私のレコード・ライブラリーから

私のレコード/CDコレクション紹介

イタリアの名匠ーヴィクトル・デ・サーバタ

2010-11-30 19:28:57 | 声楽曲
 
 イタリアはトリエステ出身のヴィクトル・デ・サーバタ(Victor de Sabata/1892~1967)はトスカニーニの後を継いで1930年から1953年まで「ミラノ・スカラ座」の音楽監督を務めまた自身も作曲家として注目されていた。しかしながら1953年に病気で倒れてからは指揮活動からその第一線を退いたため彼のLPレコード録音の数は少ない。
 今日取り上げるミラノ・スカラ座管弦楽団ほかによる写真上のヴェルディ「レクイエム」(1954年/EMI)と写真下のプッチーニの歌劇「トスカ」全曲録音(1953年/EMI)は彼が遺したレコード録音の中でもとりわけ評価が高い名盤として知られている。いずれもモノラル録音だが録音から半世紀以上が経過した現在においてもこの演奏を聴けば彼が大指揮者であったことが頷ける。前者の「レクイエム」は独唱者にソプラノ=エリザベート・シュワルツコップ、メゾ・ソプラノ=オラリア・ドミンゲス、テノール=ジュゼッペ・ディ・ステファノ、バス=チェザレ・シェピという当時申し分のない名歌手をそろえてスタジオ録音されたものである。また後者の「トスカ」は彼が病気で倒れる相前後してマリア・カラスと録音したもので彼の気迫がこもった力演でマリオ役のディ・ステファノも艶やかな声も素晴らしい。尚。写真下のLPはオリジナルのモノラル録音を電気的にステレオ化したものである。(イタリア盤)

パリ管弦楽団、1970年初来日公演

2010-11-29 21:46:35 | 想い出の演奏会
 ショパンの「ピアノ協奏曲第1番」をワイセンベルクのピアノ、スクロヴァチェフスキー指揮パリ音楽院管弦楽団によるレコード(写真/国内盤東芝ーAA8350)で聴きながらふと「パリ管弦楽団」の1970年初来日公演を思い出した。すでに紹介ずみだがつい2ヶ月前にもパリの「サル・プレイエル」で新音楽監督パーヴォ・ヤルヴィによる「パリ管2010-11年シーズン」の開幕演奏会(シベリウス/クレルヴォ交響曲ほか)を聴いてきたばかりだが筆者はこのオーケストラの管楽器群に特に魅力を感じている。
 さて1970年初来日公演だが筆者は4月24日の東京文化会館の演奏に足を運んだ。指揮者には当時常任指揮者を務めていたセルジュ・ボドと客演指揮者として当時45歳の若きジョルジュ・プレートルの2人が同行した。24日はセルジュ・ボドが指揮、ブルガリア出身の名ピアニスト、アレクシス・ワイセンベルクをソリストに迎え演奏されたこのショパンの協奏曲が懐かしく思い起こされた。この時41歳のワイセンベルクもこのレコード演奏と同様にスケール感のあるダイナミックなショパンを聴かせてくれたことが印象的だった。プログラム後半にはバルトークの「オケコン」が演奏された。またコンサート終了後のアンコールもたっぷりとビゼーの「アルルの女」組曲から「ファランドール」などフランスものを中心に数多くの小品が披露された。今となってはこれらの一つ一つは思い出せないが非常に満喫したコンサートだったことを覚えている。


(1970年パリ管弦楽団初来日公演プログラム)

J.ランスロ&J.F.パイヤールのモーツアルト「クラリネット協奏曲」

2010-11-28 17:17:24 | 協奏曲
 モーツアルトの「クラリネット協奏曲イ長調K.622」は彼の友人でクラリネットの名手アントン・シュタードラーのために書いた最後の協奏曲作品である。LPレコード時代の名盤には1954年(モノラル)のウラッハ盤を筆頭に数多くの名録音があるが筆者が一番好きな演奏は写真のランスロ盤(1963年ステレオ/日本コロムビアOS-420-R)である。このLPが国内で発売されたのもかれこれ今から半世紀近く前に遡る。現在ではもちろんCD化され名盤としての誉れも高い。ソリストのジャック・ランスロ(Jacques Lancelot/1920~2009)はフランスの名手でこのジャン・フランソワ・パイヤールとのコンビによるこの録音は明快なモーツアルトを聴かせている。このレコードに針を下ろすたびに爽快な気分にさせてくれる。
 ところで先日もこのパイヤール室内管弦楽団の前身にあたるパイヤールと「ジャン・マリー・ルクレール合奏団」による「フルートとハープのための協奏曲K.299」(フルート/ランパル、ハープ/ラスキーヌ)をとりあげた際も同じような事を書いたかも知れないがフランス系の奏者による演奏はなぜかモーツアルトの波長に見事にマッチしているのではないかと思うくらいである。因みにこのLPの第1面にはパイヤル室内管弦楽団改名後その同メンバーによる「フルートとハープ」の再録音(1963年)が収録されておりこちらも「人気ベスト3」に入る不滅の名盤である。

