私のレコード・ライブラリーから

私のレコード/CDコレクション紹介

ハンス・ロット「交響曲第1番ホ長調」

2012-03-31 19:00:30 | 交響曲

(国内盤BMG/BVCE-38080,2005年発売)

 ハンス・ロット(Hans Rott/1858~1884)はブルックナー門下の将来有望視された作曲家だった。彼は1878年音楽院卒業時のコンクールに「交響曲第1番」の「第1楽章」を提出したところ師ブルックナー以外の審査員たちはこの作品を受け入れることをしなかった。しかしその後彼は1880年にこの作品を全4楽章構成の演奏時間約55分余りを要する大交響曲に完成させた。

 ウィーン音楽院の同期生マーラーも彼の才能を高く評価したが世間の反応は冷たかった。彼は指揮者ハンス・リヒターや大作曲家ブラームスにかけあいこの大作の演奏を試みたが失敗に終わり大きなショックを受けたようである。そしてそれも原因となり彼はついに発狂し精神病院に収容されてしまう。精神異常がもとで何度か自殺まで企てる。1884年、彼は結核により25歳の若さで他界した。

 短い生涯に彼は20数曲の作品を書き遺したがその草稿は現在ウィーンの国立図書館に保管されている。因みにこの「第1番」の交響曲が全曲世界初演されたのは1989年3月、ゲルハルト・ザムエル指揮シンシナティ・フィによる演奏であった。写真のCD、セバスチャン・ヴァイグレ指揮ミュンヘン放送管弦楽団による演奏は2003~04年のスタジオ録音で他に「管弦楽のための前奏曲」(1870)、「ジュリアス・シーザー」への前奏曲(1878)も収録されこの二つはこれが世界初録音とされている。最近ではこの「第1番」をパーヴォ・ヤルヴィがフランクフル放送響と録音したとのことでこちらも聴いてみたいところである。

 

 


ポリーニ、ベーム&ウィーン・フィル 「モーツアルト/ピアノ協奏曲第19番・第23番」

2012-03-30 11:06:41 | 協奏曲

 先日、「1977年ザルツブルク音楽祭」におけるライヴ、ポリーニのベーム&ウィーン・フィルによるモーツアルト「ピアノ協奏曲第23番」(FMエア・チェック)を取り上げたが写真のLPはこのコンビのセッション録音である。(国内盤DG/MG-1038、1976年録音)「第23番」のほかに「第19番」も収録されている。因みにこの録音がポリーニ初のモーツアルトの「協奏曲」のレコードだった。

 レコードのポリーニもべームと息のあった颯爽としたモーツアルトを聴かせている。当然のことながらバックの「ウィーン・フィル」の優美なアンサンブルも素晴らしい。特に「第19番」は「第23番」に比べてコンサートで演奏される機会が少ないためレコード録音等で接する機会が多いがなかでもこの演奏はベームの風格とともにふたりの気品を感じとれる名演だと思う。

 ところで「第19番ヘ長調K.459」は1784年にモーツアルト自身のコンサートのために書いた作品だが後の1790年に神聖ローマ帝国皇帝「レオポルトⅡ世」のフランクフルト・アムマインにおける「戴冠式」で有名な「第26番ニ長調K.537」と共に演奏されている。


カラヤン&フィルハーモニア - ベートーヴェン/交響曲第5番(国内初出盤)

2012-03-27 11:46:47 | ヘルベルト・フォン・カラヤン

 今日は懐かしいカラヤン&フィルハーモニア管弦楽団の「ベートーヴェン交響曲第5番」と第二面の余白にシュヴァルツコップとの歌劇「フィデリオ」から「悪者よどこへ急ぐ」・「来たれ希望よ」の2曲が収録された国内初出LPを取り上げてみたい。(XL5117)

 カラヤンは1951年から55年にかけて「フィルハーモニア管弦楽団」と初のベートーヴェン交響曲全曲録音を行った。このうち「第8番」(1955年録音)はオリジナル・ステレオで収録された。この「第5番」は1954年11月のモノラル録音で後のベルリン・フィルとのステレオ盤のような流線型のカラヤン・スタイルでの演奏とはまた違うドイツ的な香りが漂う1枚である。

