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「隠れ待機児童」は厚労省の公表値の約2倍、政府の見通しは甘過ぎる - 利己的な有権者にも責任あり

2015-08-19 | いとすぎから見るこの社会-少子化問題
安倍政権や厚労省は、待機児童解消へ向けて努力しているかのように
国民に対しアピールすることだけには熱心だが、
両者とも「次元が低い」ので貧弱な政策しか打ち出せていない。

待機児童の公表値はよく言われるように過少推計であり、
共同通信の調査によれば実態としてはその2倍近い数値である。

つまり、政権や厚労省は問題を矮小化して自己の努力や実績を
あたかも大したものであるかのように吹聴することに熱心なのだ。

当ウェブログで何度も指摘しているように、
族議員が跋扈している自民党に真の待機児童対策は不可能であり、
既存事業者と癒着に近い関係にある厚労省も同様である。

彼らは、最重要の財源問題を全く解決していないに等しく、
保育士の劣悪待遇を完全無視して議員歳費や年功賃金を受け取っている。
冷淡酷薄で自己中心的な彼らの歪んだ心根を正すために、
保育士と同程度の賃金にでもしてやらないと目が覚めないらしい。

また、利権を握っている既存事業者の抵抗を排して、
補助金をバウチャーに転換し、育児関連費用を税控除の対象にすべきである。
保育士に給付付き税額控除を適用し、離職率の高い事業者への補助をカットすべきである。
どうしてその程度のことすらできないのか。低能と言うより他にあるまい。

「出生数の向上は確実に内需を押し上げる。
 女性就労率の引き上げは間違いなくGDPを高める。
 待機児童の解消と女性労働者増加こそ確実な成長政策である。
 国家財政と社会保障財政が同時に改善する一石二鳥策でもある」

「本当に経済を理解しているのであれば、
 現金給付ではなくバウチャー等の現物給付を支持し、
 費用対効果を測定するよう政府に要求する筈である。
 実質的な所得制限も、行政コストの低い所得税の引き上げで対処する筈だ」

「デンマークでは保育ママでも年収400万円を超える(手取りは低い)。
 先進国とは思えないほど貧困率の高い日本の母子家庭も、
 北欧なら働いて自立し子供に高等教育を受けさせられる。
 どちらの国が賢く、どちらの国が利己的であるかは明白だ」

「但し、育児関連分野の伸張には公費投入が欠かせない。
 高齢者3経費のほんの数分の一程度の予算であっても効果がある」

「高額年金への課税と預貯金課税、退職金控除の縮小により所得移転を行い、
 高コストで融通がきかない公立保育所(利権化している)ではなく
 認証保育所で使えるバウチャーと保育士の給付付き税額控除に予算を集中させるべきだ」

と以前から当ウェブログが指摘した状況は、全く改善していない。

▽ 我が国の育児関連分野で問題が生じる最大の理由は、異常に高齢層に偏った社会保障給付である

『低欲望社会 「大志なき時代」の新・国富論』(大前研一,小学館)


また、現役世代にも責任の一端があることは認識しなければならない。

「育児支援予算の増額が世論に支持されにくいのは、
 受益者が少数派である上に、実はその受益者が「真のコスト」を負担していない
 フリーライダーが多いからである。(だから非受益者に敵視される)」

「例えば、公立保育所の利用者の殆どは、支払う保育料を大幅に越える公費を受け取っている
 北欧ではあり得ないフリーライダー(負担が少なく、受益が超過している)となってしまっている」

「国民負担率の低い我が国において、育児関連予算の増額は
 小金持ちや独身者、富裕高齢層にとっては間違いなく負担増、
 可処分所得の低下に直結するのである」

「困難なナローパスを突破するには、富裕高齢層の給付大幅カットや
 公務員・準公務員の50代以降の一律賃金フラット化、
 退職金の優遇税制の原則廃止といったピンポイントで財源を確保する政策技巧が必要だ。
 (間接税引き上げの2%~3%を育児支援に向けるという方策もあるが医療界と高齢層が全力で反対するだろう)」