超個性的なクナのベートーヴェン/交響曲第5番

2010-11-27 12:44:09 | 交響曲
 ハンス・クナッパーツブッシュ(Hans Knappertsbusch/1888~1965)のベートーヴェン/交響曲第5番の演奏もかなり個性的で興味深い。彼はこの「第5番」のスタジオ録音は遺しておらず1956年のベルリン・フィル盤(セブンシーズ)他数種のライヴ盤があるのみである。今日紹介する写真のCDは1997年にフランス、「ターラ」から世界初リリースされたものでクナらしい一クセも二クセもある非常に個性的な「第5番」である。(仏TAHRA-TAH213)
 この録音は彼が1962年3月20日、当時の「ヘッセン放送交響楽団(現在、hr交響楽団)」に客演したコンサート・ライヴ盤(モノラル)で当日前半に演奏されたハイドンの「交響曲第88番ト長調」も収録されている。この「第5番」、演奏時間の総トータルが「第4楽章」前半の繰り返しをせずに実に40分を超える超遅い演奏でもある。筆者のコレクションの「第5」の演奏ではフリッチャイ/ベルリン・フィル(DG盤)が同条件で40分弱の演奏なのでそれを上回るもので数ある「第5」のCDの中でも最長の演奏時間ではないだろうか(?)先のベルリン・フィル盤(1956年ライヴ)とは全く演奏スタイルが異なりまるで別人が振っているかのようである。特に終楽章の極端なテンポの遅さ、ここぞと言わんばかりのアクセントをつけた演奏等々、興味がつきない。そんな観点からも演奏終了後の聴衆の拍手がカットされているのがちょっと残念である。


FMエア・チェック コレクションから セルジウ・チェリビダッケ

2010-11-25 23:33:25 | FMエア・チェック
 今日は久しぶりに「FMエア・チェック」オープン・テープからその昔日本では「幻の指揮者」とも言われていたセルジウ・チェリビダッケを取り上げてみたいと思う。彼がその「幻」のベールをぬいだのは1977年10月「読売日本交響楽団」に客演した時だった。筆者も当時会場の東京文化会館に足を運び彼の演奏を興味津々に聴いた。
 今回紹介するテープは「NHKFM」で1981年2月16日に放送された彼が1979年まで首席指揮者を務めていた「シュトゥットガルト放送交響楽団」のコンサート・ライヴからチャイコフスキー交響曲第5番ホ短調作品64とリムスキー=コルサコフの交響組曲「シェエラザード」作品35である。2曲とも名曲中の名曲であるがチェリビダッケが振ると実にユニークな演奏スタイルになる。チャイコフスキーの極端に遅いテンポで始まる第一楽章、ピアニシモの微妙なニュアンス等々興味がつきない。第4楽章フィナーレの盛り上げ方も彼らしく独特である。また「シェエラザード」も一癖ある特異な演奏だがリムスキー=コルサコフの絶妙な管弦楽法を見事に聴かせたものになっている。コンサート・マスターのソロ・ヴァイオリンも美しく響く。(尚、チャイコフスキー/1980年2月23日、リムスキー=コルサコフ/1980年2月29日、シュトゥットガルト、ベートーヴェン・ザールに於ける演奏)

 

