私のレコード・ライブラリーから

私のレコード/CDコレクション紹介

チョン・ミョンフン、メシアン「彼方の閃光」

2012-11-16 10:47:22 | 現代音楽

 チョン・ミョンフンは晩年のオリヴィエ・メシアン(Olivier Messiaen/1908~1992)と親交があり厚い信頼も得て彼の作品を「バスティーユ・オペラ」音楽監督時代に代表作「トゥーランガリラ交響曲」をはじめいくつかをレコーディングしている。この「彼方の閃光」はメシアンが最後に完成した管弦楽作品といわれている。11の楽章から構成され先の「トゥーランガリラ」と並び演奏時間約1時間を要する大曲である。因みに作品は「ニューヨーク・フィルハーモニック」創立150年を記念して委嘱されたものである。録音は1993年10月、「バスティーユ・オペラハウス」で行われた。ジャケットのサインはチョン・ミョンフン来日の際に入れてもらったもの。(ドイツ・グラモフォン/439929-2 1994年発売)

 

 


ペーター・エトヴェシュ - 「zeroPoints」 ほか

2012-07-05 18:01:27 | 現代音楽

 ペーター・エトヴェシュ(1944~  )は日本ではまだ「知る人ぞ知る」ルーマニア出身の現代作曲家、指揮者である。 今からもう十数年前だったと思うが彼が指揮する自作の「zeroPoints(ゼロポインツ)」のCD(写真)に目が留まり思わず購入してしまった。しかもベートーヴェン「交響曲第5番」とのユニークな組み合わせである。

 管弦楽も「zeroPoints」がスウェーデンの「エーテボリ交響楽団」、ベートーヴェンが現代音楽アンサンブルー「アンサンブル・モデルン」と云うところに興味がわいた。またこのCDが普段耳にしないハンガリーの「ブダペスト・ミュージック・センター・レコード」(BMC)というレーベルで発売されていることにも注目した。(写真/BMC CD 063) CDの解説には詳細な録音年月日の記載がないのだがおそらく2000年頃の録音かと推定できる。

 さて肝心な演奏の方は最初に収録された「zeroPoints」は1999年に発表された9つの構成から成る演奏時間も約13分の管弦楽のための小品だが打楽器群と金管群が凄まじく活躍する無調の作品でその刺激が聴き手を興奮に導く。何でも解説によればこの作品はピエール・ブーレーズと「ロンドン交響楽団」からの委嘱作品とのことである。 一方、ベートーヴェン「交響曲第5番ハ短調」はこの名曲を「アンサンブル・モデルン」がいかに演奏するかに期待した。この団体は1980年に「ユンゲ・ドイチェ・フィル」のメンバーにより結成れた20人前後の編成によるアンサンブルである。さすが「第5番」はCDを聴くとこれに各パートに他から人員を増強し演奏されたものと推測できる。したがって小編成の室内楽的な演奏ではなくサウンドは「大管弦楽」による演奏と大差はなかった。 ただ「第3楽章」の「トリオ」反復並びに「第4楽章」前半部の反復を実行しているところなどは面白い。余談ながらこの「第5番」の録音は会場のノイズからこの「アンサンブル」が本拠を置くフランクフルト・アム・マインの「ヘッセン放送協会大ホール」におけるライヴではないかと思われる。(?)

 


