私のレコード・ライブラリーから

私のレコード/CDコレクション紹介

小澤征爾、トロント響音楽監督時代の名盤 - 武満 徹作品集

2010-02-28 06:40:18 | 現代音楽
 昨日に続きもう1枚、若き小澤がトロント交響楽団の音楽監督時代にレコーディングした武満 徹の傑作「ノヴェンバー・ステップス第1番」ほかを収録した写真のLPを取り上げてみたい。彼と武満 徹の音楽作品との取り組みは深くコンサートや録音も数多く手がけているがこのトロント響とのRCAへの録音は最初期の名盤として輝いている。
 このLPは1975年に再発売されたRCA-SX2749の国内盤であるが初出盤は同時期に録音されたメシアンの大作「ツゥーランガリラ交響曲」との2枚組みでリリースされていた。写真のLPには作曲家「武満 徹」の名前を一躍世界に轟かせた「ノヴェンバー・ステップス第1番」の他、同第2番「グリーン」、ピアノと管弦楽のための「アステリズム」の3曲が収録されている。いずれも1967年から68年にかけて作曲された作品で武満の中期の代表作である。「ノヴェンバー・ステップス第1番」の琵琶ー鶴田錦史、尺八ー横山勝也はこの作品の世界初演者(1967年11月/小澤征爾、ニューヨーク・フィルハーモニック)でもあり以来この作品の演奏には欠かせない存在となった。
 尚、小澤は同コンビで「サイトウ・キネン・オーケストラ」とも1989年9月にベルリンの「イエス・キリスト教会」でフィリップスにレコーディングしておりこちらも味わい深い演奏が聴ける。
 
 

若き小澤の名盤ー武満 徹「カシオペア」/石井 眞木/「遭遇Ⅱ」

2010-02-27 02:08:10 | 現代音楽
 今日は若き小澤征爾が日本フィル他とレコーディングした現代音楽の名盤を紹介したい。
写真のLPは1972年度の「レコード・アカデミー賞」受賞(特別部門/日本人作品)した1枚で武満 徹(1930~1996)「独奏打楽器とオーケストラのためのカシオペア」(独奏打楽器/ツトム・ヤマシタ)、石井眞木(1936~2003)「雅楽とオーケストラのための遭遇Ⅱ」の2曲をおさめたものである。レコーディングは1971年6月22日・24日の2日間で当時の「杉並公会堂」(東京/荻窪)で英国EMIのレコーディング・プロデューサー/ミキサーによって行われた。
 「カシオペア」は「ラヴィニア・フェスティバル」(シカゴ郊外のラヴィニアで開催される音楽祭)委嘱作品で名打楽器奏者ツトム・ヤマシタのために書かれた作品で初演は1971年7月8日「ラヴィニア音楽祭」で小澤征爾/シカゴ交響楽団、独奏打楽器、ツトム・ヤマシタの演奏で行われた。タイトルの「カシオペア」は「W」形をした星座からとられているがそれは独奏打楽器を中心とした各楽器群の配置に関係している。作曲者武満はこの作品に「聴覚」と「視覚」-つまり「聴く」と同時に舞台を「見る」効果もねらったようだ。
 一方、石井眞木の「遭遇Ⅱ」はタイトルからオーケストラと「雅楽」の遭遇を試みた作品でその異質の響きはなんとも不思議な相乗効果がこの作品の魅力なのかも知れない。因みに前作の「遭遇Ⅰ」(1970年)「尺八」と「ピアノ」の遭遇であった。
(写真のLPは1972年国内初出盤ー東芝音楽工業AA8872)



ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルのチャイコフスキー「悲愴」(1956年・モノラル盤」

2010-02-26 17:01:01 | 交響曲
 エフゲニー・ムラヴィンスキー(Evgeny Mravinsky/1903~1988)は手兵レニングラード・フィルとチャイコフスキー交響曲第6番ロ短調「悲愴」をライヴ録音まで含めると相当な数の録音を遺していると思われるが今日紹介する1枚のLPレコードは彼等がまだ西側での演奏活働が厳しかった1950年代にウィーン・コンツェルトハウス大ホールで「ドイツ・グラモフォン」によって最初に録音されたものである。このレコードは1995年に「ドイツ・グラモフォン・オリジナルス・アナログ名盤」シリーズとして再リリースされたオリジナル・マスター・テープを使用したドイツ・プレスの限定盤であった。(POJG9034)
 彼のチャイコフスキー交響曲録音の名盤ですぐ思いつくのが過去に紹介ずみのこの4年後に彼等が初のヨーロッパ演奏旅行の際に同じく「ドイツ・グラモフォン」によりステレオで録音された後期交響曲集であろう。後世にのこる不滅の名盤である。因みに「悲愴」は1960年11月に都市は同じウィーン、録音会場は楽友協会大ホールで録音されている。
 話を本題に戻しこの録音は1956年6月に「ウィーン・コンツェルトハウス大ホール」で行われ同時に第5番ホ短調作品64も録音された。(先月に紹介したクルト・ザンデルリンクとの「第4番」の録音もこの時に行われている。)録音はモノラルながら音の状態は大変素晴らしく力強いレニングラード・フィルの金管群の響きも冴え渡り当時53歳のムラヴィンスキーの指揮の魅力がうかがえる。
 尚、このモノラルLPの国内盤の初出は1960年代の初めごろだったと思うがCD時代に入り再びLPで再リリースされたことは筆者にとっても喜ばしいことだった。


カラスの唯一のスタジオ録音ーヴェルディ/歌劇「リゴレット」全曲盤

2010-02-25 05:00:42 | オペラ
 マリア・カラス(Maria Callas/1923~1977)と言えばオペラ・ファンならずとも誰もが知る20世紀最大のプリマ・ドンナだったが今日紹介するヴェルディの人気の高いオペラの一つ「リゴレット」のジルダ役に関しては彼女が本拠にしていたミラノ・スカラ座の舞台の実演では歌うことがなかったと言われている。実に意外なことである。写真のLPの全曲盤は彼女の唯一のこのオペラの録音でもあった。
 このレコード録音は1955年9月(カラスが32歳の頃)にミラノ・スカラ座におけるスタジオ・セッションによるものでマントヴァ公爵を歌うテノール、ジュゼッペ・ディ・ステファノ、道化役者リゴレットを歌うバリトンのティト・ゴッビも絶頂期の時代にあった。オリジナルの録音はモノラルだがこのレコードはその後、英EMIで電気的にステレオ化されたいわゆる「擬似ステレオ」の国内盤(東芝EMI-EAC77089-90/指揮トゥリオ・セラフィン、ミラノ・スカラ座管弦楽団、同合唱団他)である。
 カラス自身としてはリゴレットの娘のジルダの役はあまり適役ではないと思っていたのかもわからないがこの録音を聴く限りにおいてはなんの違和感も感じさせないところがさすがである。いずれにせよディ・ステファノ、ゴッビ、カラスと3人の千両役者が揃った歴史的名盤であることには間違いない。

45回転ステレオ・LPレコード - マゼール/ウィーン・フィル来日公演ライヴ盤

2010-02-24 19:22:44 | 交響曲
 45回転ステレオ・LPレコードが世界で初めて登場した明白な時期を筆者は覚えていないが少なくとも今から40年余り前の1960年代前半位に遡るのではないかと思われる。CDが出現する以前は33回転のLPレコードでいかにして内周部の音質を劣化しないようにするための工夫がなされてきたがその限界はあった。
 そこで登場したのがLP盤の回転を45回転にして内周部の音質劣化を最小限に抑える試みであった。日本国内でも1960年代後半には「超ステレオ・サウンド・シリーズ」として各レコード会社がダイナミック・レンジを広くとったLP盤を発売していたが片面に最高15分から20分位しか収録できず不経済のためそれほど長続きはしなかった。
 しかしデジタル録音時代(1980年代)に入り再び筆者が注目した45回転LPレコードは写真のロリン・マゼール/ウィーン・フィル、1980年来日公演ライヴ盤である。このLPは1980年11月5日に名古屋市民会館で演奏されたベートーヴェン交響曲第5番ハ短調作品67が1枚両面にゆったりと収録された「デジタル・レコーディング・マスター・サウンド・シリーズ」と銘打った超ステレオ盤である。(CBSソニー32AC1240)価格も当時としては3200円と大変高価なLPであったが確かに今聴いても大変クリアーなサウンドで奥行きのあるサウンドでウィーン・フィルの音を楽しむことができる。またこのLPは国内制作によるマゼール/ウィーン・フィルによる初のデジタル録音の1枚でもある。

