私のレコード・ライブラリーから

私のレコード/CDコレクション紹介

カラヤン/ベルリン・フィルのベートーヴェン「ウェリントンの勝利」

2010-04-30 01:52:59 | ヘルベルト・フォン・カラヤン
 ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルによるベートーヴェン/「ウェリントンの勝利(ヴィットリアの戦い)」作品91ー通称「戦争交響曲」は1970年のベートーヴェン生誕200年を記念して録音されたものであった。録音は1969年1月、ベルリンのダーレム、イエス・キリスト教会で行われている。演奏時間約15分足らずの作品だが銃声の効果音がステレオ・サウンドを満喫させてくれる録音でこの写真のLP盤(DG RESONANCE2535 125/1975年)では第2面に収められているチャイコフスキーの大序曲「1812年」(1966年録音)と共にカラヤンは実際のコンサートでは演奏することはなかった作品である。
 因みにこのこの「ウェリントンの勝利」の初出盤(1970年)の第2面はベルリン・フィル管楽アンサンブルによるベルグラート指揮による「ベートーヴェン/行進曲集」とのカップリングであった。またチャイコフスキーの「1812年」はフィルハーモニア管弦楽団と1958年にもステレオで録音していたがこのベルリン・フィル盤ではドン・コサック合唱団を起用して「ロシア正教会」の聖歌を合唱で歌わせている。カラヤンらしい工夫が見られる録音でもあった。

ヤナーチェクの二つ傑作管弦楽曲

2010-04-29 10:39:24 | 管弦楽曲
 チェコ、モラヴィア出身を代表するレオシュ・ヤナーチェク(1854~1928)については以前に歌劇「死人の家から」の「管弦楽組曲」を取り上げたと思うが今回は彼の二つの傑作管弦楽曲、「シンフォニエッタ」(1926年)と狂詩曲「タラス・ブーリバ」(1918年)の私の愛聴盤を紹介したい。
 まず前者の「シンフォニエッタ」は「Symphonie」の末尾に「-etta」がついて意味合い的には「小さな交響曲」というニュアンスだがその楽器編成は大きく作品全体は5楽章構成からなり金管のトランペットひとつをとってもバス・トランペット2本がさらに加わり合計で14本を必要とする大編成である。何でも「ソコル祭典シンフォニエッタ」とも呼ばれ第1楽章は「ソコル(体育協会)全国大会」の開会式のファンファーレとして委嘱されたものでヤナーチェクのユニークな管弦楽手法が聴きものである。
 一方狂詩曲「タラス・ブーリバ」はゴーゴリの同名の歴史小説を題材に作曲されたもので17世紀、ポーランドと戦ったコザック隊長「タラス・ブーリバ」の悲劇を3つの構成で描いている。この作品の楽器編成も大ががりなもので管弦楽の各楽器の色彩感が効果的な仕上がりをみせている。筆者の愛聴盤は写真のLP盤、ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団による1982年録音である。(原盤/スプラフォン)このレコードはノイマンによるこのニ曲の初録音でもあった。どちらもノイマンらしいノーブルな気品のあるヤナーチェクの音楽を聴かせている。


 

プレヴィン/ロンドン響のLPでラフマニノフ/交響曲第1番の魅力を再認識

2010-04-27 23:04:46 | 交響曲
 ラフマニノフ(Sergei Rachmanimov/1873~1943)の「交響曲第1番ニ短調作品13」(1895)は続く有名な「第2番ホ短調作品27」(1907)の影に隠れてしまい特に国内ではほとんど生の演奏に接する機会がない。ラフマニノフの交響曲の演奏を語る上で指揮者アンドレ・プレヴィンを避けてとおることはできないだろう。過去にはプレヴィン/ロンドン交響楽団による「第2番」の名盤(1973年録音)を紹介したことがあるが彼によってこの交響曲の「完全全曲版」が世界的に広まったことは彼がラフマニノフのスペシャリストとして高い評価を築いた礎となっている。
 さて本日話題にしたい「交響曲第1番」は初演当時(1897年)大変不評だったためその後作曲者ラフマニノフの生前には演奏されることがなかった。しかもその「スコア」は作曲者自身が自宅に仕舞い込み出版を禁止したためその所在が不明となってしまったのである。その後この作品が日の目をみたのは作曲者没後の1945年にレニングラード(現、サンクトペテルブルグ)の国立図書館で初演のパート譜一式が偶然発見されたことだった。これによりスコアが復元されロシアでの蘇演は1947年アレクサンドル・ガウク/ソヴィエト国立交響楽団により行われこの作品が再評価されたのである。
 筆者が最初にこの作品を耳にしたのは写真のプレヴィン指揮ロンドン交響楽団による1975年録音(英EMI/ASF3137)のLPである。指揮者プレヴィンの繊細な美的感覚がラフマニノフの独特のスケール感ある管弦楽に見事にマッチした名演でこの交響曲の魅力を再認識させられた1枚であった。

