数ある過去のFMエア・チェック・オープン・テープを「CD-R」に整理進行中だが目鼻がつくまでまだまだ先が長い。そこで今回は今年生誕100年、没後10年になる巨匠ギュンター・ヴァントに先ずスポットを当てた。今日はその中から彼が「バイエルン放送交響楽団」に客演した際に振ったブルックナー「交響曲第5番」を取り上げてみたい。
この演奏は1982年1月7日、このオーケストラの本拠地でもあるミュンヘンの「ヘルクレス・ザール」でのライヴ録音でNHKFMでこの年の8月25日に放送されたものである。ヴァントは1912年1月7日生まれなので偶然にもこのコンサートは彼が満70歳の誕生日を迎えた日であった。今回改めて聴いてみたがブルックナー指揮者としての彼の本領を充分にうなづける説得力あるものだった。トータルの演奏時間は約75分と彼の晩年の演奏と比較すればやや速い演奏だが引き締まったサウンドが魅力でこの放送オーケストラの巧さを引き出していた。当時、彼のブルックナーのレコードといえば「ケルン放送響」(独Harmonia Mundi)とのものが出ていたことが思い出される。また日本ではまだ彼の知名度はそれほど高くなかった時代でちょうどこの年に彼は「北ドイツ放送響」首席指揮者に就任している。「バイエルン放送響」とのブルックナーはレコード(CD)化もされてないと思われるのでその意味からも貴重な演奏である。