アルヘンタ/セント・ソリ管弦楽団の名盤から

2010-11-24 17:41:36 | 交響曲

 アタウルフォ・アルヘンタ(Ataulfo Argenta/1913~1958)は20世紀のスペインを代表する名指揮者だったが惜しくも45歳で一酸化炭素中毒による不慮の事故で亡くなったため生涯に彼が遺した録音はそれほど多くない。過去にも彼の貴重なライヴ録音盤等を紹介したことがあるが今日は最晩年のスタジオ録音から筆者が好きな演奏を1枚取り上げてみたい。
 写真のLP盤は彼が1957年11月、世を去るわずか2ヶ月前にパリで録音されたシューベルトの交響曲第8番(当盤ジャケット表記は第9番)ハ長調「ザ・グレート」である。管弦楽は「パリ・セント・ソリ管弦楽団(THE CENTO SOLI ORCHESTRA OF PARIS)」である。因みにこのオーケストラの実体は当時の「パリ音楽院管弦楽団」や「コンセール・ラムルー管弦楽団」等々のメンバーにより臨時に構成された楽団とのことである。写真は「米Omega DiskーOSL12」だがオリジナル原盤は「仏ーClub Français du disque」で管弦楽は仏語表記で「L'Orchestre des Cento Soli」となっている。録音はオリジナル・ステレオでかなり良好なのがありがたい。この演奏を聴いても彼のオーケストラ指揮者としての実力を充分にはかり知ることができる名演だ。また余談ながら筆者は未聴だが彼は同時に同楽団と第7番(当時は第8番)「未完成」もステレオ録音している。(LP/米Omega Disk-70)


ギュンター・ヴァントの思い出

2010-11-23 10:30:16 | 想い出の演奏会
 巨匠ギュンター・ヴァント(Günter Wand/1912~2002)の名前が日本のクラシック音楽ファンの間に広く知れ渡ったのはそう昔のことではなかった。筆者の記憶ではおそらく1990年前後の頃からだったと思う。彼の初来日は確か1968年に読売日本交響楽団に客演した時だったのではないか(?)その後はNHK交響楽団の定期公演に1979年、82年、83年とNHK交響楽団の定期に登場している。筆者も彼がこの時振ったブルックナーの交響曲「第5番」、「第4番」、そして83年の「第8番」の演奏は鮮明に記憶している。特に「第8番」は凄かった。しかしこの当時でも絶大な人気とは言い難かった。そして彼は1990年11月、手兵北ドイツ放送交響楽団を伴って来日した。(ポーランドの作曲家でもあるクシシトフ・ペンデレツキも指揮者として同行)筆者はこの時もヴァントが振るブルックナーの「第8」を会場に足を運び聴いた。彼の指揮は歳をとるごとにその演奏に深みを増し魅力的だった。ちょうどこの頃から彼の日本での人気も高まってきたと思われる。彼ほど晩年になればなるほど人気が出る指揮者も珍しかった。
 そして極め付きは最晩年の2000年11月の同オーケストラとの再来日公演である。この時88歳を迎えた彼が来日公演を果たしたことは誰もが想像だにしなかったであろう。公演は東京オペラ・シティーコンサート・ホールでの3日間のみであったが想像も絶するほどの爆発的な人気ぶりだった。この時のプログラム、シューベルト「交響曲第7番」とブルックナー「交響曲第9番」の演奏は「神がかり的」で言葉に表現できないほどの名演だった。幸いなことに映像も収録されDVD/CD化(BMG)されており当時を振り返ることとができる不滅の名盤でもある。
 最後に筆者にとってもう一つ忘れることができないできない演奏が写真のCD、彼のラスト・コンサートライヴ盤である。この演奏は亡くなる1年前の2001年10月に「北ドイツ放送響」と本境地ハンブルクの「ムジークハレ」で収録されたライヴである。収録曲はブルックナー「交響曲第4番」とシューベルト「交響曲第5番」でボーナス・トラックにスイスのヴァント邸で収録されたインタビュー(ドイツ語)も収録されている。演奏もさることながら最晩年の音楽に身を捧げる彼の心境が聴け貴重なドキュメントである。(写真/ヴァント・ラスト・レコーディング/BMG-2CD74321 93041 2)
 


