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会計検査院、個人開業医の所得税およそ32億円分が優遇し過ぎと指摘 - 経費を超える控除を問題視

2011-10-31 | いとすぎから見るこの社会-格差の拡大
一般に日本の医療関係者は政策への批判意識が強く
政府や官庁、行政を敵視する人が少なくない。

過酷な勤務に苦しむ勤務医も多いので心情は理解できるが、
医療界そのものに改善すべき面が多々あるという事実を
頑として認めようとしないのは理解できない。

例えば自由開業・自由標榜のような特権は多くの欧州国には存在しない。
多くの医療関係者が賞賛する英国は日本より情報開示義務が厳しい。
(医療アクセスが劣悪なのも有名な事実である)
ドイツに至っては開業医への夜間・休日診療の義務づけ等の規制が多い。

▽ こちらに詳しく書いてある

『失われた「医療先進国」』(岩本聡,講談社)


更に、医学部で経済や財政を殆ど学んでいないため、
医療予算がいくらでも出てくるように誤解しているふしがある。
優秀で真面目な方が多いのに、何故かその誤りを自覚できない。

北原茂実氏は80年代から予算不足による医療崩壊を予想されたそうだが、
残念ながらそのように聡明な医師は極めて例外的である。

▽ なぜ予算不足になるのか分からなければ、こちらを

『「病院」がトヨタを超える日 医療は日本を救う輸出産業になる!』


個人的に最も問題だと考えているのは、
欧州並みの医療予算を求める医療関係者の多くが
欧州並みの税負担も必要なことを理解していない点である。
これは民主主義国の有権者としては致命的だ。

↓ 以前、このエントリーをアップした時と全く状況が変わらない

医療予算をOECD加盟国平均並みにしたいなら、負担もOECD平均水準が必要-経済リテラシーの欠如
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/cd4c3425d006dc6dfc83ce7f363406dd

「少子高齢化に伴う医療財政の逼迫にも備えが全くなく、
 巨額の国債利払いに政府財政が圧迫されている現状に無関心な人が
 多いのは信じられません。本当にぞっとします。

 もし日本の医療関係者が医療予算の増額を求めるなら
 自らの所得税率の引き上げを申し出る以外にあり得ません。

 医療従事者の賃金はこのデフレの下でも高止まりしています。
 医師で5~6%、看護師で2~3%程度なら充分に負担可能です。
 医療予算に充当するよう政府と交渉すべきです。

 税率を抑えたまま国民皆保険を維持しようとした怠慢が
 今の政府債務累増を招いた「A級戦犯」のひとつです」


一般の有権者を説得して医療予算を増やすためには
医療界の高い倫理水準が絶対必要なのだが、
そうとは言えない事例が散見されるのも事実である。

医師優遇税制:経費上回る控除 総額32億円を軽減(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/science/news/m20111029k0000m040146000c.html

”医療保険の診療報酬が5000万円以下の医師と歯科医師を対象にした優遇制度で、
 08~09年に延べ約1650人の所得税計約32億円が軽減されたことが会計検
 査院の調査で分かった。小規模医療機関が経費を把握する事務作業を軽減するのが
 目的の制度だが、実際には多くの人が経費を把握していることも判明。保険外診療
 も含めると年収が1億円を超える人もおり、検査院は「税負担の公平性の観点から
 問題」として財務省と厚生労働省に見直しを求めた。
 この制度は、対象となる個人経営の医師や歯科医師に対し、収入に応じ57~72
 %の4段階の経費率を設定して概算の経費を算出し、実際の経費にかかわらず一律
 控除する。
 関係者によると、検査院は08~09年に制度の適用を受けた全国の医師や歯科医
 師延べ約1900人を抽出、うち実際の経費を把握できた約1650人を調査した。
 ほとんどの人は制度の経費率で算出した控除額が実際の経費を上回り、その差額が
 1000万円を超える人が約300人もいた。調査対象者が納めた所得税はこの2
 年間で計約40億円だったが、検査院は制度がなければ約72億円だったと算出し
 た。

 さらに、保険が適用されない自由診療の報酬も合わせると、年収が5000万円を
 超える人が約300人おり、うち数人は1億円を超えていた
。検査院は「控除額と
 実際の経費に大きな差があり問題だ。高額な収入のある開業医や歯科医は医療機関
 として規模も大きく、制度の趣旨にあわない」と指摘。財務省と厚労省は「指摘を
 真摯(しんし)に受け止め適切な対応を検討したい」としている。【桐野耕一】”

 → 率直に言って、赤字に悩む管理職の医師や
   人手不足で苦しんでいる勤務医の方々は
   この手の問題にもっと怒るべきではないか。


診療報酬詐欺容疑、病院長を逮捕=総額4000万以上か―警視庁(時事通信)
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011062000532

”虚偽の診療報酬明細書を提出して診療報酬をだまし取ったとして、警視庁杉並署は
 20日までに、詐欺容疑で、医療法人社団耕潤会「かねしげ病院」(茨城県取手市)
 院長吉田兼重容疑者(48)=同県龍ケ崎市佐貫町=を逮捕した。同署によると、
 「知り合いのカルテは後でまとめて書くことがあり、内容が違うこともある」と、
 容疑を否認している。
 吉田容疑者は2004年1月~06年11月、当時経営していた同会「かねしげク
 リニック」(東京都杉並区高円寺北)で、患者計16人の診療を巡り、約4000
 万円以上の診療報酬を不正に受給したとみられる
という。”

 → 書類がいい加減な人がいるとは聞きますが
   金額を見るとただのミスとは考えにくい。
   真偽はまだ分からないが事実を明らかにする必要がある。


申告漏れ:福祉病院の医療法人「大生会」 計十数億円(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/science/news/20111006k0000m040162000c.html

”総合病院を経営し、生活保護受給者の入院患者を受け入れている大阪市阿倍野区の
 医療法人「大生会」やその関連会社などが、大阪国税局から10年3月までの数年
 間にグループ全体で計十数億円の申告漏れを指摘されていたことが5日分かった。
 このうち2億円程度は悪質な所得隠しと認定され、重加算税などを含めて追徴課税
 (更正処分)された模様。貧困ビジネスを重点調査するなか「福祉アパート」と並
 んで「福祉病院」の申告漏れが浮かび上がったという。
 関係者によると、大生会は87年6月に設立され、同市生野区で「大生病院」など
 3病院を経営。多数の関連法人間の取引で経費を過大に計上したり、関連の医薬品
 会社が手数料収入を申告しなかったりする手口で所得を圧縮していたとみられる。
 グループのオーナーも国税、地方税が未申告で、税務調査に対して嫌がらせを繰り
 返したという。

 大生会はかつて病院乗っ取りの舞台となり、05年8月には関係者が大阪地検に横
 領容疑などで逮捕されたこともある
。病院近くの住民は「経営者が代わってからほ
 とんど地域住民は通院しない」と話す。
 大生会は「マスコミの取材には応じない」としている。
 国税当局は昨秋から生活保護受給者を対象にした貧困ビジネスに注目。大阪市西成
 区のあいりん地区にある福祉アパートは西成税務署、大生会などは大阪国税局が主
 体となって税務調査に切り込んだ。【井上大作】”

この当事者は病院ではなく悪徳業者と呼んだ方が相応しい。
マスコミ取材に応じないというのはその顕著な特徴だ。

貧困ビジネスで最も恐ろしいのは医療分野だと鈴木亘教授が指摘されている。
この報道も医療界と言うよりも悪質な行路病院の問題。
ただ、周囲が黙視しているとの批判は充分にあり得るだろう。
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