 またカラヤンのレコーディング記録を見ると前年1953年8にも同コンビによるこの「第5番」のセッションがあるようだがこの音源は用いられず未発表のままになっている。余白に収録されたシュヴァルツコップとの「アリア」の録音は1954年9月20日(ウォトフォード、タウン・ホール)の記録になっているが当日カラヤンはベルリンでのフルトヴェングラー&ベルリン・フィルの最後の演奏会に立ち会っていたという話もある。

 

 


FMエア・チェック - ヤコフ・クライツベルクの「エロイカ」

2012-03-24 13:33:49 | FMエア・チェック

 ロシア出身のヤコフ・クライツベルク(Yakov Kreizberg)はこれからがさらに期待される指揮者のひとりだったが昨年3月、51歳の若さで亡くなった。筆者は彼が2004年にウィーン交響楽団」と来日したときのことを思い起こした。彼のレパートリーは古典作品から現代作品にいたるまで多彩な持ち主だったがなかでも個人的に特に印象にのこるFMエア・チェック・ライヴ演奏が今日紹介したいベートーヴェン交響曲第3番「エロイカ」である。

 この演奏は彼の「ベルリン・コーミッシェ・オーパー(Komiche Oper Berlin)」の音楽監督時代のものでこのオペラ・ハウスのオーケストラ(ベルリン・コーミッシェオーパー管弦楽団)) を振った1997年10月16日、「コーミッシェ・オーパー」におけるコンサート・ライヴである。演奏はいたってオーソドックス・スタイルだが「第1楽章」の主提示部の反復も丁寧に実行するなどじっくりとこの大曲を聴かせている。またこのオーケストラのレコード録音自体もそれほど多くないので貴重な記録でもある。

(写真=コーミッシェオーパー、ベルリン)

 

 

 

 

 


FMエア・チェック、ベーム晩年のザルツブルク音楽祭ライヴから

2012-03-21 19:45:36 | FMエア・チェック

 現在、1970年代、80年代の「FMエ・チェック」オープン・テープの「CD-R」保存整理を進行中だがこれが結構手間隙かかる作業なので気が向いた時に一気に進めるようにしている。今日は最近整理したカール・ベーム&ウィーン・フィルの1977年、78年の「ザルツブルク祝祭音楽祭」ライヴから二点を取り上げてみたい。

 先ず1977年のコンサートからマウリツィオ・ポリーニをソリストに迎えたモーツアルトのピアノ協奏曲第23番イ長調K,488である。これは「祝祭大劇場」における8月17日のライヴ録音でこの日のメイン・プロ、ブルックナー交響曲第7番の前半に演奏されたものである。レコード録音はその前年にすでにこの組み合わせで行われており確か「第19番ヘ長調K.459」とのカップリングでリリースされた。(DG)今回の整理にあたりじっくりとこのライヴ演奏を聴いてみたがやはり二人の息があった優美なモーツアルトが楽しめた。ライヴ演奏ならではの会場の雰囲気も感じとれこれもライヴの魅力の一つと云えるだろう。

 もう一つは1978年のコンサートからベームにとっては大変珍しいプログラムでドヴォルザークの交響曲第9番ホ短調作品95「新世界から」である。これは8月6日の「祝祭大劇場」におけるライヴでベームはこれまでドヴォルザークの作品をほとんどコンサートでも取り上げることがなかったのでこの演奏は大変貴重なライヴ録音でもある。因みに彼はこのコンサートの約3ヶ月前に「ムジークフェラインザール」でこの作品の初の公式レコード録音を終えたばかりだった。(管弦楽/ウィーン・フィル)このLP(ドイツ・グラモフォン/写真下)については以前に紹介ずみと思うがこの実演はレコード以上に私には鋭い迫力を感じる「新世界」だった。