異色な音楽家アイヴズの「交響曲第4番」&「夕暮れのセントラル・パーク」

2010-04-26 23:21:49 | 交響曲
 アメリカのチャールズ・エドワード・アイヴズ(Charles Edward Ives/1874~1954)は異色な音楽家であった。彼はエール大学で音楽を学んだが卒業後は保険会社に就職、その後彼は自身で保険会社を設立、実業家としての手腕を振るった人である。一方作曲はその合間をぬって趣味で行われた。しかしその作品は趣味の域を超え現代音楽の手法を用いた優れたものが多く交響曲作品をはじめとして注目を浴びた。
 今日紹介したい「交響曲第4番」(1916)は彼の最後の交響曲にあたるが2群の管弦楽を要し補助指揮者も必要とする複雑な構成を持つ作品である。また第1楽章、第3楽章に賛美歌を用いているのも特徴のひとつだが作曲者アイヴズの個性がでた聴き応えのある作品である。
 一方、「夕暮れのセントラル・パーク」は「野外の情景ー3部作」の一つで作曲年代は1906年とされる。作品は夏の夕暮れの「セントラル・パーク」の情景を音楽描写したものである。作曲者自身が述べているように夏の夕暮れに公演のベンチに腰をおろすと自然と耳に入ってくる音ー新聞売りの声、自動ピアノの音、走り去る馬車の音等々様々な音の情景を演奏時間10分足らずの作品の中に巧みに表現している。筆者の一番の愛聴盤は写真の小澤征爾指揮ボストン交響楽団(1976年録音)のDG盤(LP)である。彼の演奏は力まず自然体でアイヴズのこれら2つの作品の魅力を巧くまとめあげており非常に聴きやすい演奏になっているところが素晴らしい。


シノーポリ/ドレスデン国立管のブルックナー交響曲第4番

2010-04-25 08:48:45 | 交響曲
 ジョゼッペ・シノーポリ(Giuseppe Sinopoli/1946~2001)がベルリン・ドイツ・オペラでヴェルディの「アイーダ」を指揮中に倒れ帰らぬ人になって早や10年近くの歳月が過ぎた。彼は当時ドレスデン国立管弦楽団の首席指揮者を務めておりブルックナーの交響曲全曲録音に取り組み中の最中でもあった。その第1弾が今日紹介する「第4番」である。この「第4番」が録音された1987年当時は東西ベルリンが統一前でこの録音制作も西側の「ドイツ・グラモフォン」と東独の「ドイツ・シャルプラッテン」との共同で行われた。写真のCDは当時の東独側の「エテルナ(ETERNA)盤」であるが国内盤は「ドイツ・グラモフォン」よりリリースされている。
 彼はこの後「第3番」・「第7番」・「第8番」・「第9番」と1997年まで録音を進めたが全集の完結には至らなかった。しかしこれらの録音は現在もブルックナー交響曲の名盤として輝いており特に彼のこの「第4番」はとりわけ筆者が好きな演奏である。シノポーリにとってこの録音は初のブルックナーであったためかその意気込みと熱意が伝わる気迫に満ちた演奏になっている。

