筆者が芥川 也寸志の傑作、「交響管弦楽のための音楽」に魅せられたのはだいぶ以前に「NHK」テレビ番組で戦後初来日外国オーケストラ第1号となったアメリカの「シンフォニー・オブ・ジ・エアー」と「NHK交響楽団」との合同演奏会の貴重な映像を見たときからである。記録によればこの合同公演は1955年5月23日「後楽園球場特設ステージ」で行われている。コンサートは「第一部」が「シンフォニー・オブ・ジ・エアー」単独の演奏、「第二部」に「N響」が加わり合同演奏でソーア・ジョンソン指揮でこの作品が演奏されている。因みにの第二部のフィナーレを飾った作品はウォルター・ヘンドルの指揮でベートーヴェン「交響曲第5番ハ短調」であった。
「交響管弦楽のための音楽」は二つの楽章から構成される演奏時間10分足らずの小品だが1950年「NHK放送25周年記念管弦楽懸賞」応募作品で特賞に輝いた芥川の出世作でもあった。明快な旋律とともに歯切れの良いリズム感覚がとても魅力的である。とりわけ筆者が好きな演奏は写真のLPーこれは1960年代に発売された森 正指揮「東京交響楽団」によるものでもう一つ「弦楽のための三楽章<トリプティーク>」(1953年)も収録されている。こちらはタイトルの通り「弦楽合奏」のみで演奏される作品で「トリプティーク(TRIPTYQUE)」とはフランス語で「3枚続きの絵画」を意味する。3つの楽章ー「急ー緩ー急」で構成され「第2楽章ーアンダンテ」の「子守唄」では楽器本体を手で叩く「ノック・ザ・ボディ奏法」(Knock the body)が用いることにより粋な日本情緒を感じさせる。
尚、このレコードの第1面には黛 敏郎の「饗宴」と「フォノロジー・サンフォニーク(交響的韻律学)」が収録されていることも付け加えておきたい。
(写真/「日本現代作曲家シリーズ」東芝TA-8029/ステレオ)