私のレコード・ライブラリーから

私のレコード/CDコレクション紹介

ハスキル・ラスト・レコーディング、モーツアルト2つの短調協奏曲

2009-01-31 05:14:37 | 協奏曲
 ルーマニアの名女流ピアニスト、クララ・ハスキル(Clara Haskil/1895~1960)の生涯最後の録音となったレコードがこのモーツアルト2つの短調ピアノ協奏曲第20番と第24番である。(写真/日フィリップスSFX7518)因みに第20番K.466がニ短調、第24番K.491がハ短調である。共演は鬼才イゴール・マルケヴィッチ指揮コンセール・ラムルー管弦楽団であった。記録によればこの録音は1960年11月14日から18日にかけてパリで行われている。ハスキルはこの年の12月7日にブラッセルで亡くなったため死の約1ヶ月弱前の録音ということになる。
 彼女のモーツアルトの演奏には昔から定評がありこのLPを聴くとそれが自然に伝わってくる見事な演奏だといつも感じる。彼女のどちらかと言えば飾り気のないストレートな演奏が心地よい。おそらくこの録音は後世に残る名盤のひとつとして語り継がれていくことだろう。
 それから私のもう一つの愛聴盤ーモノラルだがDG録音の第19番ヘ長調K.459(共演ベルリン・フィル/1955年録音)、第27番変ロ長調K.595(共演バイエルン国立管/1957年録音)いずれも指揮はフェレンツ・フリッチャイのCD盤も付け加えておきたい。

叙情感豊かなムター&カラヤン/ベルリン・フィルのメンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲ホ短調

2009-01-30 11:06:00 | 協奏曲
 昨日に続き今日もメンデルスゾーンの作品を取り上げてみたい。曲は古今東西のヴァイオリン協奏曲の傑作のひとつに数えられるホ短調の協奏曲である。名曲だけに大変数多くのCD、レコードが存在するが私のコレクションの中で好きな演奏はアンネ=ゾフィー・ムターの叙情豊かな感性が伝わるカラヤン/ベルリン・フィルとの1980年録音のCD盤(写真)である。
 当時17歳の少女とは想像できないほどの完成度の高いムターの演奏には驚嘆させられる。カラヤンの指揮もムターの弾きぶりに合わせじっくりと比較的テンポを抑えて彼女のヴァイオリンの魅力をたっぷりと引き出しているところが素晴らしい。特に第2楽章アンダンテの甘い優美な旋律をムターは繊細な感覚をもって聴かせている。後世に残る名盤の1枚になるだろう。カップリングされているブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番も好演だ。
 尚、カラヤンにとってはこれが唯一のメンデルスゾーンとブルッフのヴァイオリン協奏曲の録音となったことも付け加えておきたい。

ペーター・マークの名演!メンデルスゾーン交響曲第3番「スコットランド」

2009-01-29 20:26:49 | 交響曲
 地味な存在ではあったがわが国でも日本フィルや東京都交響楽団にも客演したこともある名指揮者ペーター・マーク(Peter Maag/1919-2001)がロンドン交響楽団と録音したLP(写真/英デッカSXL2246)メンデルスゾーン交響曲第3番イ短調作品56「スコットランド」・序曲「フィンガルの洞窟」は私の愛聴盤の1枚でもある。約半世紀前の1960年の録音だがさすが英デッカ録音だけあり今聴いてもその音質の素晴らしさは変わらない。メンデルスゾーンの優美な旋律がマークの棒でみずみずしく伝わる名盤である。
 この交響曲はメンデルスゾーンが33歳、1842年に完成し3月3日に作曲者自身の指揮、ライプチッヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団で初演されている。メンデルスゾーンは1835年から亡くなる1847年までこのライプチッヒを活動の拠点とし現在は「メンデルスゾーン・ハウス」に貴重な資料や遺品が展示されている。私も数年前に訪問し彼の偉大な足跡をかいまみることができた。
 ところでこの作品は彼の5つの交響曲作品の中では最後を飾る作品でもある。第4番イ長調「イタリア」作品90、第5番ニ短調「宗教改革」作品107は楽譜の出版が作曲者の死後になったためである。作品は彼が20歳のころ初めてスコットランド地方を旅した印象を音楽にしたものだが第1楽章の冒頭の物悲しい旋律はエジンバラのホリルードの古城を見て16世紀にあった殺害事件を思いながら浮かんだ旋律と言われている。指揮者ペーター・マークはこの冒頭部を実にうまく感情をこめてオーケストラをうたわせているところが何ともいえない。
 カップリングされた序曲「フィンガルの洞窟」作品26もスコットランドのヘブリディース諸島へ旅したときの印象を描写した音楽だが一説によれば洞窟のあるスタッファ島にはメンデルゾーン自身は船酔いのため上陸しなかったそうだ??
 



