私のレコード・ライブラリーから

私のレコード/CDコレクション紹介

クレンペラー、マーラー「第9」(エジンバラ音楽祭1968、ライヴ盤)

2012-04-29 11:13:33 | 交響曲

 オットー・クレンペラー(1885~1973)はマーラーの全ての交響曲を演奏・録音はしなかったが重要なレパトリーの一つであった。今日紹介する写真の1968年「エジンバラ音楽祭」(アッシャー・ホール)における「第9番」ライヴ録音盤は前年の「EMI」スタジオ録音盤と共に筆者の好きな1枚である。(伊・HUNT/2HUNTCD-563、1989年リリース)

 1968年録音ながらモノラルなのが惜しまれるがライヴならではの緊張感、聴き終えた後の充実感が深く味わえる演奏である。それは彼と深い関係にもあった「ニュー・フィルハーモニア管弦楽団(現、フィルハーモニア管弦楽団)」との演奏であることも否定できないだろう。言い伝えによれば晩年オーケストラの団員たちから「棒を振らなくてもただ指揮台に座っているだけでいいから」といわれるくらい厚い信頼を得ていたのであろう。落語ファンの筆者には晩年の「志ん生師」とオーバーラップしてしまう。

 またこのCDにはもうひとつ1956年2月18日のライヴ録音(モノラル)、クレンペラーにとっては珍しい「ベルリン放送交響楽団」との「第4番」も収めれている。「第4楽章」でソプラノが天国の歌、「子どもの不思議な角笛」による「大いなる喜びへの賛歌」を歌うのは当時ヨーロッパ各地の歌劇場で活躍していたエルフリーデ・トレチェルである。彼女は惜しむことにこの録音の2年後1958年に45歳の若さで他界してしまう。この演奏も貴重な録音である。

 

 

 


リオール・シャンバダール/ベルリン交響楽団 - 「シューマン・序曲集」 

2012-04-26 15:23:53 | 管弦楽曲

  「ALTE NOVA Classics」は1990年代に誕生した全てデジタル新録音による超廉価盤レーベルだがその内容も決して侮ることはできない。たとえば今日紹介するリオール・シャンバンダール指揮ベルリン交響楽団による写真の「シューマン・序曲集」もその1枚である。(ALTE NOVA Classics/7432180782 2)

 2002年以来このコンビでもう何回か来日公演を行っているので会場に足を運ばれた方はその実力のほどはお分かりいただけると思う。この序曲集は2000年に録音されたものでシューマンのオペラ「ゲノヴェーヴァ」序曲、付随音楽「マンフレッド」序曲のほか管弦楽曲として独立して書かれた「メッシーナの花嫁」序曲、「ジュリアス・シーザー」序曲、「ヘルマンとドロテーア」序曲の5つが収録されている。普段「マンフレッド」序曲を除いてはコンサートでもあまり演奏されない作品なのでこうした「序曲集」のCDで気軽に楽しむことができることもありがたい。

 因みに指揮者のシャンバダールは1950年イスラエル、テル・アヴィヴ出身、ウィーンの名指揮者ハンス・スワロフスキーやイタリアの巨匠カルロ・マリア・ジュリーニにも師事、ドイツ古典派、ロマン派の作品を得意にしている。また「ベルリン交響楽団」は旧東独にも2006年まで同名のオーケストラが存在(現在はベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団に改名)したため混乱したが西ベルリンに1966年に設立された比較的新しい楽団である。現在、定期演奏会をベルリン・コンツェルトハウス(旧シャウシュピールハウス)とベルリン・フィルハーモニーザールで開催している。

 


マルケヴィッチ&日本フィル - ブラームス「交響曲第4番」ライヴ盤

2012-04-24 19:45:04 | 交響曲

 写真のCDは1990年「プラッツ」レーベルより再リリースされたイゴール・マルケヴィッチ指揮による「日本フィルハーモニー交響楽団」第157回定期公演(1968年3月21日・東京文化会館)からの懐かしいライヴ盤である。(PLATZ-P23G539)

 収録曲目はヴェルディ「ルイザ・ミラー」序曲・ブラームス「交響曲第4番ホ短調作品98」である。マルケヴィッチと日本フィルとの関係は深く彼がこの楽団の指揮台に初めて登場したのは1960年のことだった。そして確かこの公演が行われた1968年には名誉指揮者の称号を得たと記憶している。因みに首席指揮者は小澤征爾、コンサートマスターはルイ・グレーラーが務めていた時代である。

