私のレコード・ライブラリーから

私のレコード/CDコレクション紹介

カラヤンと「ドイツ・レクイエム」

2009-08-31 01:12:28 | ヘルベルト・フォン・カラヤン
 ヘルベルト・フォン・カラヤンはブラームス「ドイツ・レクイエム」作品45を1978年のザルツブルクでのライヴ映像作品を含めると実に6種類の収録を行なった。それだけにこの作品は彼にとって重要なレパートリーでコンサートでもヴェルディの「レクイエム」ほどではないにしてもしばしばプログラムに取り上げている。中でも筆者が一番気に入っている演奏は4回目の録音にあたる写真のLP、EMI盤で日本での初出は確か1977年であったと思うが「悲劇的」序曲(1970年録音)がカップリングされ2LPセットでリリースされた。
 演奏は管弦楽ベルリン・フィル、独唱はソプラノ、アンナ・トモワ=シントウ、バス、ヨセ・ファン・ダム、合唱はカラヤンとは切っても切れないウィーン楽友協会合唱団である。レガート奏法を好むカラヤンならでは美しい演奏でベルリン・フィルの重厚な響きが聴き手をうっとりとさせる。カラヤンはこの後ウィーン・フィルと1983年に最後の録音を行ったがソプラノ独唱がバーバラ・ヘンドリックスに代わっている。こちらはやはりウィーン・フィルの弦の柔らかな響きが何ともいえない風情を誘う演奏でそれに加え晩年のカラヤンの枯淡な雰囲気も感じさせる演奏である。因みにこの作品の全曲世界初録音は1947年にやはりウィーン・フィル、ウィーン楽友協会合唱団、エリザーベート・シュヴァルツコップ(ソプラノ)ハンス・ホッター(バス)でカラヤンがEMIに行っている。
 

FMエア・チェック、オープン・テープ・コレクションから  

2009-08-30 11:39:29 | FMエア・チェック
 今日は「FMエア・チェック・オープン・テープ・コレクション」から巨匠カール・ベーム(1894~1981)が1971年5月14日ベルリン・フィル定期コンサートの指揮台に登場した時の貴重なライヴを紹介したいと思う。
 この放送は筆者の記録ノートによるとNHKFM、日曜日の午後「海外の音楽」の枠に中で同年10月10日に行われている。プログラムは演奏順にベートーヴェン交響曲第6番ヘ長調作品68「田園」、モーツアルト交響曲第28番ハ長調K.200、最後にストラヴィンスキー舞踊組曲「火の鳥」(1919年版)である。ここで注目したい曲目はストラヴィンスキーの「火の鳥」である。おそらく彼がこの作品をコンサートで取り上げたのはこの時が初めてだったと推測される。レコディーングもこの当時としては行われておらず1975年3月のウィーン・フィルとの来日公演で3月17日・22日の東京公演(筆者は22日に会場NHKホールで聴いた)で演奏されこちらの方は「ベーム/ウィーン・フィル来日ライヴ1975」としてレコード・CD化もされた。
 今、改めてCD-R化を進めるにあたり再生してみるとこのベルリン・フィルの演奏では東京公演ウィーン・フィルより若干速めのテンポで指揮しているが基本的な解釈は変わりはないようである。筆者は1971年の放送時にベームが「火の鳥」を振ったということでちょっと驚いた記憶がある。ずれにせよ彼の数少ない貴重な録音記録の一つであろう。プログラムの最初を飾ったベートーヴェンの第6番は言うまでもなく第1楽章主題提示部の反復は省略しているがカラヤンとは対象的な演奏で特に第2楽章が彼らしいゆったりとした演奏で味わい深いものを感じさせる。ベーム、76歳の枯淡の境地にあるベートーヴェンで同年のレコード録音ウィーン・フィルとの名演と比較してみるのも面白い。