ブラームス/交響曲第4番(4手ピアノ連弾用編曲版)

2010-02-23 23:01:30 | 器楽曲
 ブラームスは自作の「交響曲第4番ホ短調作品98」を自身の手で4手ピアノ連弾用に編曲をおこなっている。ブラームスの最後の交響曲となった第4番は1884年~85年にかけて作曲され楽譜は1886年1月に出版社「ジムロック」より出版されている。そしてこの「4手ピアノ連弾用」は1年遅れて翌1887年1月に同社より出版された。しかし一般的には「ピアノ版」の方が「オーケストラ版」より先に書かれたと考えられている。その理由の一つとして「ピアノ版」の第1楽章は「アレグロ・ノン・アッサイ」の表示になっているがオーケストラ版では「アッサイ」の表示をブラームス自身の消しこみで「トロッポ」に書き換えている点にある。
 写真のLPレコードはベルギーの「パヴァーヌ」レーベルより1983年にリリースされたデュオ・クロムランク(パトリック・クロムランク/桑田妙子 夫妻)による4手ピアノ連弾演奏である。(PAVANE-ADW7119)もちろんこれが「4手ピアノ連弾演奏による世界初録音(1982年)のレコードであり二人への評価が高まり注目を浴びるきっかけとなった録音でもあった。クロムランク夫妻は1974年から1994年まで「デュオ・クロムランク」として演奏活動を続け活躍しスイスのレコード会社「クラーヴェス」レーベルにも多くの録音を遺したが1994年7月、活動の頂点にして二人はブリュッセルで悲劇的な自殺による死を遂げている。

ガーシュウィンのジャズ・オペラ「ポーギーとベス」

2010-02-22 23:18:04 | オペラ

 ジョージ・ガーシュウィン(George Gershwin/1898~1937)の傑作「ポーギーとベス(Porgy and Bess)」はジャズ・オペラとして大成功し純米国オペラを代表する作品でもある。
 「サマー・タイム」をはじめとする名曲はクラシック音楽ファンならずとも1度は耳にされたことだろう。今日紹介する写真のLPはロリン・マゼール(Lorin Maazel/1930~ )がクリーヴランド管弦楽団の音楽監督時代の1975年に英デッカに録音した名盤である。(英DECCA-3LPセット609-11)
 この録音はこのオペラの初のステレオ全曲盤でキャストもポーギー役のホワイト、ベス役のミッチェルをはじめ全て一流のオペラ歌手で固めた純クラシックの観点からのプロジェクトで制作され録音も秀逸である。ここでも指揮者マゼールの鬼才ぶりが充分に発揮されている。










ムーティのモーツアルト「コジ・ファン・トゥッテ」(1982年ザルツブルク音楽祭ライヴ盤)