フリッチャイの鋭敏なスタンスが光る「シンフォニア・エロイカ」

2009-01-28 04:43:11 | 交響曲
 このLPレコードもその昔フランスの田舎町のレコード店で求めた1枚である。曲はベートーヴェンの交響曲第3番変ホ長調作品55「英雄」、指揮はフェレンツ・フリッチャイが1958年にベルリン・フィルと入れたドイツ・グラモフォン/フランス盤である。この作品は1803年~04年にかけて作曲されベートーヴェンの交響曲作品で最後の第9番に次ぐ長大なものだ。当初はナポレオンに献呈するはずだったが彼が1804年にフランス皇帝に即位したためベートーヴェンは彼も単なる権力者だったと失望し急遽、献呈を取りやめ「シンフォニア・エロイカ(英雄交響曲)」としたことはあまりにも有名なエピソードである。結局作品はウィーンのロプコヴィッツ侯爵に献呈された。またこの第3交響曲から作品規模も一気に拡大し彼の中期の傑作交響曲作品が生まれることになる。
 このフリッチャイの演奏はじっくりと聴き手に迫ってくる演奏で特に第2楽章「葬送行進曲ーMarcia funebre」、終楽章の盛り上がりは大変すばらしい。録音もステレオ初期にしては音質も良好で彼の第5番(1961年録音/ベルリン・フィル)と並ぶ名演であると思う。
 
 

ライン河畔への転居により生まれたシューマン:交響曲第3番

2009-01-27 09:13:30 | 交響曲
 1850年、ロベルト・シューマン(1810~1856)は古都ドレスデンからライン河畔の町デュッセルドルフに転居した。この地のオーケストラ・合唱団の指揮者の仕事につくためである。その時に作曲されたのがこの交響曲第3番変ホ長調作品97「ライン」であった。曲は全5楽章から構成されており彼の交響曲作品の最後を飾った名曲でもある。
 私のこの作品のコレクションもカラヤン、バーンスタイン、クレンペラー、セル・・・と多いのだがこの3番に関してはチェコ出身の巨匠ラファエル・クーベリック(1914~1996)がベルリン・フィルと1964年に全集録音した1枚が一番好きである。特に第4楽章、作曲者シューマンがケルンの大聖堂に深い感銘を受けた印象を表現したと言われおりその「荘厳さ」がひしひしと伝わってくる深い味わいを覚える。写真のLPは今から37,8年前に私が学生時代に初めてヨーロッパ周遊旅行に出かけたおりパリのレコード店で購入したドイツ・グラモフォンのフランス盤で当時の日本ではまだ珍しかった。見開きの頑丈なジャケットで綴じしろの部分は布張りになっている。ライン河の絵もなかなか趣きがある。
 また、クーベリックはこの後、バイエルン放送交響楽団と70年代後半にも全集録音を完成している。1965年・75年にはこのオーケストラと来日をし名演を聴かせてくれた。さらに1990年来日の折にはチェコ・フィルとスメタナの連作交響詩「わが祖国」全曲演奏し話題を呼んだことは忘れられない。