芥川 也寸志/「交響管弦楽のための音楽」ほか

2011-09-01 01:02:29 | 現代音楽

 筆者が芥川 也寸志の傑作、「交響管弦楽のための音楽」に魅せられたのはだいぶ以前に「NHK」テレビ番組で戦後初来日外国オーケストラ第1号となったアメリカの「シンフォニー・オブ・ジ・エアー」と「NHK交響楽団」との合同演奏会の貴重な映像を見たときからである。記録によればこの合同公演は1955年5月23日「後楽園球場特設ステージ」で行われている。コンサートは「第一部」が「シンフォニー・オブ・ジ・エアー」単独の演奏、「第二部」に「N響」が加わり合同演奏でソーア・ジョンソン指揮でこの作品が演奏されている。因みにの第二部のフィナーレを飾った作品はウォルター・ヘンドルの指揮でベートーヴェン「交響曲第5番ハ短調」であった。
 「交響管弦楽のための音楽」は二つの楽章から構成される演奏時間10分足らずの小品だが1950年「NHK放送25周年記念管弦楽懸賞」応募作品で特賞に輝いた芥川の出世作でもあった。明快な旋律とともに歯切れの良いリズム感覚がとても魅力的である。とりわけ筆者が好きな演奏は写真のLPーこれは1960年代に発売された森 正指揮「東京交響楽団」によるものでもう一つ「弦楽のための三楽章<トリプティーク>」(1953年)も収録されている。こちらはタイトルの通り「弦楽合奏」のみで演奏される作品で「トリプティーク(TRIPTYQUE)」とはフランス語で「3枚続きの絵画」を意味する。3つの楽章ー「急ー緩ー急」で構成され「第2楽章ーアンダンテ」の「子守唄」では楽器本体を手で叩く「ノック・ザ・ボディ奏法」(Knock the body)が用いることにより粋な日本情緒を感じさせる。
 尚、このレコードの第1面には黛 敏郎の「饗宴」と「フォノロジー・サンフォニーク(交響的韻律学)」が収録されていることも付け加えておきたい。
 (写真/「日本現代作曲家シリーズ」東芝TA-8029/ステレオ)

 

ジョン・ケージの”音の庭”-「龍安寺」(1983-85)

2011-07-26 17:42:29 | 現代音楽

 「龍安寺」ー現在は世界文化遺産に登録されている「石庭」で知られる京都の禅寺である。筆者も今から半世紀近く前に中学校の修学旅行で初めてこの寺を訪れた。創建は1450年で有名な枯山水の「石庭」は室町時代末期に優れた禅僧たちによって作られたと言われている。アメリカの前衛音楽家として名高いジョン・ケージ(John Cage/1912~1992)がこの「龍安寺」に最初に足を運んだ年は1962年のことだった。
 彼がこの禅寺の「石庭」からインスピレーションを受け後に音響表現として作曲にとりかかったのが本日紹介する「龍安寺」である。写真のCDの解説によれば当初彼はこの作品を「エッチング」によるグラフィックからスタートしたとのことである。龍安寺の「石庭」は幅22m、奥行き10mのスペースに白砂を敷き15個の石を一見無造作な感じに5箇所に点在させたシンプルな庭だがそこには日本人が持つ「心」が直感的に感じられる不思議な魅力がある。ケージはこの作品の作曲過程にも偶然性がかかわる独自の「チャンス・オペレーション」を導入した。楽器編成はフルート、オーボエ、トロンボーン、コントラバス、パーカッション、それにヴォーカルという6人の「室内楽編成」である。
 このCD録音は1995年6月22日、ベルリンの「芸術アカデミー」でデジタル・ライヴ録音されている。演奏時間60分余りを要する大曲だが「ヴォーカル」が唱える「詩経」が何か無気味さも感じさせ夏の夜に一人耳を傾けるのもなかなか味わい深いものがある。因みに写真のCDは1996年にスイスのレーベル「HAT HUT RECORDS」からリリースされたものである。(hat ART CD6183)

 

ハイティンク/コンセルトヘボウの武満 徹「ノヴェンバー・ステップス」

2011-01-28 18:21:55 | 現代音楽

 武満 徹の傑作「ノヴェンバー・ステップス」の代表盤と言えばやはりこの作品の世界初演を指揮した小澤征爾盤2種(トロント響/サイトウ・キネン、いずれも琵琶=鶴田錦史/尺八=横山勝也)ということになろう。因みに前者が1967年録音、後者が1991年録音である。しかし筆者にはもう一つ忘れることができない同曲の好きなレコードがある。それは写真のベルナルト・ハイティンク指揮/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団によるものである。(写真/国内初出盤/フィリップスSFX7779/1970年発売)同様に琵琶、尺八のソロは同じく鶴田錦史、横山勝也の両名があたっている。やはりこの二人はこの作品を演奏するにあたり欠かすことのできない存在であった。
 ところでこの録音セッションには作曲者の武満も立ち会っおり「コンセルトヘボウ」における実際のコンサートのゲネ・プロで行われたと言われている。このLP盤の記録によれば録音年月日は1969年12月17日から19日となっている。録音状態も大変素晴らしくゲネ・プロ録音ということもあり緊張感が漂うコンサート・ライヴそのものの雰囲気を感じさせられる。しかもこの録音が初めての外国人指揮者によるものだった。その観点からしても大変記念すべきレコードでもあったわけである。そしてここでも琵琶、尺八の鶴田・横山両氏のまさに息の合ったソロの掛け合いが見事に光っている。
 尚、レコード第2面には時のフランス文化相アンドレ・マルローの委嘱による1964年のメシアンの作品「されば われ 死者のよみがえるを 待ち望む」が収録されている。