(ベーム&ウィーン・フィルの初の公式録音となったドヴォルザーク/1978年5月録音)

 

 


「グスタフ・シュマール」の芸術

2012-03-20 12:14:25 | 器楽曲

 

今日紹介するLPも昨日に続き旧東独の「エテルナ」レーベルからの1枚でる。グスタフ・シュマール(Gustav Schmahl/1929~2003)はかつて旧東独を中心に活躍したヴァイオリンの名手であった。彼の録音はこの「エテルナ」に名盤が遺されているがこの写真のレーガー、ヒンデンミット、ストラヴィンスキーの作品を収録したアルバムも彼の魅力が充分にうかがい知ることができる。

 収録された作品はレーガー「前奏曲とフーガ イ短調」(1902/無伴奏)、ヒンデミット「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ作品31-1」(1924)、ストラヴィンスキー「ヴァイオリンとピアノのための協奏的二重奏曲」(1932)の3曲で普段はレコード、CDでしか耳にすることがない作品である。このLPもそんな興味もあり大昔にドイツで求めたものである。またストラヴィンスキーの「二重奏曲」でピアノを弾いているのはシュマールと同年代の東独出身の名ピアニスト「ギュンター・コーツ(Gunter Kootz/1929~  )である。このレコードでも二人の息の合った演奏が聴きものである。録音年代の記載がないので正確な録音年月は不明だがステレオ録音ということから推察すると1960年代後半ごろと思われる。録音も大変良好である。 (写真/ETERNA-825936 ステレオ)

 

 

 

 

 


シフ、ヘルシャー、ツァハリアス - マズア&ゲヴァントハウスのベートーヴェン「トリプル・コンツェルト」

2012-03-19 19:12:06 | 協奏曲

 今日紹介したいLP、ベートーヴェンの「ピアノ、ヴァイオリン、チェロのための三重協奏曲」はクルト・マズアのライプツィヒ・ゲヴァントハウス時代の旧東独「エテルナ」レーベルの1枚である。(写真/ETERNA-729169)
 これはソリストにピアノ=クリスティアン・ツァハリアス、ヴァイオリン=ウルフ・ヘルシャー、チェロ=ハインリヒ・シフを迎え「ベルリンの壁崩壊前」1984年のデジタル録音であった。またLPも「ダイレクト・メタル・マスタリング」によるもので音質も大変良好である。ところでこの録音、当時日本ではそれほど話題にはならなかったと記憶しているがマズアの録音の中でもこの時代のものは特に良いのではないかと私自身は思っている。「ゲヴァントハウス」のオーケストラが結構しなやかな音で聴ける録音も珍しい。LP第二面にはヘルシャーによるベートーヴェンの二つの「ロマンス」-ト長調とヘ長調が収録されているがこちらも素晴らしい。
 尚、マズア&ゲヴァントハウスはその後東西ドイツ統一後の1992年にこの「トリプル・コンツェルト」を「ボザール・トリオ」と「フィリップス」に再録音している。
 

イヴァン・ドレニコフのラフマニノフ「ピアノ協奏曲第4番」ほか

2012-03-18 12:37:03 | 協奏曲

 筆者は1980年頃一時ブルガリアの国営レーベル「バルカントン・レコード」に興味を持ち何枚か収集したことがあった。写真のイヴァン・ドレニコフのラフマニノフの「ピアノ協奏曲第4番ト短調作品40」ほか収録されたLPもその中の1枚である。当時、東欧の演奏家のほとんどはまだレコードを通じて知ることが多かった。今日紹介するブルガリアの名ピアニスト、イヴァン・ドレニコフ(Ivan Drenikov)もその一人である。
 このレコードに収録されたラフマニノフの「第4番」の協奏曲は有名な「第2番」、「第3番」に比べればコンサートで演奏される機会は少ないが聴き込めば聴き込むほどその魅力が伝わる作品だと思う。作品は彼が亡命する前にスケッチされていたが完成は亡命後の1926年だがその後も何度か改訂が重ねられその最終稿が出版されたのは1944年のことだった。このドレニコフの演奏もラフマニノフの技巧的で幻想的な旋律を実にうまくかもしだしている。指揮はフランスのジャン=ピエール・ヴァレーズ、管弦楽は「ブルガリア国立放送交響楽団」である。尚、レコード第2面には同じくラフマニノフの作品23の「10の前奏曲」から「第6番変ホ長調」、作品32の「13の前奏曲」から「第1番ハ長調」・第6番ヘ短調」・「第9番イ長調」・「第10番ロ短調」・「第12番嬰ト短調」の計6曲が収録されている。(写真/BALKANTON BCA11050/ステレオ)
 尚、現在ではこの「バルカントン」も民営化されている。