「いずれも確実に1兆円以上の財源になるが、既得権勢力の抵抗が凄まじくなる。
 日本よりも賢くて合理的な「先進国」北欧であれば至極当然のことだが、
 自分の損得しか考えていない我利我利亡者はそれすら理解する能力がないのだ」

「古市氏は予算の問題を全く理解していない。
 先進国で2.0前後の高出生率を維持している国は、アメリカという特殊な例外を除き
 日本よりも税・社会保険料負担が重く、その代わりに手厚い育児支援を受けられる。
 日本のように国民負担が低い社会では、まともな育児支援はできない」

「それとも移民社会アメリカのように移民や高校生を安く使って
 ベビーシッターとして雇う社会を望んでいるのだろうか?」

「いかに保育園を義務教育化しても母親のストレスはなくならないし、
 そのためには膨大な公費が必要になるから独身女性・高齢女性は激怒して罵り始めるだろう。
 また、子供を預けることへの抵抗感は社会制度とは別の次元にある」

出生率を引き上げ、女性就労を増やして日本経済を真に活性化するには、
一般国民の協力が絶対に必要である。
我が国の1000兆円を超える巨額の金融資産は、この社会の未来のためにこそ使わねばならない。
そうしなければインフレ税で減価するのを待つだけになる。だから選択の余地はない。

 ↓ 参考

前年比6%を超える「高成長分野」、学童保育市場はなおも拡大中 - 育児支援こそ真の成長政策だ
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/7795a14dc055136025d1e70ab22c33c1

前年比50%増の驚異的な成長市場 - 急拡大する学童保育、開業前の定員オーバーや「待機児童」も
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/11bdd3ba21c010e4d0079ff9748df108

前年比8.1%増の急成長市場が日本にあった! - 中国やインドにも負けない高成長分野が目の前に
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/92f2ecac903ca2e23cca11c921f17e47

▽ 「先進国」デンマークは次元の低い安倍政権や厚労省と違い、出生率のV字急回復を成し遂げた



『消費税25%で世界一幸せな国デンマークの暮らし』(ケンジ・ステファン・スズキ,角川SCC)


待機児童、昨春比13%減…「ゼロ」遠く(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/20150703-OYT1T50118.html
”認可保育所に入れない待機児童の数が多かった全国の市区町村(101か所)で、昨年春と比べて待機児童が約13%減ったことが読売新聞の調査でわかった。
 4月に始まった「子ども・子育て支援新制度」に向けて、各自治体が保育サービスを拡充した結果とみられるが、6割の自治体が待機児童解消を阻む課題に「保育士が集まらない」ことを挙げた
 政府は2017年度中に待機児童をゼロにする目標を掲げているが、達成するには今後、待機児童の減少ペースを大幅に上げる必要がありそうだ。
 調査は今年5月、14年4月1日時点での待機児童(厚生労働省調べ)が多かった上位100位までの市区町村を対象に実施。99~101位が同数のため、101市区町村に聞いた。
 その結果、待機児童数は計1万4981人と昨春と比べて13%減っていた。
〔中略〕
 「待機児童ゼロ」を達成したのは、相模原市(昨春の待機児童数93人)、大津市(同69人)、川崎市(同62人)、宮城県登米市(同57人)の4市だった。”

これが表向きの待機児童数である。
(因にこれは読売の誤報で、実際は11%とより低い数値だった)
「大本営発表」によれば、改善しているように見えるが、
露骨に政権寄りのメディア報道でも「待機児童ゼロ」が難しいことは認めざるを得ないのだ。


隠れ待機児童1万3千人 自治体集計に含まれず(共同通信)
http://www.47news.jp/CN/201507/CN2015071101001322.html
認可保育所に入れない待機児童数が昨春多かった98市区町村で、「保護者が育児休業中」などを理由に集計されていない「隠れ待機児童」が4月1日現在、少なくとも約1万3千人に上ることが11日、共同通信の調査で分かった。こうした児童の数を明らかにしていない自治体もあり、さらに増える可能性がある。
 自治体が待機児童として集計したのは約1万5千人(昨年4月から11%減)。ほぼ同規模の潜在的な保育需要が表面化した形で、国や自治体は実態に即したきめ細かな対策が求められそうだ。
 調査は、昨年4月時点の待機児童が50人以上だった20都道府県の98市区町村が対象。”