若きサヴァリッシュの名盤、R.シュトラウス/歌劇「カプリッチョ」全曲

2010-04-24 16:04:32 | オペラ
 R.シュトラウスの歌劇「カプリッチョ(Capriccio)」作品85は彼の最後のオペラ作品である。作品は1941年に1幕ものとして完成されている。副題にドイツ語で「Ein Konversationsstück für Musik in einem Aufzug(音楽のための1幕の対話)」と記されているようにオペラは若い未亡人マドレーヌに恋をしている音楽家フラマン、詩人オリヴィエの二人に劇場支配人ラ・ローシュが加わり「オペラ談義」が展開する。この副題は作曲者R.シュトラウスと親交のあった指揮者クレメンス・クラウスの提案によるものと言われている。実際このオペラはクラウスに献呈された。またシュトラウス自身このオペラを上演するにあたり従来の大劇場ではなくもっとこぢんまりした小さな劇場で上演することが望ましいと考えていた。筆者が実際に生で鑑賞した1987年夏の「ザルツブルク音楽祭」でも「祝祭大劇場」ではなく「祝祭小劇場」で上演された。因みにヒロインのマドレーヌ役には今は亡きルチア・ポップが美声を聴かせ指揮はホルスト・シュタイン、管弦楽はウィーン・フィルという贅沢な組み合わせだった。
 ところでこのオペラの最大の聴きどころはやはり大詰めの間奏曲「月光の音楽」と「伯爵夫人(マドレーヌ)のモノローグ」であろう。筆者の愛聴盤はステレオではグンドゥラ・ヤノヴィッツ(伯爵夫人)他カール・ベーム指揮バイエルン響盤(DG)、モノラルでは若きウォルフガング・サヴァリッシュがエリーザベト・シュワルツコップ(伯爵夫人)他、フィルハーモニア管弦楽団と1957年ー58年に録音したEMI盤(写真/独EMIElectrola 1C 151 1435243)である。特に後者のサヴァリシュ盤はシュワルツコップの全盛期で彼女の艶のある美声は聴きものでさらに指揮者サヴァリッシュが当時まだ30代の若さでこのシュトラウスの作品を見事にそつなく振っているところが素晴らしいの一語につきる。

ジュリーニとシューマンの交響曲

2010-04-23 22:24:54 | 交響曲
 意外なことにイタリアの巨匠カルロ・マリア・ジュリーニ(Carlo Maria Giulini/1914~2005)はシューマン(Robert Schumann/1810~1856)の交響曲を「第3番<ライン>」しかレコディングしなかった。それは1958年録音の「フィルハーモニア管弦楽団」(EMI)と1980年録音の「ロスサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団」(DG)とのものである。どちらも名盤であるが今日は前者のフィルハーモニア盤にスポットをあててみたい。
 これは録音年代からしてステレオ最初期のものになるが写真のCDは2005年に「24bitリマスター盤」として再リリースされたものである。(EMI Classics/TOCE13161)筆者は1980年前後に廉価盤で発売されたLP盤も所有しているが音質的にCD盤はリマスター化でよりクリアーで聴きやすくなっている。一般にシューマンの交響曲作品はオーケストレーションに難点があると言われほとんど場合他人の手が入った補筆版を使用して演奏されることが多いがこのジュリーニによる演奏も一部マーラーによる補筆改訂版を使用している。そのためかオーケストラの各パートのアンサンブルも調和がとれて各楽器の響きも美しい。尚、CDの余白にはLPと同様に当時並行して録音された「マンフレッド」序曲が収録されている。



