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エルガーの傑作ー変奏曲「謎(エニグマ)」

2009-02-01 03:13:49 | 管弦楽曲
 イギリスを代表する作曲家の一人エドワード・エルガー(Edward Elgar/1857~1934)の傑作ー創作主題による変奏曲「謎(Enigma)」について今日は書いてみたい。エルガーの名は日本ではそれほどポピュラーではないかも知れないが本国イギリスでの人気は高く「プロムス」などの音楽祭では避けて通れない作曲家である。
 さて、今回とりあげる変奏曲「謎ーエニグマ」作品36は1898年~99年にかけて作曲された彼の傑作で演奏会でも度々プログラムに載り親しまれている。
 曲は主題と14から成る変奏曲で構成され各変奏曲にはエルガーの妻をはじめ親しい友人たちのイニシャルや記号が付されている。このため作曲当初、この14人の人物が誰か明かされなっかたので「謎」とされた。しかし後にこの14人の人物像が見破られたためもはや「謎」ではなくなったがもう一つの「謎」が隠されていると言われている。それは「実際には演奏されない別の大きな主題が存在し、しかもその主題は決して姿を見せない」とエルガー自身が述べているものである。実にミステリアスな興味深い話である。この「謎」はいまだに解明されてない。まさに、永遠の「謎」かもしれない。
 この作品は彼の行進曲「威風堂々」と共にポピュラーなのでショルティ盤を始めとして録音も多数出ているが私が好きな録音はメキシコの名指揮者だったエドゥアルド・マータ(Eduardo Mata/1942~1995)が1980年代にVOXレーベルに遺したロンドン交響楽団との演奏(写真)である。じっくりとやや遅めのテンポで味わい深く聴かせているところが見事である。特にアンコール曲などにも単独で演奏される第9変奏「ニムロッド」の優美な演奏はたまらない。因みに「ニムロッド(Nimrod)」とは聖書に出てくる「狩」の名人のことだそうだがエルガーの親友イエーガー氏(ドイツ語で「狩」はイエーガー)を指している。
 最後に指揮者マータも悲運な人だった。1995年1月4日メキシコからダラス行きの飛行機に搭乗した彼は離陸後機材のエンジン・トラブルに巻き込まれた。航空機は緊急着陸に失敗・大破ー帰らぬ人になった。まだ52歳の若さであった。これから期待される指揮者だっただけに残念である。尚、彼は1977年から1993年までダラス交響楽団の音楽監督を務めており在任中の1991年に録音したショスタコーヴィチの交響曲第7番ハ長調「レニングラード」の名録音もドリアン・レーベルに遺している。