2010-02-21 07:19:41 | オペラ
 今日は久しぶりに「オペラLPコレクション」からリッカルド・ムーティが1982年夏の「ザルツブルク音楽祭」で上演したモーツアルトの歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」K.588写真のライヴ盤についてふれてみたい。
 この年の「ザルツブルク音楽祭」のオペラ演目で注目を集めたのはカラヤンのR.シュトラウス/楽劇「ばらの騎士」、マゼールのベートーヴェン/歌劇「フィデリオ」(以上祝祭大劇場)とこのムーティの「コジ・ファン・トゥッテ」(祝祭小劇場)の3演目だった。巨匠カール・ベームが前年に亡くなりちょっと寂しい音楽祭の幕開けになったがこのLPは当時41歳の若きムーティがウィーン・フィルを振った初のモーツアルトのオペラ全曲のライヴ録音でもあった。(東芝EMI-EAC87095-97)
 「コジ・ファン・トゥッテ(女はみんなこうしたもの)」はいわゆる人々の日常的な身近な生活をテーマにした「オペラ・ブッファ」のスタイルをとる全2幕からなる喜劇オペラである。レコードの解説書によれば録音はゲネ・プロを含めた初日(7月28日)と8月8日の公演からのものを編集し制作されたようである。舞台の臨場感あふれる録音がライヴの醍醐味でオペラ指揮者としてのムーティの魅力を余すところなく伝えている。マーガレット・マーシャル(ソプラノ)、アグネス・バルツァ(メゾ・ソプラノ)をはじめとしてキャストも申し分ない。

カラヤン/ウィーン交響楽団の貴重なライヴ

2010-02-20 03:07:28 | ヘルベルト・フォン・カラヤン
 1900年創立のウィーン交響楽団(Wiener Symphoniker)の創立90周年を記念して「独ORFEO D’OR」より初CD化された貴重なライヴ音源からヘルベルト・フォン・カラヤンのブルックナー交響曲第5番(1954年10月2日)共にこのCDを取り上げたことがあったと思うが今一度ふれてみたいと思う。
 このCD(独ORFEO D'OR-C232 901A)はヒンデミットの交響曲「画家マチス」とベートーヴェンの交響曲第7番イ長調作品92の2曲が収録されている。CDの録音データには「1957年2月18日、ウィーン楽友協会大ホールにおけるライヴ」と記載されているが実際のカラヤンの演奏記録を調べてみると当日を含め2/17・19はベルリンでベルリン・フィルとコンサートを行っている関係から(プログラムはケルビーニ/「アナクレオン」序曲、シューベルト交響曲第7番「未完成」、プロコフィエフ交響曲第5番)この記録は誤りで2月13日・14日の両日に開催された「楽友協会大ホール」でのコンサート・ライヴであると推測される。このウィーン響とのコンサートでも初めにケルビーニの「アナクレオン」序曲が演奏されていた。
 ヒンデミットの交響曲「画家マチス」の録音はこれ以外には1960年のベルリン・フィルとのスタジオ録音(EMI/ステレオ)しかないのでこのウィーン響とのライヴは貴重で大変興味深いものがある。またカラヤンのベートーヴェン第7番の演奏スタイルはどの時代をとっても大きな変化はないが壮年期のエネルギッシュなライヴならではの緊張感ある演奏が聴きごたえある。

カラヤン/ベルリン・フィルー初のブルックナー交響曲録音

2010-02-19 00:00:03 | ヘルベルト・フォン・カラヤン
 カラヤン/ベルリン・フィルによる初のブルックナー交響曲録音は1957年に英コロムビアに録音した「第8番ハ短調(ハース版)」であった。録音プロデューサーはウォルター・レッグがあたりベルリンのグリュンネヴァルト教会でのオリジナル・ステレオ録音であった。カラヤンの同曲の3種のスタジオ・録音セッションの中では一番骨太でしっかりとした構築性の基に演奏された壮年期のカラヤンのブルックナーの演奏である。筆者もこの演奏が一番好きでよく針をおろしている。
 演奏は全体的にテンポが遅くこの第3楽章も約27分半余りを要し作品全体の演奏時間は約87分と後のドイツ・グラモフオン1975年の同楽団との再録音や最晩年のウィーン・フィルとのデジタル録音盤と比較しても一番長い。この辺りもカラヤンがブルックナー交響曲が持つ響きの世界を彼の繊細な感性でじっくりと導き出した演奏と言えるのではないかと思う。写真は国内盤LPレコードとしては最後の発売となったものである。尚、ジャケットのカラヤンの写真はクリスチャン・シュタイナー撮影のものが使用されている。(東芝EMI/SERAPHIM-EAC40017-18)