小澤征爾、トロント響音楽監督時代の名盤 - 武満 徹作品集

2010-02-28 06:40:18 | 現代音楽
 昨日に続きもう1枚、若き小澤がトロント交響楽団の音楽監督時代にレコーディングした武満 徹の傑作「ノヴェンバー・ステップス第1番」ほかを収録した写真のLPを取り上げてみたい。彼と武満 徹の音楽作品との取り組みは深くコンサートや録音も数多く手がけているがこのトロント響とのRCAへの録音は最初期の名盤として輝いている。
 このLPは1975年に再発売されたRCA-SX2749の国内盤であるが初出盤は同時期に録音されたメシアンの大作「ツゥーランガリラ交響曲」との2枚組みでリリースされていた。写真のLPには作曲家「武満 徹」の名前を一躍世界に轟かせた「ノヴェンバー・ステップス第1番」の他、同第2番「グリーン」、ピアノと管弦楽のための「アステリズム」の3曲が収録されている。いずれも1967年から68年にかけて作曲された作品で武満の中期の代表作である。「ノヴェンバー・ステップス第1番」の琵琶ー鶴田錦史、尺八ー横山勝也はこの作品の世界初演者(1967年11月/小澤征爾、ニューヨーク・フィルハーモニック)でもあり以来この作品の演奏には欠かせない存在となった。
 尚、小澤は同コンビで「サイトウ・キネン・オーケストラ」とも1989年9月にベルリンの「イエス・キリスト教会」でフィリップスにレコーディングしておりこちらも味わい深い演奏が聴ける。
 
 

若き小澤の名盤ー武満 徹「カシオペア」/石井 眞木/「遭遇Ⅱ」

2010-02-27 02:08:10 | 現代音楽
 今日は若き小澤征爾が日本フィル他とレコーディングした現代音楽の名盤を紹介したい。
写真のLPは1972年度の「レコード・アカデミー賞」受賞(特別部門/日本人作品)した1枚で武満 徹(1930~1996)「独奏打楽器とオーケストラのためのカシオペア」(独奏打楽器/ツトム・ヤマシタ)、石井眞木(1936~2003)「雅楽とオーケストラのための遭遇Ⅱ」の2曲をおさめたものである。レコーディングは1971年6月22日・24日の2日間で当時の「杉並公会堂」(東京/荻窪)で英国EMIのレコーディング・プロデューサー/ミキサーによって行われた。
 「カシオペア」は「ラヴィニア・フェスティバル」(シカゴ郊外のラヴィニアで開催される音楽祭)委嘱作品で名打楽器奏者ツトム・ヤマシタのために書かれた作品で初演は1971年7月8日「ラヴィニア音楽祭」で小澤征爾/シカゴ交響楽団、独奏打楽器、ツトム・ヤマシタの演奏で行われた。タイトルの「カシオペア」は「W」形をした星座からとられているがそれは独奏打楽器を中心とした各楽器群の配置に関係している。作曲者武満はこの作品に「聴覚」と「視覚」-つまり「聴く」と同時に舞台を「見る」効果もねらったようだ。
 一方、石井眞木の「遭遇Ⅱ」はタイトルからオーケストラと「雅楽」の遭遇を試みた作品でその異質の響きはなんとも不思議な相乗効果がこの作品の魅力なのかも知れない。因みに前作の「遭遇Ⅰ」(1970年)「尺八」と「ピアノ」の遭遇であった。
(写真のLPは1972年国内初出盤ー東芝音楽工業AA8872)