ユニークなロジェストヴェンスキーの「ブルックナー交響曲全集」

2009-08-29 06:39:22 | 交響曲

 今日はロシアの巨匠ゲンナジー・ロジェストヴェンスキーが当時のソビエトの若手優秀なプレヤーたちを中心に選考し創設された(1982年)「ソビエト国立文化省交響楽団」と録音したユニークな「ブルックナー交響曲全集CD」(写真)を紹介してみたい。この全集プロジェクトはそもそもブルックナー交響曲の複数存在する異稿を全て録音することだったらしい。1983年の交響曲0番ニ短調、所謂、習作的作品と言われた番号なしのヘ短調交響曲から録音が開始され1988年のまで続けられた。この中には現在では他に録音が見当たらない第4番「ロマンティック」の1878年版の「フィナーレ」やマーラーによる改訂版をパート譜から復元して録音している。しかし残念なことに第8番ハ短調の初稿1877年版は録音されなかった。因みにこの録音ではハース版1890年の第2稿を使用した録音である。
 いずれにしても同一指揮者・同一オーケストラによるブルックナー交響曲の異種版が一度に聴けるレコード、CDは他にはない。しかもロシアの指揮者でブルックナー交響曲全集を録音した人は未だに彼を除いて存在しない。まさに彼はロシア指揮者界の鬼才である。
 またありがたいことにこのCD全集(全集と言っても日本では各2CDセットでBMGから当時分売りされた)はINDEXがついているため各楽章の提示部・各主題部・展開部等聴きたい箇所がすぐ引き出せるところも便利である。
 余談ながらこのオケーストラは現在では「ロシア国立シンフォニック・カペレ」と改称され首席指揮者はヴァレリー・ポリャンスキーが務めているようである。


ネーメ・ヤルヴィの名盤、グリーグ管弦楽曲集

2009-08-28 01:26:19 | 管弦楽曲
 ノルウェーの国民的音楽家グリーグ(Edvard Grieg/1843~1907)の代表作の一つと言えばすぐイプセンの劇のための付随音楽「ペール・ギュント」を思いつく。この全曲をコンサート等で聴く機会は日本ではほとんどないが組曲としてはしばしば取り上げられる。彼の代表的管弦楽組曲をこの他に2曲ー「ホルベアの時代から」・「十字軍の兵士シーグル」を収録したCDを紹介したい。それは数年前に廉価盤として再リリースされた「ドイツ・グラモフォン・ザ・ベスト1000」シリーズの1枚である。(写真/UCCG-5093)
 このアルバムはエストニア出身の名指揮者ネーメ・ヤルヴィ(Neeme Järvi)がスウェーデンのエーテボリ交響楽団/Götebouruges Symfoniorkester)と1986年から1992年にかけて録音したものを1枚のCDにまとめたものである。演奏はさすが北欧音楽の権威ヤルヴィだけあってどれも素晴らしいの一言につきる。エーテボリ響の音も豊かに鳴り響く。この楽団の創設は1905年と古くヤルヴィは1982年より2004年までこのオーケストラの首席指揮者を務めていた。現在では2007年よりベネズェラの注目される若き俊英ドゥダメルが首席指揮者を務めている。


懐かしの「キング・世界の名曲1000シリーズ」から

2009-08-27 01:42:52 | 協奏曲
 以前にも紹介したことがある懐かしの「キング・世界の名曲1000シリーズ」LP盤からN響桂冠名誉指揮ウォルフガング・サヴァリッシュがコーラント・ハンセンと録音したチャイコフスキー、ピアノ協奏曲第1番変ロ短調作品23を取り上げてみたいと思う。このシリーズはLPレコードがまだ高価な時代であった1970年初頭に1枚1000円で発売された廉価盤シリーズの一つである。廉価盤ということもあり当時としてはマイナー・アーティストや録音が古いものが中心であったが中には現在聴いても遜色ない隠れた名盤も数多く存在していたことも事実である。このサヴァリッシュとハンセンのチャイコフスキーもそんな1枚かも知れない。
 ハンセンと言えばフルトヴェングラー/ベルリン・フィルと戦時中のコンサート・ライヴ、メロディア原盤のベートーヴェン、ピアノ協奏曲第4番ト長調作品58(1943年)を思いつく。筆者もこのメロディア・シリーズのほとんどを購入したが確かに凄い演奏である。その彼が若きサヴァリッシュとRIAS交響楽団と1955年前後に録音したレコードがこのチャイコフスキーのピアノ協奏曲であった。このオーケストラは後にベルリン放送交響楽団そして現在ベルリン・ドイツ交響楽団と改称されたが当時西ベルリンのアメリカ軍占領地区放送局(Rundfunk im amerikanischen Sektor)の頭文字をとって通称RIAS交響楽団と呼ばれていた。原盤は「独オイロディスク」でこのレーベルは「アナログ録音名盤の宝庫」とも呼ばれ最近でもヴィンテージ・コレクション・シリーズがCD化されコレクターの間では人気がある。何十年かぶりに針をおろして見たが録音も良好で演奏も立派なものである。何か昔の古き良き時代が甦った気分になった。たまには昔のコレクションを聴き直してみるのもなかなかオツなものである。
 