 筆者もちょうどこの頃から「日本フィル」の定期演奏会に足を運び始めた。このライヴ盤は最高潮に達した「日本フィル」の演奏が味わえる。ライヴ録音ならではのスリリングな展開も感じさせるが特にブラームスの「第4番」は指揮者マルケヴィッチの情熱が充分に伝わる名演である。


パウル・クレツキ&チェコ・フィル 「ベートーヴェン交響曲全集」

2012-04-23 19:53:11 | 交響曲

 ポーランドのロッズ出身のパウル・クレツキ(Paul Kletzki/1900~1973)はその知名度こそ地味だったがなかなか味のある指揮者だった。筆者は1968年6月「スイス・ロマンド管弦楽団」の初来日公演で彼が巨匠エルネスト・アンセルメと共に指揮台に立ったことを思い起こした。クレツキが振る公演は6月23日東京文化会館の演奏を聴いたのだがプログラムの頭がいきなりベートーヴェンの「交響曲第5番ハ短調」から始まったのが印象的だった。(因みプログラムはこの後ワーグナー「ジークフリート牧歌」、ムソルグスキー(ラヴェル編曲)組曲「展覧会の絵」と続いた)

 今日取り上げるクレツキがチェコ・フィルと取り組んだベートーヴェンの交響曲全集録音は1965年から68年にかけて行われたものである。彼のベートーヴェンの交響曲録音はこのほか単発ものでは「南西ドイツ放送響」や「フランス国立放送管」等のものがあったと思うが演奏の質はこの全集盤に軍配があがるだろう。特に個性的な演奏ではないがその端正な芸風に自然と引き寄せられる。この写真の2005年に久しぶりに復活した全集盤(5CD)には1967年録音の「エグモント」序曲と「コリオラン」序曲も収められている。 (写真/スプラフォン(国内盤)COCQ83945-49)

 


サイモン・ラトル&フィルハーモニア管のシベリウス交響曲第5番ほか

2012-04-22 21:11:53 | 交響曲

 写真のCDは当時まだ新進の指揮者だったサイモン・ラトルが1981年にフィルハーモニア管弦楽団とレコーディングしたシベリウス「交響曲第5番変ホ長調」ならびに首席指揮者を務めていたバーミンガム市交響楽団とのニールセンの「パンとシリンクス」・「交響曲第4番<不滅>」(1984年録音)が収められている。もちろんニールセンも初録音であった。

 因みにフィルハーモニア管弦楽団との初出LP盤はシベリウスの交響詩「夜の騎行と日の出」とのカップリングだった。ラトルその後バーミンガム市響とシベリウス交響曲全集録音を完結しているがこのフィルハーモアとの「第5番」もキレのある冴えた演奏である。またニールセンが1918年に書いた「パンとシリンクス」はレコード録音がラトル以外のものが見当たらないので貴重である。

(写真/EMI Classics-オランダ盤、CDM 7 64737 2)

 

 


クライバーンのマクダウェル「ピアノ協奏曲第2番」

2012-04-21 20:12:21 | 協奏曲

 今日紹介する写真のヴァン・クライバーンが弾くプロコフィエフ「ピアノ協奏曲第3番」・マクダウェル「ピアノ協奏曲第2番」を収めたLPも懐かしい1枚である。このレコードは筆者がまだ高校時代の1966年に発売された国内盤(日本ビクター/SRA-2118)である。当時クライバーンのプロコフィエフの協奏曲を聴きたく求めたLPだが今回はレコード第二面のマクダウェルにスポットを当ててみたい。

 エドワルド・マクダウェル(Edward MacDowell/1861~1908)はニューヨー出身の「知るひとぞ知る」作曲家だが「パリ音楽院」やフランクフルトの「ホーホ音楽院」で学び米国人作曲家として初めてヨーロッパで認められた人と云われている。彼はピアノ協奏曲を二曲書いているが作品の傾向はドイツ・ロマン派的情緒や特にこの1884年から86年にかけて作曲された「第2番」の協奏曲には北欧のグリーグの影響が随所に強く顕れている。ただ残念ながら彼の作品はほとんど現在はコンサート等で取りあげられる機会がないことやレコード録音も少ないのでこのクライバーンの録音は大変貴重なものと思われる。

