヤルヴェンパーの閑居生活に入り最初に完成した3楽章構成の交響曲である。(1907年)それまでのチャイコフスキー等の影響が見受けられる第1番・第2番の作風から本来のシベリウスの音楽スタイルが形成された最初の交響曲で後の第4番、第5番へとつながっていく。筆者が初めてムラヴィンスキーのシベリウス交響曲の生演奏に接することができたのは1977年10月のレニングラード・フィル来日公演で交響曲第7番であった。(10月19日/東京・NHKホール)この単一楽章形式の作品を実に巧くドライブしていくムラヴィンスキーを今でも鮮明に記憶している。このコンサートの模様も同レーベルからCD化されているので聴くことが可能である。
 尚、この第3番のCDにはボーナス・トラックとして同音源を電気的にステレオ化した所謂擬似ステレオ・バージョンも収録されている。

コッソット、パヴァロッティの名盤、ドニゼッティ「ラ・ファヴォリータ」

2009-07-26 07:50:02 | オペラ
 今日は久しぶりにイタリア・オペラの「私のお気に入り」を紹介したい。写真のLP3枚組のレコードが日本でリリースされたのはかれこれ30年余り昔のことだが今日紹介するドニゼッティの名作「ラ・ファヴォリータ」の録音の中でも「ピカ一」のものであろう。筆者は1971年9月のNHKイタリア歌劇招聘公演でこの作品の日本初演に接し「お気に入り」のオペラの一つになった。この時の公演の模様は確かNHKFM放送でも生中継されたし映像はテレビで放映された。筆者はどちらも大切に保存している。タイトルロール、ファヴォリータ役=レオノーラを歌ったメッゾ・ゾプラノフィオレンツァ・コッソットの見事な歌いぶりに圧倒された。
 今日紹介するLP盤はその公演から約7年の歳月を経てリリースされた待ちに待ったそのコッソットが歌う「ファヴォリータ」の名盤であった。相手役のフェルナンドを歌っているのが当時絶好調の名テノール、ルチアーノ・パヴァロッティである。この作品の最高の聴きどころはレオノーラのアリア「いとしのフェルナンドよ」(第3幕)、フェルナンドがロマンツァ「やさしい魂よ」であろう。2曲とも単独でもよく取り上げられイタリア・オペラ名アリアとしても有名だがこのレコードでも二人の名唱を楽しむことができる。さらにこの録音ではイネス役にソプラノのイレアナ・コルトバス、アルフォンソ11世役にバリトンのガブリエル・パスキエ、聖ジャコモ修道院長=バルダッサーレ役にバスのニコライ・ギャウロフが加わり豪華メンバーでのレコーディングである。指揮はリチャード・ボニング、管弦楽、ボローニャ・テアトロ・コムナーレ管弦楽団、同合唱団による1974年8月のボローニャ、テアトロ・コムナーレにおける録音セッションで現在でも不滅の名盤になっている。

グレン・グルード編曲ピアノ版ーワーグナー

2009-07-25 13:23:25 | 器楽曲
 今週はリスト編曲によるピアノ版管弦楽作品のコレクションを中心に紹介してきたが今日は「孤高の鬼才」とも呼ばれたカナダ、トロント出身のピアニスト、グレン・グールド(Gulenn Gould/1932~1982)自身がピアノに編曲したワーグナーの作品3曲を集めた写真のLPについてふれてみたい。
 グレン・グールドはご承知のように今から四半世紀以上も前に50歳にして惜しまれこの世を去った天才にしてちょと奇人のピアニストであった。筆者が学生時代にはリスト編曲のベートーヴェンの交響曲第5番を演奏したLPがリリースされ話題を呼びよく聴いたものである。その彼が1973年に自らの編曲によるピアノによるワーグナーを録音した。曲目は楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲、楽劇「神々の黄昏」から「夜明けとジークフリートのラインへの旅」、「ジーククフリート牧歌」の3曲である。賛否両論はあろうが私個人的には天才ピアニスト、グールドの感性がにじみ出た鮮やかな演奏である。特に「夜明けとジークフリートのラインへの旅」ではグールドのピアノによる色彩感あふれる音作りが素晴らしい。
 また彼は最晩年の1982年7月(亡くなる約3カ月前)に自身の指揮でトロント交響楽団の13名のメンバーで構成された室内管弦楽で「ジークフリート牧歌」を録音していた。おそらく彼が指揮した唯一のもので最期の録音ではないかと思う。まさに彼の「白鳥の歌」となった。