この共同通信の数値の方がより実態に近い。
メディア報道としては読売の大敗、共同通信の勝利である。
読売記者は、「さらに増える可能性がある」との鋭い指摘を見習うべきであろう。


待機児童が減らぬ理由 保育園のブラック化や住民の開園反対も(NEWSポストセブン)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150714-00000009-pseven-soci
”埼玉県所沢市で4月から始まった「育休退園制度」が物議をかもしている。第2子が生まれて育休を取ると、保育園に通っている上の子は退園しなければいけないという制度だ。
 育休退園制度の導入理由となった待機児童は1990年代から社会問題になり、いまだ深刻なままだ。2014年4月の時点で、保育園の定員は234万人で、待機児童数は2万1371人。
〔中略〕
 なぜ、待機児童問題は解決しないのか。まず挙げられる理由は共働き夫婦の増加だ。1986年の男女雇用機会均等法施行以降、経済状況の悪化やライフスタイルの変化などで、働く母親が急増した。
「保育園の定員も増えていますが、共働き世帯の子供の入所希望者がそれを上回る規模で増えています。国は40万人の受け皿を用意すれば2年後に待機児童が解消すると予測していますが、見通しが甘すぎるのでは」(待機児童の問題に詳しいジャーナリストの猪熊弘子さん)
 また、保育士不足も理由に挙げられる。厚生労働省は2017年度末までに約7万人分の保育士が不足すると試算している。昨年12月の保育士有効求人倍率は全国平均で2.06倍、東京で5.37倍と圧倒的な売り手市場だ。猪熊さんはその理由として彼らの待遇の悪さを指摘する。
「保育士の平均月収は21万円で、全産業の平均と比べると約9万円も低い。認可外保育所では月給14万円程度のところもあります」
(猪熊さん)
 給料が低い一方、仕事はハードだ。
「親が働く時間がどんどん長くなるのに応えて、朝7時から夜10時半まで預かる保育園もあるほどです。正規職員の割合もどんどん減っています。長時間勤務で“ブラック企業化”しているところも少なくありません」(猪熊さん)
 実際、保育士の資格がありながら保育士として就職しない“潜在保育士”は、全国で70万人以上いるという
 そして、保育園建設場所の確保の困難さも解決を妨げる理由のひとつだ。2014年4月時点で待機児童数が全国で最も多い東京・世田谷区では昨年、地域住民の反対で、認可保育園の開園が遅れるという騒動があった。
「待機児童解消」を掲げる世田谷区の保坂展人区長が言う。
「世田谷区では長い間、子供の数が減る一方でしたが、現在は5才以下の子供が毎年1000人ずつ増えています。区では公務員住宅の跡地などに保育園の建設を進めています。しかし子供の声のない静かな環境が長く続いたので、騒音が心配だという声があがり、事業者が建設を躊躇するケースがあります。近隣住民のかたには粘り強く理解を求めていきたい」
 これは世田谷だけの問題ではない、と猪熊さんが言う。
杉並区や大田区でも、住民の反対で保育園の開園が延期されました。開園法人が行政と共に丁寧に説明して住民の理解を得ないといけません」”

この週刊誌報道もなかなか力が入っている。
ただ、待機児童増加の背景として「女性の高学歴化」「女性雇用の需要増」を挙げていないのが残念だ。
保育士の待遇の問題も数字を挙げて指摘しており、良い記事である。

ただ、給付付き税額控除の適用に触れていないこと、
労働環境の改善ができない事業者を淘汰する仕組みを考えていないこと、
住民の反対よりも(この問題は恐らく、保育所に一定の広さの庭を求めるから生じた問題である)
最も重要な財源の問題に触れていないことは不満が残る。

配偶者控除を原則廃止して育児関連のバウチャーにするだけでも大きな効果があり、
更に言えば一部の者の利権と化している高額年金や退職金の控除を縮小する方法もある。
地方公務員の賃金カーブをフラットにして中小企業の実態に近づける方法もある。
(それを育児支援に移転したら区民は拍手喝采だろう)もっと知恵を使うべきではなかろうか。
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