写真のCDにはリッカルド・シャイー&ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団によるメンデルスゾーン/交響曲第3番イ短調「スコットランド」、序曲「ヘブリディース(フィンガルの洞窟)」の各異稿版と未完の「ピアノ協奏曲第3番ホ短調」(マルチェッロ・ブファリーニによる補筆完成版、2006)が収められている。いずれも世界初録音でメンデルスゾーン生誕200年の2009年にリリースされた。(英デッカ/478 1525)
なかでも私が特に興味を持ったのは「スコットランド」のロンドン稿である。これは1842年メンデルスゾーン自身の指揮によりこのゲヴァントハウス管弦楽団の演奏でライプツィヒ初演後ロンドンで演奏された改訂版に基づくものである。現行版とのオーケストレーションの大きな違いは第1楽章と終楽章に顕著にあらわれる。このロンドン稿ではこの両端楽章が現行版より劇的で派手さを感じとることができる。シャイーの指揮は結構速めのテンポで鋭角的に押し進めていくところが印象的である。またこのCDには「スコットランド」の第1楽章冒頭の着想スケッチ(1829年/オーケストレーション=クリスティアン・ヴォス)が1分弱収録されているところも興味深い。また序曲「ヘブリディース(フィンガルの洞窟)」は1830年のローマ稿と呼ばれるものでクリストファー・ホグウッド校訂版で彼自身も一昨年9月、NHK交響楽団定期に客演、この自身校訂版による演奏を披露したこともまだ記憶に新しいところである。
最後に未完の「ピアノ協奏曲第3番」(1842/44)は第1楽章冒頭のオーケストレーションと第2楽章までのスケッチと第3楽章はほんのわずかな断片が遺されていたものである。1981年にラリー・トッドによる第3楽章に「ヴァイオリン協奏曲ホ短調」の終楽章を転用した復元完成版がある。この版による録音もリリースされているがシャイー盤は2006年のブファリーニの補筆完成版によるもので第3楽章はわずかながらのスケッチ断片を基に新たに作曲し完成された。ピアノはロベルト・プロセッダ。いずれの録音もライヴで交響曲と協奏曲が2009年1月22日、23日、序曲が2006年9月7日、8日に「ゲヴァントハウス」で行われている。