ショスタコーヴィチの「交響曲第13番変ロ短調作品113」、通称「バビ・ヤール」と呼ばれるシンフォニーはバス独唱並びにバス合唱つきの5楽章構成の一大カンタータ風の作品である。作曲された年は1962年、副題の「バビ・ヤール」はウクライナ地方にある峡谷の地名で第二次大戦中の1941年この地を侵攻した「ナチス・ドイツ」によるユダヤ人虐殺が行われた場所であった。当時、旧ソビエト体制下では作品のテーマが当然のことながら問題となり初演をめぐって当局とひと騒動あったことは有名な話である。初演は1962年12月18日に「モスクワ音楽院大ホール」に於いてキリル・コンドラシン指揮モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団、バス独唱ヴィタリー・グロマツキー、ロシア共和国合唱団ほかで行われている。写真の「ロシア・ヴェネチア盤4CD・セット」(2004年リリース)にはこの初演の翌々日20日に行われたライヴが収録されている。大変貴重な当時の放送音源でもあり指揮者コンドラシンの力量が緊張感とともに伝わってくる。(テキストは反体制派の詩人エフゲニ・エフトゥシェンコの詩)
ほかにこの4CDセットにはレオニード・コーガンとのショスタコヴィーチ「ヴァイオリン協奏曲第1番」(1962年録音)、ダヴィッド・オイストラフとの「同第2番」(1968年録音)や普段まず耳にすることがないポーランド出身(後にソヴィエトに亡命)のミェチスワフ(モイセイ)・ヴァインベルグの交響曲など珍しい作品が収録されている。