カラヤンならではの「ヴェルディ・オペラ序曲・前奏曲集」

2009-08-26 10:11:46 | ヘルベルト・フォン・カラヤン
 今日はカラヤンならではの「ヴェルディ、オペラ序曲・前奏曲集」の2CDセット(写真)を紹介してみたい。彼はヴェルディのオペラを「ウィーン国立歌劇場」や「ザルツブルク音楽祭」などの演目で数多く好んで取り上げた屈指の指揮者でもあった。そんな彼はイタリア・オペラを中心とした間奏曲、前奏曲集を集めたレコーディングはフィルハーモニア時代から行っているが今日紹介するCDはヴェルディのオペラから全19曲の序曲・前奏曲を2枚のアルバムにセットした大変ユニークなものである。
 普段ではめったに聴くことがない「オベルト」序曲、「にせのスタニスラオ」序曲等々珍しい序曲、前奏曲も収録されている。まさにカラヤンにしかできなかったと言っても過言ではないアルバムで録音は1975年9月から10月にかけてベルリン・フィルハーモニーザールで行われている。ベルリン・フィルの色彩豊かな音色がカラヤンのヴェルディの管弦楽の美の世界に誘っている。実に優美で上品な演奏に仕上がっている。おそらくこれだけのヴェルディ・オペラの序曲・前奏曲を一度にまとめレコーディングしたアルバムはカラヤン以外にはないと思われる。

カラヤン・サンモリッツの夏季録音セッションから

2009-08-25 06:02:16 | ヘルベルト・フォン・カラヤン
 カラヤンは1964年の夏から1971年にかけて「ザルツブルク音楽祭」出演の合間にスイスの避暑地サンモリッツでバッハ、ヘンデル、モーツアルト等の室内楽作品を中心にベルリン・フィルと録音セッションを行った。会場は主としてホテル「ラ・レーヌ・ヴィクトリア/La Reine Victoria」に併設された室内楽専用コンサート・ホール「ヴィクトリア・ザール」が使用されている。その第1弾の録音はJ・S・バッハ「管弦楽組曲第2番ロ短調BWV1067・第3番ニ長調BWV1068」であった。中でも筆者が特に気に入っている録音はヘンデル「12の合奏協奏曲」作品6を4枚のアルバムに収めたものである。録音は1966年夏より第5番ニ長調、第10番ニ短調、第12番ロ短調の順に開始され写真のレコードは収録順に第7番変ロ長調、第3番ホ短調、第9番ヘ長調が収録されたDGオリジナルLP初出盤SLPM139036である。
 演奏はカラヤン美学の「真骨頂」とでも言える大変美しい演奏でこのヘンデルの後期バロック音楽の大御所コレッリ(Arcangelo Corelli/1653~1713)の合奏協奏曲の形式に基づいて作曲された密度の高い作品を見事なアンサンブルで仕上げている。

カラヤン/ベルリン・フィルのマーラー交響曲第4番

2009-08-24 00:45:55 | ヘルベルト・フォン・カラヤン
 ヘルベルト・フォン・カラヤンは生涯にマーラーの交響曲を第4番~第6番・第9番それに交響曲「大地の歌」の5曲のみをレコード録音している。このうち第9番に関しては1979年のスタジオ録音と1982年9月「ベルリン芸術週間」のライヴ録音の2種類が存在する。彼の最初の録音は第5番嬰ハ短調の1973年まで遡るがこの第4交響曲の録音は1979年1月から2月にかけてベルリン・フィルハーモニーザールで行われており結果的に第9番と並ぶ最後の録音セッションのグループに分類される。第4楽章のソプラノ独唱で歌われる「子供の角笛」からの「天上の生活」はエディット・マティスの美しい歌唱がききものである。
 カラヤンのこの作品に対するコンセプトはやはり「磨きぬかれた管弦楽の美しい響き」の世界にあると思われる。どの楽章も小細工などはせずカラヤンらしくじっくりと歌いあげている。また彼はこの作品を実演のコンサートではレコード録音後の翌年1980年春のザルツブルク・イースター音楽祭や夏のザルツブルク音楽祭、ルツェルン音楽祭等で集中的にプログラムに取り上げただけでその後は一度も演奏することはなかったようだ。(ソプラノ独唱はレコード録音と同様エディット・マティス)その理由は不明だが筆者としては実に興味深いところである。
 尚、写真のLPは1979年日本での初出盤である。
 