ピアノ版 ベルリオーズ「イタリアのハロルド」

2009-07-24 01:29:08 | 器楽曲
 昨日の続きになるが今日はピアノ版のベルリオーズ「イタリアのハロルド」のCDを紹介したい。リストは「幻想交響曲」と共にヴィオラ付き交響曲「イタリアのハロルド」もヴィオラ・ソロ・パートをそのまま残しピアノ版の編曲をおこなっている。筆者のお気に入りの1枚は今から15年くらい昔のことになると思うがイギリスのレーベル、「ハイペリオン(hyperion)」からリリースされた写真のCDである。(Hyperion/CDA66683)この演奏はピアノをオーストラリア、メルボルン出身のレスリー・ハワード(Leslie Howard),ヴィオラ・パートをパウル・コレッティ(Paul Coletti)によるものである。
 特にピアノのハワードはリストのピアノ音楽作品全集を1985年10月から1998年12月の足掛け14年の歳月を経て同レーベルに90枚以上に登るCDに録音した人で有名である。またその中には世界初録音のものも多く含まれているそうである。
 さて話を本題に戻しこの「イタリアのハロルド」の録音は上記作品全集録音のさなかの1992年10月にロンドンで行われている。独奏ヴィオラを担当しているコレッティの詳細な経歴を筆者はよく知らないがこのCDを聴く限りなかなか素晴らしいテクニックを持った人だと思う。ハワードのピアノに巧く息の合った演奏をしている。原曲の管弦楽版との聞き比べも大変興味深く編曲者のリストの名人芸がここにも如実に表れている。

ピアノ版 ベルリオーズ「幻想交響曲」

2009-07-23 01:04:44 | 器楽曲
 昨日に続いて今日はベルリオーズ「幻想交響曲」のピアノ版の世界初録音のLP(写真)を紹介したいと思う。このレコードは日本では1978年に当時の「CBSソニー」からレコード番号25AC337としてリリースされた。原盤はイタリア・リコリディである。録音年月は不明だが1976年前後と推測される。
 ピアノを弾いているはブルーノ・メッツェナ(Bruno Mezzena)と言う人でレコードの解説によれば15歳でヴェネツィァのベネデット・マルチェロ音楽院を首席で卒業しさらに1962年にボルザーノのモンテヴェルディ音楽院の作曲科を卒業しベネデッティ=ミケランジェリらに師事し評価を得たピアニストである。またこのLPが彼の日本でのデビュー盤でもあった。
 演奏はこのピアノの魔術師とも言われたリスト編曲ピアノ版の超絶技巧による「幻想交響曲」を無難に弾きこなしているところは見事なものだ。大管弦楽で聴く原曲とはまた違った味わいを感じさせる。その後、ロシアの名ピアニスト、ニコライ・ペトロフが弾くCD(TALENTS of RUSSIA/RCD-13002-チェコ原盤1987年録音)等数種の同曲のピアノ版のCDもリリースされている。
 編曲者のリストはこのほかに「イタリアのハロルド」のピアノ版も完成させておりこれについてはまた次回にふれてみたい。

ロジャー・ウッドワードのベートーヴェン・ピアノ版「エロイカ」

2009-07-22 08:20:24 | 器楽曲
 ロジャー・ウッドワード(Roger Woodward/1942~ )はオーストラリア、シドニー出身の著名な世界的ピアニストだが日本でのレコード・CDの発売が少ない為か我が国での彼の知名度はそれほど高くない。残念である。筆者が彼の生の演奏を初めて聴いたことは以前のブログでも紹介したことがあるが1976年3月8日、パリの「テアトル・ド・ラ・ヴィル(Théâtre de la ville)で開催されたフランス国立管弦楽団(ネルロ・サンティ指揮)の演奏会であた。演奏曲目はブラームス、ピアノ協奏曲第1番ニ短調作品15であった。因みに彼はこの作品をクルト・マズアとニュー・フィルハーモニア管弦楽団でRVCにレコーディングしている。その2年後、彼が弾くベートーヴェンのピアノ版(リスト編曲)交響曲第3番変ホ長調作品55「エロイカ」の世界初録音のLP(写真RVC-2206)を聴き彼の驚きのピアノ技巧に感動しファンの一人になってしまった。第1楽章の提示部の反復も実行し全般的にゆっくりとしたテンポで彼はじっくりとこの長大な作品に臨んでいる。リストの編曲も素晴らしいが彼のこの作品に対する力の入れようが伝わってくる。全曲で67分余りを要した聴き応えのある名演である。
 これも何かの縁かもわからないがその7年後の1985年「つくば研究学園都市」で開催された「国際科学技術博覧会ー通称つくば科学万博」のオーストラリア催事で彼の弾く武満 徹ほかの小品に接することができた。彼のレパートリーはバッハから武満まで幅が広く特にラフマニノフの演奏も高い評価を受けている。
 余談ながら写真のサインは彼に「科学万博」での演奏終了後に入れてもらったものである。この時しばしの時間であったが彼と話ができ演奏に対する真摯な語り口が今でも印象に残っている。