 録音は彼が「チャイコフスキー・コンクール」に優勝した2年後の1960年に行われている。指揮はワルター・ヘンドル、管弦楽はシカゴ交響楽団である。


W.スタインバーグ/フィルハーモニア管弦楽団のR.シュトラウス

2012-04-20 18:42:30 | 管弦楽曲

 先日もウィリアム・スタインバーグが「米キャピトル」に手兵「ピッツバーグ響」とレコーディングしたメンデルスゾーンの「スコットランド」交響曲を取り上げたが今回は写真のLP、イギリスの「フィルハーモニア管弦楽団」との珍しい録音を紹介したい。

 この録音は彼がロンドン訪問中の1957年6月、「キングス・ウエイ ホール」でのステレオによるセッションである。収録曲はリヒャルト・シュトラウス「ばらの騎士」組曲・交響詩「ドン・ファン」で前者の組曲はスタインバーグ自身のアレンジによるものである。写真のLPは「米セラフィム盤」(S-60141)だが原盤は「米キャピトル」でしばらく廃盤になっていたが昨年「キャピトル・レコーディング」(20CDBOXセット)に組み入れられ復活した。

 派手さはないが「ドイツ正統派」、オーソドックス・スタイルの演奏が魅力をそそる1枚だ。


D.オイストラッフのブルッフ「スコットランド幻想曲」・ヒンデミット「ヴァイオリン協奏曲」

2012-04-18 21:23:57 | 協奏曲

 ダヴィッド・オイストラッフ(David Oistrakh/1908~1974)は戦前から活躍していたヴィルトゥオーソと云われるほどのヴァイオリニストだったが日本で名前が広まったのは戦後彼のレコードが紹介されはじめてからと思われる。筆者もステレオ時代に入った1960年代に彼のベートーヴェンやブラームスの協奏曲のLPを聴き骨太でスケール感のある演奏に惹きこまれてしまった。

 写真のLP(SXL6035)は彼が1962年「英デッカ」に録音したブルッフ「スコットランド幻想曲」・ヒンデミット「ヴァイオリン協奏曲」である。管弦楽は「ロンドン交響楽団」、指揮はヤッシャ・ホーレンシュタイン(ブルッフ)、後者は作曲者自身パウル・ヒンデミットによる貴重な録音でもある。また「スコットランド幻想曲」はこの録音がオイストラッフによる唯一のものである。

 現在までに国内盤としてもLP、CDと再リリースされてきた不滅の名盤だがその魅力は聴きこむほどに聴き手に伝わる。彼が66歳の若さで急死した時の衝撃を思い起こした。

 


モントゥー&ロンドン響の「ドビュッシー&ラヴェル」

2012-04-17 19:59:35 | 管弦楽曲

 ピエール・モントゥー(Pierre Monteux/1875~1964)が最晩年、「ロンドン交響楽団」と英デッカに録音したドビュッシーとラヴェルの管弦楽集も忘れることができない。写真はそのデッカ・オリジナルLP盤(SXL2312)である。

 このLPにはドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」・「夜想曲ー雲・祭り」、ラヴェル「スペイン狂詩曲」・「亡き王女のためのパヴァーヌ」が収録されている。録音当時モントゥーはすでに85歳を超えていたと思うが「ロンドン交響楽団」の首席指揮者を務めていた。この録音と相前後し彼は「大阪国際フェスティバル」(1963年)参加のため同楽団を率いて来日している。

 彼の気品に満ちた詩情豊かな音楽性が聴き手にダイレクトに伝わる好演である。録音も大変素晴らしい。

 


アルゲリッチのショパン「ピアノ協奏曲第1番」

2012-04-16 17:27:35 | 協奏曲

 マルタ・アルゲリッチのライヴ録音も含め数種あるショパンの「ピアノ協奏曲第1番」であえて1枚を選ぶとなればやはり写真の「ドイツ・グラモフォン盤」(139 383 SLPM)であろう。このレコードは彼女がワルシャワの「国際ショパン・コンクール」(1965年)優勝後1968年にクラウディオ・アバド指揮によるロンドン交響楽団との演奏でリストの「第1番」とのカップリングである。

録音当時まだ20代の彼女の情熱的で個性あふれる演奏は今聴いても聴き手を圧倒する。若きアバドの指揮が絶妙にオーケストラをドライヴ、彼女のピアノの巧さをバランスよく聴かせているところも印象的だ。