 
 

FMエア・チェック、オープン・テープ・コレクションから「ドゥブロブニク夏のフェスティバル1975」

2009-08-23 03:20:49 | FMエア・チェック
 今日は私のFMエア・チェック・オープン・テープ・コレクションから「ドゥブロブニク夏のフェスティバル1975」の2つのコンサート・ライヴを紹介したい。このフェスティバルは毎年夏(7月~8月)クロアチア共和国の世界遺産の街、アドリア海に面した風光明媚なドゥブロブニク(Dubrovnik)で開催される催しでクラシック音楽のみならずジャズや演劇分野に至るまで数々のプログラムが賑わいを見せている。
 筆者のコレクション・テープでは旧ユーゴスラビア時代1975年の2つの野外コンサート・ライヴが収録されている。一つは7月22日、城の中庭でのコンサート、イヴォ・ポゴレーリチがまだ新進ピアニスト時代の演奏でシューマンのピアノ協奏曲イ短調作品54、指揮はニコラ・テベリチ、ドゥブロブニク市立管弦楽団によるもの、他方が7月30日、ドルジチ広場でのコンサート、演奏曲目はベートーヴェン、ピアノ協奏曲第5番変ホ長調作品73「皇帝」、ピアノがドゥーブラフカ・トムシチ・スレポートニャック、サモ・フバド指揮、リューブリヤナ放送交響楽団によるもので筆者はソリスト、指揮者についての経歴等詳細は不案内である。しかしこの演奏を聴くとピアニストのスレポートニャックはかなりのテクニックを持った人だと推測できる。当日は雷が轟き、雨は振らなかったようだが野鳥のさえずりも凄まじく、悪条件下で軽快なピアノ・タッチでこの大曲をさらりと弾きこなしている。誠に見事である。
 また当時の旧ユーゴスラビア国営放送局の録音状態も良好なのも幸いであった。当時の野外コンサートの雰囲気を充分に伝えている。特に後者のベートーヴェンの演奏では雷鳴の音や野鳥のさえずりが捉えられ野外コンサートならではの面白さが楽しめる独特なものになっている。
 この放送は翌1976年6月に「1975年ドゥブロブニク夏のフェスティバル」と題してNHKFM海外クラシック・コンサート番組の中で行われたもので筆者にとっては貴重な「野外クラシック・コンサート」エア・チェックの一つでもある。

カリンニコフの交響曲

2009-08-22 04:47:18 | 交響曲
 19世紀のロシアの作曲家ヴァシリー・カリンニコフ(Vasily Kalinnikov/1866~1901)の名前が広く我が国のクラシック音楽ファンの間に急速に広まったきっかけはエフゲニー・スヴェトラーノフ(Eveni Svetlanov)が1990年代にNHK交響楽団の定期に登場し「交響曲第1番ト短調」をプログラムに取り上げてからであろう。カリンニコフはロシア国民楽派の伝統をくみ抒情性に富んだ作品を書いた人であるが34歳で夭折したためその作品数は少ないが2曲のメラコリックで美しい交響曲を遺している。
 今日紹介したいCDはロシアでおそらく最長老の女流指揮者ヴェロニカ・ドゥダロヴァ(Veronika Dudarova)が1992年にロシア交響楽団と録音したものである。(写真/英OLYMPIA盤)このCD盤の表記は「ロシア交響楽団」となっているが例のスヴェートラーノフが率いていた「ロシア国立交響楽団/旧ソビエト国立交響楽団」とは別物である。ロシアのオーケストラ名称の日本語訳は複雑な様で時々混乱を生じる。何でも「ドゥダロヴァ国立交響楽団」と呼ぶらしい。彼女の名前を冠につけたオーケスラ名とのことだが筆者も確認はしていない。
 名称はともかくとしてこのCD第1番ト短調、第2番イ長調全2曲が収録されており聴いてみるとなかなかの名演である。特に第1番が個人的には気にいっている。第2楽章のファンタジックで優美な演奏が印象的である。ぜひお聴き頂きたい1枚であるが現在ではちょっと入手が難しいかもわからない。この他の演奏ではシャンドス盤のネーメ・ヤルヴィ/スコティッシュ・ナショナル響の演奏もお勧めだ。