「ルネッサンスの音楽」

2012-03-16 13:01:58 | その他

 今日は普段めったに針をおろすことがないジャンルのレコードから写真の1枚を取り上げてみたい。このLPは「Musique de la Renaissance」(ルネッサンスの音楽)と題された2枚組みのアルバムで私がかれこれ40年近く前にフランスのロワール河流域に数多く点在する古城を訪れた際、シュノンソー城の売店で求めたものと記憶している。因みにシュノンソー城はロワール河支流シェール川にまたがって建つ何代にも渡り女性が城主として君臨した優美な城である。
 一般に「ルネッサンスの音楽」とはロワール河流域に建てれた数々の城とほぼ同時期15世紀から16世紀にかけて作曲されたポリフォニー技法の音楽である。これらの作品は当時城の中庭などで宮廷の行事や娯楽のために演奏されていたと思われる。このアルバムには16世紀に活躍したフランスのクロード・ジェルヴェーズ(Claude Gervaise)の作品を中心にイタリアのジローラモ・ファンティニ(Girolamo Fantini)やジョヴァンニ・ピエルルイージ・ダ・パレストリーナ(Giovanni Pierluigi da Palestrina)などの作品も収録されている。たまには時代をイメージしながらこのジャンルの音楽に耳を傾けてみることも悪くない。
 演奏は「ピエール・ドゥヴヴェイ古楽器アンサンブル」(ENSEMBLE D'INSTRUMENTS ANCIENS PIERRE DEVEVEY),パリ国立オペラ座金管アンサンブル(ENSEMBLE DE CUIVRES DU TEATRE NATIONAL DE L'OPERA DE PARIS)ほかによるもので録音年代は不明だが1960年前後のものと推定される。ジャケット・デザインには見事なシンメントリーで建築されたロワール最大の城 -「シャンボール城」を絵画が用いられている。(仏ーCONTREPOINTーCV25012)

「ジュリアード弦楽四重奏団」のステレオ初期録音名盤から

2012-03-12 19:35:24 | 室内楽曲

 写真のLPは1971年に「ジュリアード弦楽四重奏団名演集」(全5巻」として「RCA」の懐かしい「RED Seal」で発売されたうちの1枚である。(国内盤ーSRA2756)レコードにはこの四重奏団が得意とする分野でもる「新ウィーン楽派」のアルバン・ベルクとアントン・ウェーベルンの作品が3つ収められている。録音はいずれも1959年で「ジュリアード四重奏団」の初期ステレオ名盤として誉れが高い。
 レコード第1面にベルク「弦楽四重奏のための<抒情組曲>」、第2面にウェーベルン「弦楽四重奏のための5つの楽章」作品5と「弦楽四重奏のための6つのバガテル」作品9が収録されている。今日久しぶりに針をおろしたが彼らの完璧なアンサンブルと見事な表現力に圧倒された。この「四重奏団」の結成は確か戦後間もない1946年だったと思うがこの録音は第一ヴァイオリンのロバート・マンとヴィオラのラファエル・ヒリヤーの二人が結成当時からのメンバーで第二ヴァイオリンは1958年より参加のイシドーア・コーエン、チェロには1955年より参加のラウス・アダムによって行われている。尚、現在ではこの名演もCD化されており気軽に楽しむことができる。