ミシェル・ベロフのドビュッシー「前奏曲集」第1巻・第2巻を聴く

2009-01-26 22:00:05 | 器楽曲
 今日はドビュッシー(Claude Debussy/1882~1918)の印象主義を地でいく「前奏曲集第1巻・第2巻」全24曲をミシェル・ベロフ(Michel Béroff)若き日の録音(1970年/EMI盤)で聴いてみた。さすがに1967年弱冠17歳でメシアン・コンクールで優勝経歴の持主だけあり魅力ある演奏だ。これだけ色彩感豊かな音色でかもし出すドビュッシーの世界はすばらしい。第1巻では第7曲「西風がみたもの(Ce qu'a vu le vent d'ouest)」・第8曲有名な「亜麻色の髪の乙女(La fille aux cheveux de lin)・第10曲幻想的な「沈める寺(La cathédrale engloutie」、第2巻では第2曲「枯葉(Feuilles mortes)」・第10曲異国情緒もにわかに感じる「エジプトの壷(Canope)」・第12曲パリ祭の花火を描写したという「花火(Feux d'artfice)」などは特に彼の鋭い感性がうかがえる演奏である。この作品の「不滅の名盤」の一つにこれからも数えられるであろう。
 尚、彼は1995年ー96年にこの「前奏曲集」を再録音しているが私は今回とりあげた彼のドビュッシーのレコード・デビューとも言えるこのEMI盤に愛着を一段と強く感じている。





白熱ライヴ! フルトヴェングラー戦後復帰ベルリン・フィル演奏会

2009-01-25 13:10:30 | 歴史的名盤
 ウィルヘルム・フルトヴェングラー(1886~1954)のナチ問題が解決し彼の「非ナチ化宣言」が公表されたのは戦後2年が経過した1947年4月のことであった。このレコード(チェトラ原盤)は戦後彼がベルリン・フィルの指揮台に立った最初の公演ライヴである。彼の復帰公演は1947年5月25日・26日・27日・29日の4日間、当時連合軍占領下のベルリン・ステーグリッツ地区にあった「ティタニア・パラスト」という映画館(記録によれば2,072席を有する)で開催された。当然チケットは瞬く間に完売されたと言われる伝説の公演である。
 プログラムはオール・ベートーヴェン。名曲中の名曲、演奏順に「エグモント」序曲作品84、交響曲第6番ヘ長調作品68、交響曲第5番ハ短調作品67であった。このLP2枚組には公演初日の後半2曲が収録され聴衆の興奮した拍手も収められている。第5番の第3楽章から第4楽章へ突入するアッタカ部分の緊張感とコーダのアッチェランドをかける演奏ぶりはライヴのフルトヴェングラーそのものだろう。録音状態は決して良好とは言いがたいが当時の白熱的ライヴを充分に伝える貴重なドキュメントである。
 尚、ドイツ・グラモフォンにもこの時の演奏記録のレコードがあるがこちらは第3日目の27日の模様を収録している。収録曲目は「エグモント」序曲と交響曲第5番の2曲で聴衆の拍手はカットされている。こちらの方はチェトラ盤よりも録音状態は良好で第5番の第4楽章コーダも若干ながらアッチェランドを抑えた演奏だ。また「エグモント」序曲も冒頭出だし部分の極端な遅さから主部でテンポ・アップしていくところが興味深い。いずれにせよこの2種類のレコードで当時の演奏会の全3曲が揃うことになる。

演奏時間最長記録! 上岡敏之のブルックナー第7番

2009-01-24 20:06:41 | 交響曲
 これまでのブルックナー交響曲第7番ホ長調の最長演奏時間記録は1992年、37年ぶりにベルリン・フィルの指揮台に立ったセルジゥ・チェリビダッケの演奏89分50秒だった。この時の演奏会の模様はNHKBSとFMで放送されたのでお聴きになった方も多いと思う。ところが今回これを上回る91分44秒という現在世界最長の演奏時間と思われる上岡敏之指揮ヴッパータール交響楽団のCD(2枚組)が2007年にTDKレーベルからリリースされた。これはこのオーケストラの2007/08年シーズンの開幕コンサートのライヴ収録である。
 とにかくどっしりと重量感のあるブルックナーである。第1楽章:28分43秒第2楽章33分33秒とこの2つの楽章でなんと62分16秒ーテンポの速い指揮者なら全4楽章が終わってしまう長さである。特に第2楽章のアダージョは聴き応え充分だ。遅いテンポの演奏が好きな私にとってはたまらない。
 ちょうどこの年(2007年)の10月、私は彼の凱旋帰国公演が開催されたので横浜みなとみらい大ホールに足を運んだ。演奏曲目はモーツアルト:ピアノ協奏曲第23番イ長調K.488(本人の指揮とピアノ)とこのブルックナーの第7番である。私はバック・ステージ席でプログラム後半の演奏ー彼の92分余りの指揮ぶりに圧倒された。とにかく全身全霊をかけた第7番であった。こんな体験はもう2度とできないかも知れない。私にとっては充分満足のいく演奏会だった。マエストロ上岡は演奏会終了後疲れたそぶりも見せず会場ロビーで集まったファン約100人余りにサインに応じていた。私もその一人なのだがー写真はその時入れてもらったこの第7番のCDである。
 最後に余談だがドイツ・ヴッパータール(Wuppertal)は大聖堂で有名なケルンから約60km北にある都市で巨匠ハンス・クナッパーツブッシュの生まれ故郷かつてのエルバーフェルトとバルメンが1929年に合併した都市である。