SLドキュメンタリー録音ー国内編から「蒸気機関車の旅情」

2010-11-21 21:26:07 | ドキュメンタリー録音
 先日、「SLドキュメンタリー・レコードコレクション」から「雷鳴下の蒸気機関車」(海外編ーアメリカ)を紹介させていただいたが今日は国内編から筆者の愛聴盤を1枚取り上げてみたい。写真のLPレコードも今から40年以上も前に「ビクター」からリリースされたものである。タイトルは「音でつづる風物詩~蒸気機関車の旅情」で「四季ー春夏秋冬」を走り続ける風情あるSLの一コマ一コマを綴った「音のアルバム」である。
 内容は1958年から1968年の10年余りにかけて日本各地で収録されたSLたちと人々のドラマである。この中でとりわけ筆者が特に気に入った録音は「龍ヶ森にあえぐハチロク」と題された「花輪線」の勾配が最もきつい龍ヶ森をあえぎながら8620形(通称ハチロク)が牽く貨物列車が小雨と遠雷が鳴る中走り続けるドラマチックなシーンを見事に捉えた夏の一コマの録音である。凄まじい落雷の音も見事に捉えられさらなる効果もあげている。まさに「日本版ー雷鳴下の蒸気機関車」である。もう一つは1960年(昭和35年)10月に収録された「みちのくに旅立つ特急はつかり」を収録した上野駅での一コマである。当時の常盤線の電化区間はまだ「取出」までだった。青森行きの常磐線回りのこの特急列車も出発の上野駅から「C62」が牽いていた。上野駅での出発のアナウンス、プラットホームの見送りの人々の声、発車のベル、汽笛等々どれもが哀愁を誘う。この12月4日には「新青森」まで新幹線も開通し東京ー新青森間も最短3時間20分で結ばれる。因みに当時は特急でも約12時間の長旅だった。(写真/ビクターSJV1083/ステレオ録音)

カラヤン&エッシェンバッハ - ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第1番」

2010-11-20 02:01:30 | ヘルベルト・フォン・カラヤン
 カラヤンのベートーヴェン/ピアノ協奏曲第1番ハ長調作品15の初録音は写真の当時まだ26歳の新進のピアニスト、クリストフ・・エッシェンバッハ(管弦楽/ベルリン・フィル)とのものだった。これは彼が1965年の「クララ・ハスキルコンクール」で優勝した翌年(1966年)に行われている。当初はレコード・ジャケット右下の①の数字が物語るように全集録音がされる予定があったらしい。結局その計画も「幻」に終わってしまったのが残念であるがこの「第1番」の演奏は実に素晴らしい。カラヤンの指揮とエッシェンバッハのピアノが冴え渡りフレッシュな「第1番」に仕上がっている。第1楽章のカデンツァもベートーヴェン自身が書いた3種の中の一番長い(129小節)ものを用い演奏効果を高めている。
 カラヤンはその後ワイセンベルクと1970年代に「全集録音」をEMIに遺しているが「第1番」に限って言えば私はこの「エッシェンバッハ盤(DG)」をとりたい。ところでカラヤンは「第1番」を実際のコンサートでプログラムに取り上げたことがあるのだろうか?他の4つの協奏曲はもちろんコンサートでも演奏されているがこの「第1番」は筆者が知る限りではその記録が見当たらない。
 


ライナーのベートーヴェン交響曲録音

2010-11-18 22:45:28 | 交響曲
 ハンガリーの首都ブダペスト生まれの名指揮者フリッツ・ライナー(Fritz Reiner/1888~1963)も筆者が中学校時代からよくレコードで慣れ親しんだ指揮者の一人である。彼は1920年代から活働の拠点をアメリカに移しシンシナティ交響楽団の常任指揮者を皮切りにして戦前はピッツバーグ交響楽団の音楽監督も務めていた。とは言え彼の「黄金時代」はやはり戦後の「シカゴ交響楽団音楽監督時代」(1953年~1961年)であろう。この時代に「米RCA」に録音されたものには以前に紹介済みのR.シュトラウスの作品をはじめとして名盤を数多く遺している。今回スポットを当てるベートーヴェンの交響曲のレコードは発売当時日本ではそれほどの人気は出なかったが今改めて聴いてみると意外にスケールが大きく重量感のあるベートーヴェンを聴かせている。
 彼は残念ながら「全集録音」を完成しなかった名匠の一人であったがシカゴ交響楽団とはステレオ録音で「第1番」・「第5番」・「第6番」・「第7番」・「第9番」(米RCA)を遺している。またモノラル録音ながら「第3番」もある。とりわけ「第9番」(1961年録音)はまさにライナーらしい職人的演奏で第4楽章の壮大な迫力は魅力的である。尚、写真の「第9番」のLPは1970年代に再リリースされたものでオリジナル盤と同様「第1番」がカップリングされた2LPである。(米RCA盤ーLSC6096)