ワルター、 「トスカニーニ追悼演奏会」ライヴ盤 - ベートーヴェン「エロイカ」

2010-04-22 02:16:44 | 歴史的コンサート・ライヴ
 今日取り上げるLPレコードはブルーノ・ワルター(Bruno Walter/1876~1962)が1957年2月3日ニューヨーク、カーネギー・ホールにおける「トスカニーニ追悼演奏会」ライヴ盤、ベートーヴェン交響曲第3番変ホ長調「エロイカ」である。(写真/THE BRUNO WALTER SOCIETY-日本コロムビア/OZ7509-BS/モノラル)管弦楽は「シンフォニー・オフ・ジ・エアー/Symphony Of The Air」その前身はトスカニーニのために設立されたNBC交響楽団である。昭和30年(1955年)5月に戦後最初に来日した海外オーケストラでもある。
 ワルターは確かこのライヴ盤以外に「エロイカ」をモノラルでニューヨーク・フィルと2回(1941年・49年)、ステレオでコロムビア交響楽団で1回(1958年)計3回のスタジオ録音があるが筆者個人的にはこの1957年のライヴ盤の演奏が一番好きである。録音状態も大変良好で全体的に厚みのあるスケール感で力みもなく見事にオーケストラをドライヴしている。第1楽章から切れの良いテンポで始まり思わず興奮してしまう。特に第3楽章「スケルツォ」、トリオのホルンが素晴らしい。そしてフィナーレを飾る第4楽章コーダの演奏は見事でこの大曲「エロイカ」を締めくくっている。演奏終了後の聴衆の拍手が中途半端にチョコット申し訳程度に収録されているのが残念な気がする。もっと会場の雰囲気をだすためにも拍手はたっぷりと収録してもよかったのではないかと改めて感じた。
 余白には1951年収録の同楽団(正確にはこちらはNBC交響楽団)とのモーツアルト歌劇「フィガロの結婚」序曲(ライヴ)も収録されている。

 

アンセルメ/スイス・ロマンド管、「1968年来日公演ライヴ盤」

2010-04-21 19:18:19 | 交響曲
 エルネスト・アンセルメ(Ernest Ansermet/1883~1969)/スイス・ロマンド管弦楽団の1968年初来日公演から6月24日に演奏されたベルリオーズ「幻想交響曲」が先頃初CD化された。(写真/CASCAVELLE-VEL3143)この公演については以前にも「想い出の演奏会」として紹介しているが筆者も会場の東京文化会館に足を運んだコンサートなので早速CDを買い求めた。早速、公演プログラムをめくりながら再生し昭和43年にタイム・スリップして当時のコンサートの記憶を思い浮かべた。
 今改めてCDでこの「幻想」を聴いてみると当時すでに85歳に達していたアンセルメが鉄人の境地で堂々と振っているイメージが筆者の頭の中に蘇える。この前年にデッカに録音した同曲のレコードと基本的な解釈の相違はないがこのライヴ演奏も感情に走ることなくテンポもあまり動かすことなくズッシリとした演奏で心地よい。公演から40年余りが経過した今、このような昔の名演奏がステレオ録音で再びCDで聴けるという世界はライヴ・ファンにとっても大変嬉しいことである。このCD「CASCAVELL」はスイスのレーベルで「RSRーRadio Suisse Romande」のロゴがジャケットに記載されている。尚、このCDには他にモノラル録音ではあるがスイス・ロマンド管弦楽団の本拠地ジュネーヴで収録されたワーグナー/序曲「ファウスト」(1950年録音)とリスト/交響詩「フン族の戦い」(1959年録音)も収録されている。
 

ネーメ・ヤルヴィ、トゥビンの交響曲

2010-04-20 23:48:09 | 交響曲
 エドゥアルド・トゥビン(Eduard Tubin/1905~1982)は「バルト三国」のひとつエストニア出身の作曲家であり指揮者としても活躍した人である。第二次大戦中、ドイツの占領下にあったエストニアがソ連領になった1944年、彼はスゥエーデンに亡命しその後は首都ストックホルムを中心に音楽活動を続けた。今日紹介する「交響曲第5番」は彼の完成した10曲の交響曲の中でも傑作とされる作品である。と言っても彼は日本ではほとんど馴染みの薄い音楽家の一人だが彼の主な作品は同じエストニア出身で彼と親交もあったネーメ・ヤルヴィ(Neeme Yärvi/1937~ )を中心にして紹介されている。ヤルヴィは「BISレーベル」に1980年代にいち早くこのトゥビンの交響曲のレコーディングを開始し(一部ライヴ録音)全集も完成した。
 写真のLPはバンベルク交響楽団との「第5番」(1985年録音)でトゥビンがスゥエーデンに亡命後の1946年に完成している。全3楽章から構成され演奏時間約30分を要する交響曲で彼の祖国エストニアの民謡もテーマとして用いられている。特に第2楽章「アンダンテ」は祖国へのノスタルジーを思わせる旋律美がうっとりとさせられる。