シルヴェストリ/パリ音楽院管弦楽団のこれまた個性豊かな「幻想」

2009-01-23 01:33:52 | 交響曲
 私の最初(2008/11-6)のブログにスペインの鬼才アルヘンタ指揮パリ音楽院管弦楽団のひとくせあるベルリオーズ「幻想交響曲」を紹介したが、今日はまた個性豊かなルーマニアの名指揮者コンスタンティン・シルヴェストリが同管弦楽団を指揮したLP(写真/日本初出盤東芝音楽工業ASC5099)を取り上げてみたい。
 指揮者シルヴェストリについては以前チャイコフスキー/「マンフレッド交響曲」コレクションでもふれたとおり大編成のオーケストラを色彩豊かに鳴らすことが巧みであった。このレコード演奏も例外ではない。録音時期もアルヘンタとほぼ同年代(1957年前後)と思われる。アルヘンタのように極端にスリリングな演奏ではないが第2楽章「舞踏会」の美しい弦の響き、第3楽章「野の風景」の管楽器の柔らかい響きと雷を表現するティンパニーの迫力は申し分ない。第4楽章「断頭台への行進」の反復は省略しているが抑揚がきいたシルヴェストリならではの個性が発揮されている。終楽章もベルリオーズの色彩豊かな管弦楽法を見事に描きだしている。同じオーケストラの演奏なのだがアルヘンタ盤とは違ったグロテスク感を味わえる。また、このレコードに針をおろすたびに当時の東芝レコードが開発した「エバークリーン・レコード」赤盤が懐かしい。
 

お気に入りの「コンサート・ホール盤」のLPから

2009-01-22 13:21:30 | 交響曲
 その昔まだ私が学生時代の頃(1960年代~70年代初頭)世界最大とも言われた「コンサートホール・ソサエティ」と呼ばれる通信販売専門のレコード・クラブが存在した。かなりの数のLP盤を世に送り出したと思われるが当時あまりレコード・ジャーナリズムに載らないアーティストも多数含まれていたためかどちらかと言えばマイナー的存在だったかも知れない。でもその当時のレギュラーLP盤が2,000円前後だったからステレオ盤で1,350円という価格は学生の私にとっては魅力的だった。今日はその「コンサートホール盤」から私のお気に入りの2枚のLP盤を紹介してみたい。(写真)
 それは1963年度と1965年度フランスA.C.C.国際ディスク大賞を受賞したカール・シュリーヒトのブラームス交響曲第4番ホ短調作品98・悲劇的序曲作品81-バイエルン放送交響楽団(1963年度大賞)とブルックナー交響曲第7番ーハーグ・レジデンティ管弦楽団(1965年大賞)のレコードである。
 前者ブラームス交響曲第4番は地味な演奏ながら聴きこむにつれてしみじみと渋みを感じさせる演奏ー枯淡の境地になるところがいい。また後者のブルックナーの傑作第7番、私が最初に購入した第7番がこのLPだった。どちらかと言えば遅めのテンポを好む私だがこの演奏は全く正反対である。鋭角的な切り口で第1楽章から押し進めていくところがいかにもシューリヒトらしい。平たく言えば素朴で飾りけのないブルックナーを聴かせている。使用楽譜の版の記載はないが第2楽章のクライマックスでハース原典版では除かれているシンバル、ティンパニーの打楽器群を加えている。最後に余談だがこの2枚のLPジャケットのデザインにも魅力を感じる私である。